週末ゲーム

第649回

1~2時間で物語もバトルも充実。続・フリゲ短編RPG特集

“2016フリゲ展!theFINAL 夏”出展作品など4本を紹介

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、4月に掲載したフリゲ掌編・短編RPG特集に続き、この夏に公開されたフリーゲームの短編RPGを特集する。

 いずれもプレイ時間が1~2時間で、物語やキャラクター、戦闘システムやゲームバランスなどが練られた4作品をピックアップした。映画1本程度のプレイ時間でほどよい充実感を得られる作品をお楽しみいただければ幸いだ。

 なお、今回紹介する4作品のうち、3作品はフリーゲーム投稿イベント“2016フリゲ展!theFINAL 夏”の出展作品。同イベントでは夏にまつわるキーワードをテーマにさまざまなジャンルの、124もの作品が公開されている。

タイミングで効果が変わるスキルを駆使して戦うRPG「Vengeance -禁じられし魔術-」

「Vengeance -禁じられし魔術-」

 スキルを使うタイミングが戦術の肝となる、独自の戦闘システムが特徴のファンタジーRPG。想定プレイ時間は1時間半となっている。主人公は、訳あって独自にある事件を追っている元兵士の男“カイル”、カイルと因縁のある刀使いの少女“エルティア”、カイルを恩人として慕う魔法使いの少女“マリン”の3人。

 戦闘システムはターン制のコマンド選択型。ターン内での行動順は毎ターン開始時にランダムに決まり、プレイヤーと敵が入り混じって順次行動する。行動の際は通常攻撃や防御などのほか、ターンごとに一定量回復する“TP”を消費してさまざまなスキルを使用可能。このスキルに特別な効果を付与したり、強化版へと変化させられるのが本作の特徴だ。

 ポイントは、戦闘画面の左下に光る玉で表示される“マナ値”。マナ値はプレイヤーの行動順が回ってくるたびに1つ溜まり、最大になると“バースト”が発生。スキルごとに用意された“バースト効果”がスキルに付与される。たとえば攻撃スキルならダメージや攻撃回数が増えたり、状態異常を与えたりなど効果はさまざまだ。

 加えて、バーストが発生すると画面左端の“OVERDRIVEゲージ”が上昇。これを消費することで、範囲や威力などを強化したスキルを繰り出せるようになる。また、マナ値は敵側にも設定されており、これを使って強力な攻撃を仕掛けてくる。

 バーストはマナ値が最大まで溜まった時点で自動的に発生し、行動順はランダムのため狙ったタイミングで引き起こすのは難しいが、使うと副次効果としてマナ値が増えるスキルもあるなど、ある程度は制御する余地もある。敵の攻撃を凌ぎつつ、戦況に応じたバースト効果を追求するのがバトルの醍醐味。TP、マナ値、OVERDRIVEゲージの条件がすべて揃い、これぞという強化技をバースト効果付きで繰り出せた時の爽快感は格別だ。

スキルに効果を付与するバーストと、OVERDRIVEゲージを消費する強化版スキルを駆使して戦っていく

 ストーリーはある陰謀にカイル達が迫っていくというもので、徐々に変わっていくカイルとエルティアの関係やマリンの成長など、短い中にしっかりとしたドラマが詰まっている。雑談を含む賑やかな会話や躍動感のあるイラストなどで表現されるキャラクターも魅力の作品だ。

メニューから閲覧できる雑談などでキャラクターの賑やかな掛け合いを楽しめる。イラストも魅力だ
「Vengeance -禁じられし魔術-」
【著作権者】
チーム・あーく
【対応OS】
Windows(ダウンロード版)、Webブラウザー(PLiCy版)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.06

隻腕の男とロボットが寂れた世界を征くSF RPG「終わり逝く星のクドリャフカ」

「終わり逝く星のクドリャフカ」

 最終戦争により終焉を迎えた星が舞台のSF RPG。公称プレイ時間は2時間程度となっている。

 時は2253年8月。隻腕の男“カミオカ”の手により、ある施設の奥で人型ロボット“オズマ”が目を覚ます。『お前に会いたがってる奴がいる』というカミオカは、オズマを施設から連れ出し、“約束の場所”を目指すことになるのだが……。

 荒廃した研究施設、シェルターで暮らす人々、野良化したロボット兵器など、終末SFらしい雰囲気が特徴の作品。全体的に薄暗いマップデザインや寂しげなBGMのセレクトなどによっても世界観が演出されている印象だ。

 戦闘はターン制のコマンド選択型。特徴は、スキルを使う前に“チャージ”を行い“AP”を溜める必要があること。敵も同様にチャージを行い強力な攻撃を仕掛けてくる。敵のスキル攻撃時は消費APが表示されるほか、戦闘開始時などに敵のステータスや各種状態異常への耐性を確認できるので、敵の行動パターンや有効なスキルを見極め、隙を伺ってチャージしたり防御も活用しつつ戦うのが楽しいバトルに仕上がっている。

