クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
そうだ、ジャスコへ行こう
~第6章:表現の自由って、どれぐらい自由なの?~
2016年8月29日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“〈コラム〉TPP でコミケ終了?”の続きとして、今回は“そうだ、ジャスコへ行こう”というテーマを解説する。
そうだ、ジャスコへ行こう
『女騎士さん、ジャスコ行こうよ』というタイトルのライトノベルが出たんですけど、出版社のブログに載ってた逸話が面白かったんですよ。
ジャスコって、なんだか懐かしい名前ですね。
どんな逸話なんですか?
タイトルに『ジャスコ』と入れたいから許可を取ろうと思って、編集部からイオングループの広報部に問い合わせたら、消滅したブランド名だから特に連絡は要らないって言われたそうです。
面白いですね、『商標』が問題になるかと思ったら、問題にならなかったということですね。
あ、そういえばときどき『××は○○株式会社の登録商標です』って書いてあるのを見かけますね。あれって何です?
商標は、知的財産権の一種です。
商品やサービスの名称を、ブランドとして保護するための権利ですね。
著作権とは異なり、特許庁への登録が必要となります。
登録されている商標は、他の人が勝手に使っちゃいけないってことですか?
端的に言うと、そういうことです。
要するに、類似商品や模倣商品に紛らわしい名前をつけて、消費者を惑わせるような真似を防ぐことが商標の目的です。
名前やタイトルは短すぎるから、著作権では保護されないんでしたっけ。
そうそう、よく覚えていましたね。
ただ、商標権の効力が及ぶのは、登録した『指定商品』または『指定役務』と、その『類似商品』または『類似役務』の範囲までです。
……と言いますと?
例えば『ビール』として登録されている商標は、類似区分の『洋酒、果実酒』には使えませんが、『清涼飲料、果実飲料』なら使えます。
加えて、『商標的使用』といって、商標権で規制されるのは他人の登録商標を自分のブランドネームなどとして使う行為なのですね。
そのため、実はライトノベルなどの作品タイトルに特定商品名が出てきても、相手の会社の許可がいつも法的に必要とは限らないのです。
うお、なんか複雑ですね。
商標を扱うのは弁護士だけでなく、弁理士の専門分野でもあります。
それだけを専門にする方がいるくらいですから、そんなに簡単な話ではないのですよ。
そりゃそうですね……。
商標の種類には、文字、図形や記号、立体があります。
例えば、不二家のペコちゃん人形は立体商標です。
立体も商標になるんですね。面白い。
実は、ミッキーマウスは文字や図形で商標登録されているので、もし著作権保護期間が満了していても、商標で保護されます。
え! そうなんです?
商標の存続期間は登録から10年ですが、更新すればずっと有効なのですよ。
だから、ディズニーが商標を更新し続ける限り、商標権の及ぶ範囲に限っては、ミッキーマウスのブランドは守られ続けることになります。
やつは不死身のネズミなんですね……。
米寿とは思えない若さですね。
次回予告
今回の続きとして次回は“自動車の絵が描きたい”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!