杜のAndroid研究室

オンラインストレージ「Dropbox」「ZumoDrive」「SugarSync」

ケーブル接続不要でPCとファイル交換!メディアファイルのストリーミング再生もOK

(10/06/02)

 スマートフォン向けOS“Android(アンドロイド)”用アプリのライブラリサービス“Androidマーケット”(以下、“マーケット”)には、日々すばらしいアプリが次々と登場している。しかし現在のマーケットは人気アプリや定番アプリにたどり着くための仕組みが弱く、大量のアプリを前に途方にくれてしまう場面も多い。そこで『杜のAndroid研究室』では、さまざまなテーマに沿って窓の杜スタッフが厳選したアプリを紹介していく。今回は、オンライン上のファイル保存スペースを利用してPCや各種モバイル端末間で手軽にファイルの共有が行える、オンラインストレージサービスの公式クライアントアプリ3本を取り上げ、それぞれのアプリのもつ機能や特徴を紹介する。

各サービスのPC版の機能を知る

「Dropbox」PC版クライアント「Dropbox」PC版クライアント

「ZumoDrive」PC版クライアント「ZumoDrive」PC版クライアント

「SugarSync」PC版クライアント「SugarSync」PC版クライアント

 オンラインストレージサービスは、オンライン上に用意されたファイル保存スペースを経由することで、複数のPCやモバイル端末間で簡単にファイルのやり取りを行えるのが魅力。すでにAndroidでも、オンラインストレージサービスの定番“Dropbox”“ZumoDrive”“SugarSync”のクライアントが揃い踏みしており、目的や用途に合わせて好みのサービスを選ぶことが可能となっている。

 各アプリでどんなことができるのかは、それぞれのサービスの内容に依存しているため、アプリ選びにはまず各サービスの内容を知ることが重要だ。詳しくは下記リンクの特集記事を参照してもらうとして、各サービスの特徴を簡単にチェックしてみよう。なお、各サービスとも無償プランのほか、容量などの制限が緩和される有償プランも用意されている。無償プランの容量は、“Dropbox”と“SugarSync”が2GBで、“ZumoDrive”は1GBだが所定の条件を満たすことで比較的簡単に2GBへアップグレードできる。

 まず“Dropbox”だが、非常にスタンダードな内容で、PCのドキュメントフォルダ内に作成された専用フォルダの内容を、オンラインストレージの内容と自動的に同期できる。アップロードしたファイルは、クライアントソフトをインストールした複数のPC間で同期されるほか、フォルダ単位で同サービスの別のユーザーに公開したり、ファイル単位で一時的な参照用のURLをメールで送るなどして、ほかの人と簡単に共有できる。

 “ZumoDrive”は“Dropbox”と異なり、オンラインストレージがPCのネットワークドライブとしてマウントされるのが特徴。“Dropbox”が同期対象のファイルをすべてローカルにも保存するのに対し、必要に応じて随時ダウンロードする仕組みのため、ローカルの保存容量を節約できる。また、「iTunes」と楽曲やプレイリストの同期が行えるなど、各種メディアファイルの同期や再生を重視した作りとなっている。

 “SugarSync”は3つのうちもっとも多機能なサービスだ。“Dropbox”のように専用フォルダの内容が同期対象となるほか、任意のフォルダを同期対象として自由に追加できる。複数PC間で任意のフォルダ同士を同期できるなど同期の自由度が高いため、同期やバックアップのためのツールとしても便利に利用できる。なお、無償プランでは同期対象となるクライアントPCが2台までに制限されるが、Androidなどのモバイル端末はPC数に含まれない。

シンプルでわかりやすい標準的クライアントアプリ「Dropbox」

「Dropbox」「Dropbox」

 「Dropbox」はもっとも標準的な機能を備えたAndroid用のクライアントアプリだ。オンラインストレージ上に保存されたファイルを、ファイラーライクな操作画面を利用して、Android端末上から閲覧できる。ファイル一覧上でファイルをタップするとダウンロードが始まり、続けて対応するアプリでファイルを開ける仕組みだ。さらに、ファイルをタップ&ホールドすることでメニューが表示され、共有用のURLをメールやTwitterクライアントなどで知人に送信することも可能。ただしPCと異なり、端末とオンラインストレージ上のファイルを同期する機能は用意されていない。