 さまざまに用意されている装備品もポイント。オールマイティな装備品はほぼなく、武器に設定された状態異常の付与効果や防具の属性耐性などを考慮し、状況に応じた装備選びが重要となる。特にアクセサリは戦闘開始時のAPアップなど便利な効果を持つものがあるが、同時に1つしか装備できないため選ぶのが悩ましい。

 物語を進めると、オズマが施設の奥で停止していた理由、この世界に何が起きたのかが明らかになっていく。重く切ない展開の中にもさまざまな想いの交差が感じられる、じんわりと心に染みるような味わいのある作品だ。

さまざまな効果を持つ装備品を選ぶのが楽しい。名前からSFガジェットらしさを感じられる武器も
物寂しい雰囲気の中にも、心温まるものを感じられる作品
「終わり逝く星のクドリャフカ」
【著作権者】
鍵虫 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.10(16/09/09)

スキルを駆使するバトルと水着女子達の強烈なキャラクターが魅力のノンフィールドRPG「戦海ディザイア」

「戦海ディザイア」

 異形の怪物“カース”とその召喚者“アギト”を掃討するための戦闘部隊、“逆十字”の女性メンバー達が主人公のADV+ノンフィールドRPG。公称プレイ時間は1時間程度となっている。

 休暇で海に来たはずがカースに遭遇してしまい、元凶のアギトを倒すため水着のまま探索するはめに……というストーリー。カーソルキーの上で先へと進みつつランダムにザコ戦が発生、数字で表示される進行度が一定に達するとボス戦となる。また、カーソルキーの左ではパーティメンバーによる会話を楽しむことができる。

 本作をプレイしてまず目を惹くのは、メインシナリオや豊富な会話シーンで描かれる、鮮烈な個性を持つ登場人物達だ。“力がすべて”の世界観において、入隊するには決闘で既存のメンバーを打ち破る必要がある逆十字に身を置く彼女達は、皆したたかで好戦的。なかでも欲望に忠実で常識が通用せず、メンバーからも手を焼かれる“アーギー”は、予想外の言動の数々でプレイヤーを驚かせてくれる。

 戦闘はターン制のコマンド選択型。システム自体はMPを消費する通常のスキルや戦闘中の行動で溜まるTPを消費する大技を駆使して戦うというオーソドックスなものだが、スキルの数自体は抑えめでそれぞれにしっかり使い所があったり、組み合わせによる相乗効果を狙えるスキルがあったりと、スキルの構成が練られたものとなっている。キャラクター固有のスキルに加えて購入したスキルを任意にセットする要素もあり、敵に応じた戦略を立てるのも面白い。

 こうしたスキルを使って立ち向かうことになるボス戦は、カースとアギトが一緒に襲ってきたりとなかなか手強い。逃げても先に進めるオマケ的なボスも用意されており、白熱のバトルを存分に味わうことができる。ザコ戦からは確実に逃走可能なため低レベル縛りでのプレイが捗る一方で、経験値やお金を稼ぎたい時はカーソルキーの右から即座にザコと戦うことも可能など、幅広いスタイルに対応するプレイアビリティの高さも魅力だ。

 戦闘画面のバストショットが状態異常に応じて変化したりイベント絵が豊富に用意されているなど、オリジナルのイラストも充実。場面転換のタイミングやBGMの選曲、大技使用時のカットインなど、演出面もスタイリッシュに纏まっている。イラストでは若干の流血表現、テキストでは若干どころではない下ネタと暴力的表現(主にアーギーによるもの)があるため苦手な人は注意が必要だが、サクサク進めるプレイ感と勢いのあるシナリオで、一気にプレイしたくなる牽引力のある作品だ。

スタイリッシュに纏められ上げたデザインや演出面も見所
「戦海ディザイア」
【著作権者】
レイ 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.01(16/09/09)

連携魔法“ふたりがけ”が楽しい双子兄妹の小冒険・第二弾「双子魔道士と天気の精霊」

「双子魔道士と天気の精霊」

 魔女のもとで魔道士になるための修行をしている双子の兄妹“リュミエル”と“エクリエル”の小さな冒険を描くRPG「双子魔道士のおつかい」の続編。前作より少し成長した双子達が、雨が降らなくなり大地が枯れてしまった村を救うため奮闘する。公称プレイ時間は約1時間半となっている。

 戦闘システム面での特徴は、前作と同様に二人で連携して強力な魔法を放つ“ふたりがけ”。発動にはMPに加えて戦闘中の行動で溜まるTP(ツインズポイント)を消費し、二人のうち片方でも行動不能や魔法封印状態になると失敗してしまうが、それだけに効果は強力だ。

 前作では“おつかい”だったが、本作では師匠の代理として、立派に依頼を果たしていく双子の姿が描かれる。とはいえ師匠に対しプチ反抗期中のリュミエルなど、微妙なお年頃の少年少女らしい関係性が垣間見える掛け合いも健在。本作からプレイしても問題なく楽しめるが、前作未プレイで気になる方はそちらも合わせてチェックいただきたい。

二人の力を合わせる連携魔法“ふたりがけ”の活用がポイント
「双子魔道士と天気の精霊」
【著作権者】
ハルマキ 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.01(16/08/21)