知られざるNASアプリの世界

 第6回

CD/DVDドライブをNASで共有!PCに無くてもDVD再生

NASアプリならウイルスチェックも写真アルバムも……

NASのアプリはまだまだ続く……

ASUSTORのNASアプリは専用の「AppCentral」からインストールする。用意されているアプリは200近く
ASUSTORはASUSグループのNASメーカー。写真は2ベイの個人向けミドルレンジモデル「AS3102T

 ASUSTOR NASを例に「NASアプリの最新事情」をお届けする当連載、これまでは、バックアップやブログ運営、動画や音楽サーバーとしての活用など、アプリではじめて可能になる、NASのさまざまな活用方法を見てきました。

 最終回となる今回は、特定ジャンルにとらわれない有益なアプリを幅広くご紹介していくことにしましょう。

 ご紹介するのは、アンチウイルスアプリとフォトギャラリーアプリ、そして光学ドライブやスキャナー、指紋センサーなど、様々なUSBデバイスを共有できる「USBサーバー」の3本です。

知られざるNASアプリ:記事一覧
第1回:クラウドストレージ編:OneDriveの容量対策にも! オンラインストレージアプリを使ってみよう!
第2回:ブログ作成編:「自分ブログ」をNASで簡単に作ってみよう、世界標準「WordPress」をインストール
第3回:動画アプリ編:スマホの容量不足も解消OK?NASの動画アプリを使ってみよう
第4回:音楽アプリ編:月額無料の「クラウド音楽」をNASで実現!ハイレゾ音楽も再生OK
第5回:テレビ録画編:「テレビ録画の容量不足」をNASで解決、nasneとNASで録画し放題!
第6回:そのほか編:CD/DVDドライブをNASで共有!PCに無くてもDVDを再生可


PCを使わずにウイルスチェック「Avast Anti-Virus」

「Avast Anti-Virus」。PCを使うことなく、NAS単体でウイルスチェックを行えるアプリです。なお利用にあたってはライセンスの登録が必要になります

 まずは「Avast Anti-Virus」。

 ご存知アンチウイルスソフトのNASアプリ版です。NASといえば大量のデータが保管できるだけに、万一ウイルスに感染するようなことがあれば、その被害は甚大です。しかもスキャンする領域が広いとなると、ウイルスチェックもついついおざなりになりがち。しかしこのアプリを導入しておけば、PCのアンチウイルスソフトを使わなくても、NAS単体でのウイルスのスケジュールスキャンが可能になります。

 ASUSTOR NASにはこの「Avast Anti-Virus」の12カ月のライセンスが付属していますので、アプリのインストールが終わったら指示に従ってAvastのサイトでライセンスを発行してもらいます。ライセンスコードはメールで送られてきますので、それを貼り付けることで認証が完了し、アプリを使えるようになります。

 ウイルスを発見した時のアクションは、レポートの作成、隔離所に移動、感染したファイルの削除の3つから選べます。つまり隔離もしくは削除のみで、除去はできないわけですが、無料のアンチウイルスソフトの機能としては一般的です。決まったフォルダーに隔離した上でPCのアンチウイルスソフトを使って除去するなど、運用方法を決めておけば、とくに支障はないでしょう。ちなみに圧縮ファイル内のスキャンにも対応していますが、余分に時間がかかりますので注意しましょう。

利用にあたってはまずスキャン対象のフォルダーを選択します
毎日、毎週、毎月といったスキャンのスケジュールを指定できます。NASを利用していない時間帯を選ぶのがコツです
ウイルスを発見した時のアクションは、レポートの作成、隔離所に移動、感染したファイルの削除の3つから選べます
ファイルの読み書きの頻度に応じ、簡易なスキャン(高頻度)と完全スキャン(低頻度)の両方を設定しておけば、NASに負荷をかけずにウイルスチェックが行えます


大量の写真をアップロード無しで仲間と共有「Photo Gallery」簡易コメント機能もアリ

「Photo Gallery」。選択した写真でアルバムを作成し、共有できるアプリです

 続いては「Photo Gallery」。

 名前からも分かるように、写真を表示するためのアプリです。これをインストールしておけば、Webブラウザーで“http://ローカルIPアドレス/photo-gallery/”と入力することで、写真アルバムを表示できるようになります。

 本アプリを使わなくても、NASに保存した写真をPCのエクスプローラーで探し、ビューワーを使って表示することはもちろんできますが、このアプリを使えば“大量の写真から、必要なものだけ選んでアルバムを作成”ということができ、“写真の保存場所”と“アルバム”を分離できるので便利です。

 例えば、“外出先で大量に撮った写真はそのまま保存しておきたいけど、よく見返す写真だけをまとめたアルバムを作って、すばやく見られるようにしたい”という場合に重宝します。

 また、DDNSを使って自宅外からNASにアクセスできる設定にしておけば、これらアルバムの共有URLを発行し、仲間に見てもらうことができます。写真はNASの中に置いたまま、必要な写真だけを閲覧できるというわけです。旅行先やイベントで撮った写真の枚数が多いと、SNSにアップロードするのだけで一苦労。場合によっては容量の心配もしなくてはいけませんが、この方法であれば大量の写真も無理なく共有できます。