 また、動画や音楽ファイルに関してはストリーミング再生にも対応する。このほかにも、画像ファイルを独自のビューワーでフルスクリーン表示したり、テキストファイルを独自のテキストエディターで編集したりできる。なお、テキストエディターは日本語の編集にも対応するものの、編集部で行ったテストでは、UTF-8以外の文字コードは文字化けしてしまった。ダウンロードして編集した結果を自動的にアップロードできる便利な機能なだけに、Shift-JISが利用できないのは残念なところだ。

 オンラインストレージに対応する形式のファイルをアップロードする機能も備えており、画像、動画、音楽ファイルなどのアップロードに対応する。カメラ機能を呼び出して撮影した画像や動画をそのままアップロードすることも可能だ。

ファイルをタップ&ホールドすることでメニューが表示される。ファイル共有用のリンクをメール送信したりTwitterクライアントなど各種アプリに渡すことが可能だファイルをタップ&ホールドすることでメニューが表示される。ファイル共有用のリンクをメール送信したりTwitterクライアントなど各種アプリに渡すことが可能だ

内蔵グラフィックビューワー。画面タップで操作ボタンが表示され、壁紙への設定などができる内蔵グラフィックビューワー。画面タップで操作ボタンが表示され、壁紙への設定などができる

【著作権者】
Dropbox, Inc.
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
0.9.7

「Dropbox」インストール用のQRコード「Dropbox」インストール用のQRコード

音楽のストリーミング再生や画像の閲覧が快適な「ZumoDrive」

「ZumoDrive」「ZumoDrive」

 「ZumoDrive」も、基本的な利用方法や機能は「Dropbox」とほぼ共通だが、「Dropbox」のファイル一覧に相当する“File”タブ以外に、“Music”と“Photos”という専用のタブが用意されている点が大きく異なる。

 “Music”タブでは、オンラインストレージ上の音楽ファイルを、音楽管理ソフト風のUIでストリーミング再生することが可能だ。アーティストやアルバム別の一覧や、シャッフル再生、「iTunes」から転送したプレイリストの再生にも対応するなど、かなり本格的な機能となっている。通信によるバッテリー消費を気にしないのであれば、Android端末上に音楽ファイルを保存しておく必要を感じなくなるほどだ。ただし編集部で行ったテストでは、一部の曲でタグ情報の日本語が文字化けしたので注意したい。

 “Photos”タブでは、フォルダ別に保存画像の一覧をサムネイル表示できるほか、画像のフルスクリーン表示にも対応する。画面の左右フリックで次々と画像を表示できるなど、こちらもローカルアプリケーションに近い感覚で快適に利用できる。

 ファイルのアップロードに関しては、任意の画像と動画、カメラで撮影した写真・動画のアップロードに標準で対応するほか、ファイラーアプリ「AndExplorer」を追加インストールすることで、端末内の任意ファイルのアップロードも可能。なお、「AndExplorer」が未インストールの場合、マーケットのダウンロードページへのリンクが表示される仕組みだ。

“Music”タブ。アルバムやアーティスト単位、プレイリストによる再生などが可能で、ジャケット画像の表示にも対応“Music”タブ。アルバムやアーティスト単位、プレイリストによる再生などが可能で、ジャケット画像の表示にも対応

“Photos”タブ。フォルダ一覧やフォルダ内画像のサムネイル表示、画像のフルスクリーン表示などに対応“Photos”タブ。フォルダ一覧やフォルダ内画像のサムネイル表示、画像のフルスクリーン表示などに対応

「ZumoDrive」

【著作権者】
Zecter Inc.
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
0.9.25

「AndExplorer」

【著作権者】
LYSESOFT
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.5

「ZumoDrive」インストール用のQRコード「ZumoDrive」インストール用のQRコード

「AndExplorer」インストール用のQRコード「AndExplorer」インストール用のQRコード

フォルダの簡易同期機能も備えた「SugarSync」

「SugarSync」「SugarSync」

 今回紹介するアプリのなかでもっとも高機能なのが「SugarSync」だ。オンラインストレージ上に保存されたファイルを表示したり、メール経由で共有できる点はほかのアプリと同様だが、SDメモリカード専用のファイラー機能を内蔵しており、SDメモリカード上のローカルファイルを自由に選んでアップロードできる。このファイラー機能は、ファイルの削除やコピー、リネーム、フォルダの作成といった一通りのファイル操作が可能な本格的なものだ。

