週末ゲーム

第526回

Tシャツ姿で月面世界を巡る自由奔放なRPG「Emperor~Going to the MOON~」

かぐや姫を追って月までやってきたミカドの冒険譚

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、歩いて月までやってきた男の冒険譚を描く自由度の高いRPG「Emperor~Going to the MOON~」を紹介しよう。

地球から月まで徒歩でかぐや姫を追いかけてきた男

かぐや姫を追って月までやってきたミカドを主人公にした自由度の高いRPG
さまざまなイベントが発生する。どう行動するかはプレイヤー次第だ

 「Emperor~Going to the MOON~」は、2D見下ろし画面のフィールド探索型RPG。物語の導入部は“かぐや姫”をモチーフとしており、主人公“ミカド”の恋人であるかぐや姫が故郷である月に帰るシーンから始まる。しかしここからが独特で、別れ際に不老不死の薬を渡されたミカドは、その力を使って何と月まで徒歩でかぐや姫を追いかけるのだ。しかし、かぐや姫は月では“ディアナ”と呼ばれ、住民たちに重い税を課して自分は贅沢な暮らしをしているというウワサのあるお姫様だった。ミカドは再びディアナと出会うため、月での生活をスタートさせる。

 このゲーム最大の特徴は、自由度が非常に高いこと。ディアナを探すというメインのストーリーはあるものの、ミカドは女の子にプレゼントを渡して好感度をアップさせて最後には結婚してみたり、盗みなど悪事を働いてみたり、世界を旅してアイテムを集めてみたり、さまざまな住人からの依頼を受けてみたりと、月の世界で自由な生活を送られる。

 ただし、移動やイベントなどによって減っていく“帝パワー”がゼロになるとゲームオーバー。帝パワーはゲーム開始時9999あり、この制限の中でメインストーリーを進めつつ、他のイベントも楽しむというのが基本のプレイスタイルとなる。

Tシャツによるスキル習得や花札によるボーナスが楽しい戦闘

 どこかで見たようなキャラクターがいたりと、ギャグやパロディが詰まった独特の世界観も大きな見どころ。まず面白いのが、ミカドが装備できるのが武器や防具ではなく“Tシャツ”であること。Tシャツには、攻撃力や防御力、俊敏性、HPといった基本能力をアップさせるのに加え、複数の敵を一度に攻撃できたり、毒などの状態異常を敵に与えたりといったスキルが備わっている。着るTシャツによってミカドの能力が大きく変わるというワケだ。

Tシャツ屋ではTシャツの購入のほか、スキルの習得、洗濯なども行える

 ただし、Tシャツはずっと着ていると汚れてしまい、住人たちから嫌われてしまう。汚れた場合は町のTシャツ屋で洗濯すればキレイになるが、何度も洗濯すると今度はTシャツがほつれてアップする能力値が減るなんていう細かな設定も。

 さらに、戦闘などで手に入る“T-スクエアポイント”を使えばTシャツに付与されているスキルを習得し、そのTシャツを着ていなくても使えるようにすることが可能。スキルは9種類まで装備可能なので、強力なスキルをもつTシャツを集めれば、ミカドをかなり強化できる。T-スクエアポイントカードは某レンタルビデオ店のカードに似ているような気もするが、気のせいであろう。

フィールド上の人型の影にぶつかると戦闘がスタートする

 戦闘は、フィールドやダンジョン内を徘徊している人型の影に触れることでスタート。コマンド選択型で、敵・自分共に順次行動するCTB方式となっている。敵は3マス×3マスのフィールド配置されているのが特徴で、スキルを使って単体、横一列、縦一列、全体など敵の配置に合わせて効率よくダメージを与えていくのが重要となっている。