 これらの写真は個別の説明がつけられるほか、コメントを投稿してもらうことも可能。さらにダウンロードしてもらうことも可能ですので、仲間内での配布にも適しています。写真の楽しみ方がさらに広がることでしょう。

ブラウザーに“http://ローカルIPアドレス/photo-gallery/”と入力して起動し、アルバムに追加する写真を選択します。NASに保存されていない写真を選び、NASにコピーすることもできます
アルバムが作成されました
個々の写真に説明やタグを追加することもできます。また共有しているユーザーがメッセージを投稿することもできます
共有URLを発行できますので、大量の写真を仲間に見せる場合でも、クラウドにアップロードする手間がかからず、また容量を気にする必要がありません


NASにつないだCD/DVDドライブをLAN上のPCで共有「VirtualHere USB Server」

「VirtualHere USB Server」。NAS背面のUSBポートに取り付けたUSBデバイスを、LAN上にあるWindowsやMac OSマシンから使えるようにするNASアプリです

 さて、連載の最後に紹介するのは、NASの使い方をこれまでなかった方向に広げてくれる「VirtualHere USB Server」というアプリです。

 このアプリは、NAS背面のUSBポートに取り付けたUSBデバイスを、LAN上にあるWindowsやMac OSマシンから使えるようにしてしまうもの。取り付けたUSBデバイスは、各マシンに直結したのと同じように認識されるため、“Windowsタブレットに(USB接続の)DVDドライブを取り付ける”といったことが可能です。

 NAS背面にあるUSBポートは、もともとUSBハードディスクを取り付けて容量を増やす用途に使えますが、このNASアプリを使えば、カードリーダーやUSBメモリ、プリンター、指紋センサーやUSBスピーカー、Webカメラなど幅広いUSBデバイスが利用可能になるそうで、なかなか驚きです。

 利用にあたっては、NAS側に「VirtualHere USB Server」をインストールするのと合わせて、ベンダーのWebサイトから専用ソフトをダウンロードし、PC側にインストールします。またPC側に「Bonjour」が導入されていなければ、専用ソフトのインストール時に併せて自動インストールが行われます。

 インストールが終わったらUSBデバイスをNASの背面ポートに接続し、PC側でソフトを起動すると、NASのUSBポートに接続されたUSBデバイスの一覧が表示されます(もしそのUSBデバイスを過去にPCに接続したことがなければ、ドライバが自動インストールされます)。

 Windowsの場合、それらUSBデバイスを直接接続したのと同じように、エクスプローラー上にそのUSBデバイスのアイコンが表示されますので、あとは直接接続している場合と同じように利用できます。

 今回は試しにCD/DVDドライブとUSBメモリを接続してみましたが、Windows 7環境で問題なくDVDソフトの視聴およびファイルの読み書きが行えました。“手に持ったWindowsタブレットでDVDを再生する”なんて離れ業も可能でしょう。

 ソフトの性質上、製品やOSの種類によってはうまく動作しない場合もありそうですが、きちんと動作できる機器さえ見つかれば、光学ドライブを持たないPCでCD/DVDドライブを使ったり、複数のPCでカードリーダーを共有したりと、NASの使い道がとてつもなく広がります。

 注意点としては、10日を超えて継続利用する場合はライセンス(39米ドル)を購入しなくてはいけない点、そしてUSBデバイスは排他利用でひとつのUSBデバイスを同時に複数のPCから利用できない点が挙げられますが、これまでになかったNASの運用を可能にしてくれる、画期的なアプリであることは間違いないでしょう。

利用にあたっては、NAS側にアプリをインストールするのと合わせて、ベンダーのサイトから専用ソフトをダウンロードし、PC側にインストールします。USBデバイスのドライバも併せてインストールされます
PC側で専用ソフトを起動すると、「VirtualHere USB Server」を導入済みのASUSTOR NASが検索され、そこに接続されているUSBデバイスが表示されます
USBデバイスを右クリックして「Auto-Use」を選択するとPCにマウントされます。なおUSBデバイスは排他利用で、同時に2台以上の機器で共有することはできません(いったんアンマウントする必要があります)
認識されると直接接続しているのと同様にエクスプローラーにUSBデバイスが表示されます

NASアプリはとっても便利!

 全6回にわたってさまざまなNASアプリを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

 NASという製品は国内外を問わず多くのメーカーから発売されていますが、こうしたNASアプリを組み込んで機能を拡張できるのは、一部メーカーの製品だけの特権。なかでも、200を超えるアプリが用意されているASUSTORのようなメーカーは稀です。

 購入後にアプリを導入して機能を自在に拡張できるのは、スマホやタブレットなどにも似た面白さがありますし、将来、さらに高性能なNASに乗り換えたとしても、別の役割を持たせることで、NASを有意義に使い続けることが可能です。

 ここまで紹介してきたNASアプリの中に、ひとつでも興味を持ってもらえるアプリがあれば、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

[制作協力:ASUSTOR / ユニスター]

(林田 幸一)