 このほか、動画や音楽ファイルのストリーミング再生、内蔵ビューワーを利用した画像のフォルダ別一覧表示や全画面表示、テキストファイルの閲覧などにも対応する。音楽ファイルの再生機能では、画面上のボタンを利用してフォルダ内の前後の曲を再生することも可能だ。なお、テキストビューワーは日本語の表示にも対応しており、Shift-JISおよびUTF-8での表示が確認できた。

 「SugarSync」の最大の特徴は、ほかの2本のアプリでは省かれている同期機能を搭載していることだ。本アプリ上で利用できる同期機能には3種類が存在する。1つ目は内蔵カメラでの撮影した写真の自動バックアップだ。オンラインストレージ上にまだアップロードしていない写真が存在する状態でアプリを起動すると、アップロードの確認画面が表示される仕組みだ。アップロードされた写真は、オンラインストレージ上の専用フォルダおよび、PCのピクチャーフォルダ内の“Mobile Photos”フォルダと同期される。

 2番目は、オンライン上の同期済みフォルダの内容を端末内に取り込む機能だ。オンライン側ファイルの一覧上で同期対象にしたいフォルダをタップ&ホールドし、ポップアップメニューから[Sync to this Device]を選択しよう。同期が開始され、フォルダの内容がSDメモリカードの“My SugarSync Folders”フォルダ以下にフォルダごとダウンロードされる。

 3番目は、端末のSDメモリカード内のファイルをフォルダごとアップロードする機能だ。SDメモリカード内の同期対象にしたいフォルダをタップ&ホールドし、ポップアップメニューから[Sync to SugarSync]を選択しよう。同期が開始され、オンラインストレージ上の特殊フォルダ“Magic Briefcase”内の“Mobile Folders”以下にフォルダごとアップロードされる。

 2番目と3番目の方法で同期を行った場合でも、PCのように常時ファイルを同期し続ける機能はないが、同期済みのフォルダは特殊なアイコンで表示されひと目で判別できるほか、タップ&ホールドして[Re-sync with SugarSync]を選択することで、フォルダの内容が最新の状態に同期される仕組みだ。

フォルダのタップ&ホールドで同期指定が可能。この画面は同期設定済みのフォルダを再同期しようとしているところフォルダのタップ&ホールドで同期指定が可能。この画面は同期設定済みのフォルダを再同期しようとしているところ

「ZumoDrive」のように“Photos”タブが用意されているほか、“Shared”タブから知り合いの共有フォルダにアクセスできる「ZumoDrive」のように“Photos”タブが用意されているほか、“Shared”タブから知り合いの共有フォルダにアクセスできる

【著作権者】
SugarSync, Inc.
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
3.0.1

「SugarSync」インストール用のQRコード「SugarSync」インストール用のQRコード

自分に必要な機能をよく見極めてサービスを選ぼう

 ここまで紹介してきたように、ひと口にオンラインストレージ系アプリといっても、サービスごとに特色があることがわかってもらえただろう。基本的な機能は一通り揃えつつも、オンラインストレージ本来の機能に的を絞ったシンプルな「Dropbox」。音楽のストリーミング再生や画像の閲覧といった、オンライン上に保存されたマルチメディアファイルの再生に力を入れた「ZumoDrive」。端末上でのフォルダ単位の同期に対応し、PC版クライアントに近い多機能さを実現した「SugarSync」といった具合だ。

 オンラインストレージサービスは一度本格的な利用を始めてしまうと、サービスの乗り換えには大量のファイルの再アップロードなどそれなりの手間と時間が必要になってしまう。自分にとって必要な機能が何なのかをよく考えた上で、判断が難しい場合には最小限のファイルのみを試験的に同期してアプリを使い比べてみるのも賢い方法と言えるだろう。

(霧島 煌一)