週末ゲーム
第648回
物理演算による真面目な3D戦車シューティング「PanzerStrike」
頼るは自らの腕のみ!ストイックにミッションを遂行せよ
2016年9月9日 11:00
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、3D戦車シューティングゲーム「PanzerStrike」をご紹介する。
本作は2014年冬のコミックマーケットにて初頒布された有償の同人ゲームで、現在はパッケージ版やダウンロード版を購入可能。価格は771円(税込み)など。作者サイトにてWeb上でプレイできる体験版も公開されている。
見た目に違わぬ真面目なプレイ感の戦車ゲーム
「PanzerStrike」は、戦車を題材にした3Dシューティングゲーム。プレイヤーは1台の戦車を操り、敵戦車やオブジェクトなど様々なターゲットの撃破を目的としたミッションをクリアしていく。3D空間を360度自由に移動でき、物理演算による挙動も取り入れた本格的な戦車ゲームとなっている。
戦車の操作は、前後の移動と左右旋回、砲塔の左右旋回と上下動も可能。攻撃は主砲による砲撃のみだ。車体または砲塔を動かし、丸形のターゲットサイトを敵に向けると若干の命中補正が入るので、近距離であればアバウトな照準でも命中する。遠距離の敵を狙うための精密射撃モードもある。他に敵の攻撃を一時的にやり過ごす発煙弾が使用できるミッションもある。
操作はキーボードとゲームパッドに対応している。キーボードの標準設定だと、戦車の移動は方向キー、砲塔操作は[Shift]キーを押しながらの方向キーとなっている。キーの変更は可能だが、戦車移動と砲塔操作のキーは別々にできないため、移動しながら砲塔を動かすという操作はできない。
ミッション中は、敵の攻撃を受けると装甲ゲージにダメージが入り、装甲ゲージが0になるとミッション失敗。戦車は場所により装甲の厚さが異なり、正面で攻撃を受けるとダメージが少ないが、側面や背面になるとダメージ量が増加する。敵の攻撃を回避できない時には正面で受けるのも重要だ。
砲撃は連射できず、再装填まで数秒の時間が要る。迫り来る敵をひたすら連射して倒すというものではなく、しっかり狙いをつけて一発一発を大切に撃っていく必要がある。3DCGのリアルな見た目だけでなく、プレイ感も真面目な作りになっている。
ちなみに筆者の環境(入力規格の切り替えに対応したロジクール製ゲームパッド“F310”)では、XInputでの入力がうまくいかず、DirectInputでは問題なかった。同様のトラブルが出た際にはご確認いただきたい。
物理演算でリアルだったりそうでもなかったり?
本作の特徴は、物理演算を取り入れている点だ。コンテナのようなオブジェクトは、砲撃で破壊できるだけでなく、体当たりすると勢いと重力で崩れ落ちたりもする。
砲弾にも重力が働き、発射後に距離に応じて僅かながら落下していく。遠距離の敵を狙う時には、少し上を狙うなどの必要がある。移動するターゲットへの砲撃では、発射から命中までにかかる時間を考えて、狙う位置を先読みしておく必要もある。この辺りもかなりリアル寄りな考え方で作られている。
さらに物理演算は、自分が操る戦車にも適用される。砲弾を発射した反動が僅かにあるのは大した問題ではないが、デコボコした地形を走る時に戦車が跳ねるように動くのが大変だ。平地で加速した状態で障害物に乗り上げると、そのまま離陸する勢いで吹っ飛ぶこともある。この時、勢い余って戦車がひっくり返ってしまうと操作不能になり、ミッション失敗となる。
敵の中には、こちらに接近して自爆するタイプのものがおり、ダメージに加えて爆風によって吹っ飛ばされる。この時も当たり所によっては戦車が裏返しにされ、装甲ゲージが残っていても一発でミッション失敗となってしまう。
装甲は結構堅く、余程攻撃を受け続けなければ簡単にはやられない。しかし『この戦車は風船でできているのか?』と思うほど軽い手ごたえで横転するので、自爆する敵と高速移動中の地形には注意が必要だ。
