週末ゲーム
第616回
呪われたウサギ?が挑む遺跡探索アクション「ファラオリバース」
シンプルなシステム、絶妙な難易度、キレのある物語。完成度の高いフリーゲーム
(2015/10/30 11:00)
シンプルで難しすぎない、絶妙なゲームバランス
「ファラオリバース」は、トレジャーハンターのジョナサンが遺跡を巡る探検アクションゲーム。“伝説のトレジャーハンター”とも評されるジョナサンだが、ある冒険中の事故で呪いを受け、ウサギの姿に変えられてしまった。呪いを解いて元の姿に戻る方法を探るという新たな目標も掲げ、ジョナサンはウサギの姿のままトレジャーハンターを続ける。そしてたどり着いたのが、エジプトに眠る伝説の遺跡、アムシェアー。
ゲームはサイドビューのアクションゲームとなっており、ジョナサンはウサギの姿を活かして耳を使って攻撃する。攻撃ボタンを押すと前方に耳を突き出して敵を刺すように攻撃。上を押しながらだと真上に耳を伸ばして攻撃する。また攻撃ボタンを押したままにすると、耳をぐるぐると回して近付いてくる敵や弾を迎撃可能。ジャンプ中の攻撃は、全方位に耳を振り回して攻撃できる。
基本操作は移動とジャンプに上記の耳攻撃だけで、とてもシンプルなシステムになっている。耳で攻撃するというと特殊な操作に思えるが、実際の手触りはオーソドックスだ。
フィールドにいる敵を倒し、罠をくぐり抜けながら先へと進み、奥にいるボスを倒せばクリアとなるステージクリア型の進行となる。敵からの攻撃や罠に触れるなどしてHPが0になったり、フィールド外に落下したりするとゲームオーバー。ただしフィールドにはセーブポイントが点在しており、ある程度進むごとにセーブできるようデザインされている。コンティニュー回数にも制限はない。またクリア済みのステージには何度でも再挑戦できる。
エジプトの遺跡というと、古代文明が残したさまざまな罠や仕掛けがあるというイメージを抱く人も多いと思う。本作はいわゆる初見殺しな罠が無数にあるようなゲームではなく、何十回やり直しても突破できないようなシビアな難所もない。じゃあ簡単なのかというとそうでもない。セーブポイントから次のセーブポイントまでは長くて数分程度だが、ちょっと操作を失敗するとゲームオーバーになる場所や、特殊な仕掛けの操作を求められる場面もあって、それなりに頭と手を使う。
本作においてもっとも評価したいところは、絶妙なゲームバランスだ。本作には難易度設定がないのだが、どの場面でも簡単すぎず難しすぎず、適度な歯ごたえを感じさせてくれる。しかもミスしたところでせいぜい数分前のセーブデータからコンティニューするだけ。システムはオーソドックスで入りやすく、プレイ感は常にほどよい手ごたえ。アクションゲームのお手本のような作品だ。
アイテム探しに特化した成長システム
ゲームを進めていくと、遺跡に眠る秘宝やアイテムを入手できることがある。一部のアイテムはジョナサンの能力(主に耳)を開花させる力があり、ゲーム的に言えば成長要素となっている。本作には経験値やお金の概念はないため、アイテムを見つけ出すことでのみジョナサンを強化できる。
たとえば、スライディングが可能になり狭い場所へ入り込めるようになったり、耳をプロペラのように回すことで二段ジャンプができるようになったりする。これにより先のステージへ進めるようになるだけでなく、過去のステージで到達できなかった場所にも行けるようになる。そういった場所には、また別の秘宝やアイテムが眠っていることが多い。
アイテムはいくつかのカテゴリに分けられる。1つはサブウェポン。銃やグレネードなどを使って耳以外の攻撃が可能になるもので、使用するとMPを消費する。MPは時間経過によって回復するほか、セーブポイントではHPとともに回復する。ほかにはHPやMPの最大値、攻撃力や防御力が永続的に上昇するアイテムや、使用すると一定時間に限り能力が向上するフード系アイテムが存在する。
新たなアクションや、扉の鍵のような進行に必須となるアイテムは、ゲームの中で自然に取得できるようになっている。そのため、クリアするだけなら多くのアイテムを拾う必要はない。ボス戦などで辛いなと感じた時に、以前のステージに戻って強化系のアイテムを見つけられれば楽になる。
ゲームクリア後も引き続きプレイできるので、アイテム集めは可能だ。ただし一部のアイテムは、特定のタイミングで条件を満たせないと取れないため、すべてのアイテムをコレクションするには、何度か最初からやり直す必要があるだろう。やり込みを楽しむというよりは、気軽に最後まで遊んでもらうことを重視しているようだ。
笑いあり感動あり、映画のようなテンポのいい遺跡探索コメディ
最後まで遊びたくなる仕掛けはストーリーにも見える。主人公のジョナサンはベテランのトレジャーハンターということなので、実体はおそらく『インディ・ジョーンズ』のようなナイスミドルだと思うのだが(あくまで筆者の想像)、ウサギの外見もあってどうにも貫禄が出ない。実際、トレジャーハンターなら知っていて当然のことを知らないという場面も散見されるので、元々ちょっと間の抜けた人物なのかもしれない。
ライバルとなる遺跡荒らしのアンドレは、ジョナサンの元相棒。ジョナサンがウサギの姿になった原因を作った人物でもあるが、アンドレ自身も呪いでワニガメの姿になっている。ジョナサンがアムシェアーに到達して間もなく、アンドレもやってきて先にお宝をせしめようとしたところ、今度は遺跡に眠っていたファラオ・セフル一世の封印を解いてしまい、2人とも1週間後に死ぬ呪いをかけられてしまう。悪党であり厄介なトラブルメーカーだが、外見がカメなのでどうにも憎めない。
ジョナサンの現在の相棒は、敏腕ハッカーのジャック。遺跡の外に車で待機しながら、ジョナサンが持つカメラの映像を通してサポートする。古いコンピューターから人工衛星まで、あらゆる電子機器を即座にハッキングし、ジョナサンの状況を把握している。遺跡に関する知識も豊富で、ジョナサンが遺跡で見つけた秘宝などについての情報も即座に提供してくれる(おかげでジョナサンが抜けて見えるのかもしれない)。
他にも遺跡に詳しい博士など、何人かの人物が登場し、物語が展開していく。時間制限あり、かつ命がけの冒険なのだが、呪われたジョナサンとアンドレがコミカルな外見のために、物語もどこかシリアスになりきれない。ギャグとシリアスのバランスもよく、最後まで楽しくも先が気になる展開が続いていく。本作の物語にジャンルを付けるなら、“遺跡探検コメディ”といったところか。
筆者はクリアまでに約6時間かかったが、最後までゲームプレイにおいてストレスを感じることがなかった。アクションゲームはコントローラーを投げたくなる難所や、何となく中だるみしてしまう場面が出てきたりするものだが、本作ではそういった感情が沸かなかったな……とクリア後に気付いて驚いた。
ゲームプレイ、ストーリーともにテンポがよく、最後まで目を離せない作品だった。アクションゲームでありながら、数々の難関をくぐり抜け頑張ってクリアしたという疲労感より、1本の映画を見終えたような清々しさが圧倒的に強い。本作の魅力を一言で言うなら、“頑張らなくても最後まで遊べる”だ。ぜひ気軽にダウンロードして、この週末に遊びきるつもりでお試しいただきたい。
ソフトウェア情報
- 「ファラオリバース」
- 【著作権者】
- クロボン 氏
- 【対応OS】
- Windows(編集部にてWindows 10で動作確認)
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- -(15/10/18)