週末ゲーム
第647回
視覚と聴覚から迫る恐怖!本格ホラーサスペンスADV「細胞神曲-Cell of Enpireo- 前篇体験版」
探偵として主体的に読み解く物語と、恐怖感を倍増する巧みなシステム
2016年8月26日 11:00
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、本格ホラーサスペンス・アドベンチャー「細胞神曲-Cell of Enpireo-」を紹介しよう。
本作は執筆時現在、前編のみプレイ可能な体験版となっているが、それでも作り込まれた物語や独特のゲームシステムを十分に楽しめるものとなっている。なお、このゲームには暴力的、残酷な表現や、グロテスク、ショッキングな演出が含まれるため、17歳以上でのプレイが推奨されている。遊ぶ際にはご注意頂きたい。
謎の事件に巻き込まれた探偵を待つのは……
本作の主人公は、“音羽探偵事務所”に勤める調査員“阿藤春樹”。記憶喪失で発見された後輩“信濃栄治”の世話を任されていた阿藤だが、ある日信濃は失踪する。 彼の居場所が最後に確認された所は、阿藤が次に調べる予定となっていた宗教団体“至高天研究所”の施設付近だった。至高天研究所の恐ろしい実態を知り、事件に巻き込まれていく阿藤だが、彼は間もなく悟る。自分は偶然巻き込まれたわけではないのだと。
このゲームの基本的な進行としては、キーアイテムを探すことで進行する探索要素、謎の存在から逃げ回るホラーサスペンス要素が存在する。探索要素に関しては、マップ上にあるモノを調べていくことで見付けるものとなっている。システム自体はオーソドックスな形式ではあるものの、丁寧に作られたマップと適切な量のヒントが特徴となっている。そのため、特殊なシステムこそ存在しないが探索しがいのある内容に仕上がっている。
“視覚”と“聴覚”に訴える巧みなホラー描写
本作の最大の特徴となるのは、探索の最中に謎の怪物と遭遇することで発生するホラーサスペンス要素だ。探索中、怪物が近くにいる場合、画面に赤みがかかり、不穏な音が流れ始める。その段階では相手の姿は見えないことが多いが、奥に進むことで目の前に怪物が現れる。このように、視覚と聴覚の両方から恐怖を演出するシステムとなっている。
また、阿藤には“体力”、“精神力”、“侵食率”というステータスが設定されている。怪物に接触すると体力や精神力が減少していき、体力が0になるとゲームオーバー。また、精神力が0になると錯乱状態になり、体力が徐々に減少、アイテムが使用不可能となり、侵食率が上昇していく。侵食率は、100%になると強制的にバッドエンディングを迎えることになってしまう。
体力や精神力は、入手できるアイテムで回復することは可能だが、数は限られているため、怪物と接触しないよう慎重に進む必要がある。錯乱状態については、マップ上にある生花に触ることで治療することができる。
さまざまな情報源から物語を読む解く面白さ
本作の魅力は、探索・ホラー要素だけでなく、“物語を読み解く楽しみ”が存在すること。人物同士の会話で語られる内容で物語を追うだけでなく、舞台となるマップを探索することで『ここで何が起こったのか?』という情報を入手することも可能だ。
また、探索中に見付けられる情報にはショッキングな内容もあり、物語を少しずつ読み解いていくことで、プレイヤーに恐怖がじわじわと迫ってくる。探索によって真実に迫っていく“探偵もの”というテーマをうまく表現しているかのような、見事な物語体験となっているのだ。
前編では、阿藤による至高天研究所の探索の序幕までが描かれる。ある経緯で至高天研究所に潜り込んだ阿藤。そこではさまざまな人物に会うことになる。そして、研究所内を徘徊するゾンビのような怪物も……。
阿藤は、研究所内を探索する中、ここで何が起こっていたのかを徐々に知ることになる。そして辿り着く、人知を超えたある出来事とは……?
本作は、現在は体験版という立ち位置になっているものの、会話や探索から読み解く物語、そして視覚と聴覚に訴えかける恐怖体験を存分に楽しむことができる。ボリュームとしては3、4時間でクリアできるものとなっているので、ぜひ遊んでみてほしい。
ソフトウェア情報
- 「細胞神曲-Cell of Enpireo- 前篇体験版」
- 【著作権者】
- 鱶尾工業
- 【対応OS】
- Windows
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- オープンα 1.3(16/08/22)