筆者はこれまで、砲塔が回る3D戦車ゲームをいくつも遊んできたが、その中でも本作は難易度が高い。中盤の市街地ステージでは、死角から来る敵が自爆してひっくり返され、強気に攻めればタコ殴りにされ、慎重に撃破していくとミッションの時間切れになるという八方ふさがりな状態に陥った。戦車がひっくり返るという要素のためか、どうにも勝手が違う。
最終的に、曲がり角に差し掛かる時にはいきなり突っ込まず、砲塔を斜めに向けて敵を確認してから進むという動きを実践して何とか突破した。冷静に考えると、戦車ゲームでは当たり前の動きなのだが……。移動と砲塔操作に慣れるまでは苦戦すると思われるので、根気よくプレイしてみていただきたい。コツさえわかれば、近距離で敵をさばきつつ、遠距離をスナイプするという気持ちいいバトルもできるようになってくる。
多様なミッションを腕で切り抜けるストイックさが魅力
戦車ゲームとしては結構真面目な作りで、物理演算を使っていることでリアリティもある。砲塔と車体を同時に動かせないので、敵が迫ってきた時にどう避けて、どう狙いをつけるかが悩ましい。戦車は他のアクションゲームのようにキビキビと動くものでもないので、これもリアリティがあるとは言える。
ミッションは、単独での戦車の撃ち合い以外にも様々ある。味方戦車と連携しての戦いでは、味方が勝手に敵を倒してクリアできたりするのがちょっと笑える。他には夜間に照明弾を使って敵の位置を探るものや、ヘリなど空中のターゲットが登場するものもある。リアルを追求したゲームというわけではなく、ミッション内容もSFチックな部分が多いので、あくまでゲームとして楽しんでいただきたい。ストーリーを語る部分はほとんどないが、ミッションは一兵卒の目線で見える面白い展開になっている。
ゲーム的に気になるのは、レーダーがなく敵に背後から接近されてもまったくわからない点。走りながら砲塔を回して後ろを確認……というのも無理なので、時々車体を旋回させるなりして後ろを振り返らないと危ない。敵のミサイルに対しては全方位にアラートが上がるので、敵の接近も感知できれば、より多くの敵を相手にしてもすばやく倒せて爽快感も上がるのではないかと思う。隠れた敵を見つけるミッションもあるので、なかなか難しいのかもしれないが。
ゲーム本編からは逸れるが、本作では自作したエンブレムをテクスチャーとして戦車に貼り付けたり、音声ファイルを追加したりといったカスタマイズも可能。特に音声ファイルがあると砲弾の命中やミサイル警告などが音でわかるようになるので、ゲーム的にも楽になる。個人で楽しむ分には他作品の音声を流用するのも問題はない(とはいえ自己責任で)ので、好みに応じてお試しいただきたい。
1つのミッションにかかる時間は数分から10分程度で、ノンストップでクリアできれば1時間程度で終わるボリュームだ(初プレイでノーミスはまず無理だとは思うが)。1回1回のプレイは短時間でできるので、少しずつ進めるつもりで遊ぶのがいいだろう。各ミッションでは、特定の条件を満たすとスコアが上がるなどのスコアアタック要素もあるので、全ミッションクリア後も引き続きプレイが可能だ。
戦車の成長要素は一切なく、あくまでプレイヤーの腕で戦うストイックなゲームとなっている。砲塔操作という戦車ならではの要素は手間取る人も多いと思うが、車体と砲塔を別々に動かして動けるという仕組み(あるいは制約)があるからこそ、戦車ゲームは面白いのだ。ちなみに体験版はブラウザー上でプレイできるのでお手軽ながら、プレイできるのは製品版の中盤ステージなので、結構難しい。
ソフトウェア情報
- 「PanzerStrike」
- 【著作権者】
- 蒼玉亭
- 【対応OS】
- Windows Vista/7/8.1/10
- 【ソフト種別】
- パッケージおよびダウンロード販売 771円(税込み)など(体験版あり)
- 【バージョン】
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