 さらにユニークなのは、フィールドのマスには花札が配置されており、攻撃範囲の中で役が揃えばボーナスが発生すること。たとえば、縦一列に攻撃するスキルを使い、そこに桜と杯の札があった場合、“花見で一杯”という役となり攻撃力がアップするといった具合だ。“三光”という役が揃えば敵全体が一回行動できなくなるスタン状態となった上にランダムな状態異常が付与されるなど、役によっては凄いボーナスが発生する。役の種類は戦闘中にも確認が可能だ。

戦闘はターン制。3マス×3マスのフィールドに敵が配置される
攻撃した範囲で花札の役が揃えば攻撃力アップなどのボーナスが発生

 このほか、帝パワーと引き替えにHPの回復や一時的な攻撃力のアップもできる。基本的にミカドはHPが低く仲間もいないので、油断するとアッという間にHPがゼロになり、ゲームオーバーになってしまう。帝パワーもゼロになるとゲームオーバーなので悩ましいところだが、死んでしまっては元も子もない。ここぞという時は惜しまず使っていきたい。

正義か悪か、どの道を行くのかはプレイヤー次第

フィールド上にはさまざまな場所が隠されており、歩き回るだけでも楽しい

 とにかく、いろんなことができるのが楽しい作品。時間と曜日の概念があり、移動するだけで時間がどんどん経過していく。特定の時間や曜日にしか起きないイベント、買えないTシャツなども用意されており、やり込みがいがある。

 また、フィールドには町や村をはじめ、洞窟や石碑などさまざまな場所が隠されている。世界を移動するだけでも新たな発見があるのが面白い。フィールド上に生えている花やキノコはアイテムとして入手できることもあり、それを売ってお金を貯めたり、住人にプレゼントして好感度をアップさせたりできる。

 一方、深夜に鍵が閉まっている家へとヘアピンで鍵を開けて侵入し、住人が寝ているスキに家の中にあるアイテムを盗む、なんて悪事も可能となっている。住人に石を投げたりスリをすることもでき、悪の道へと入ったときだけ発生するイベントもある。正義の味方はつまらない、というなら悪を目指してみるのもいいだろう。

盗みやスリなど悪事を働くことも可能。自由に行動できるのが大きな特徴だ
レベルアップするとダーツが登場。うまく当てれば能力向上などのボーナスが

 新たな場所の発見、イベントの達成、戦闘の勝利などで経験値が貯まり、1000を越えるとレベルアップとなるが、そのときのボーナスゲームも独特だ。的が回転するダーツが登場し、矢を当てた位置によって能力が上昇したり、アイテムが手に入る。なぜか『パジェロ』というかけ声がとこからともなく発生するのが不思議だが、これに懐かしさを感じる人もいるだろう。ちなみに、的にはパジェロも用意されており、当てるとちゃんとパジェロがもらえる。その効果は実際に試してみてほしいところだ。

 世界を巡るのが楽しい作品だが、一度行った場所には帝パワーを消費する“帝ジャンプ”により一瞬で移動できる。また、拠点となる自宅へは“帝帰宅”によりノーコストで瞬間移動可能。ほかにもイベントを進めるための移動先を地図上に表示できたりと、快適にプレイするためのシステムがあれこれ用意されているのもうれしいところだ。

かぐや姫こと月のお姫様“ディアナ”の真意とは。ストーリーも見どころ

 いろいろできすぎる世界で最初は何をすればいいのか迷ってしまうが、戦闘を繰り返してレベルを上げながら、あちこち移動していけばイベントが発生し、自然とこの世界へと没頭していける。まだ発見していない場所があるのではないだろうか、発生していないイベントはないかと探したくなるから面白い。そうしているうちに、なぜディアナはミカドに不老不死の薬を渡したのかなど、メインストーリーの秘密が明らかになっていくのも見どころ。ユニークな世界を自由に旅できるのが魅力的なRPGだ。

ソフトウェア情報

「Emperor~Going to the MOON~」
【著作権者】
茶の花マン
【対応OS】
(編集部にてWindows 7/8で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.06(13/02/25)

(芹澤 正芳)