#モリトーク

第68話

真の仮想プリンター

 前回の第67話、仮想プリンターとして動作するアプリケーションが公開されたことで、“Google クラウド プリント”が以前よりも格段に使いやすくなったことを紹介した。しかし、仮想プリンターのことをそもそも知らない人には、なにがどう使いやすくなったのか、伝わりにくかったかもしれない。ちょうどよい機会なので、仮想プリンターについて復習しておこう。

 仮想プリンターとは、その名の通り“仮想のプリンター”であり、プリンタードライバーとして動作するアプリケーションのことだ。インストールすれば、コントロールパネル内にプリンターのひとつとして表示される上、各種アプリケーションから印刷を実行したときにもプリンターの一覧に現れる。

 といっても、実際のプリンタードライバーのように、各種アプリケーションとプリンターの通信を中継するわけでも、何かを用紙に印刷するわけでもない。その代わり、ほかのアプリケーションから受け取ったデータをもとに、パソコン上で印刷を仮想し、その多くがファイル形式の変換を印刷に見立てる。つまり、さまざまなアプリケーションと連携し、ファイル出力を補助するプラグイン・アドオンのような存在が仮想プリンターだと考えればよい。

 窓の杜が仮想プリンター型のアプリケーションを取り上げるようになったのは2004年ごろからであり、「PrimoPDF」や「CubePDF」など、各種アプリケーションで開いている文書をPDFファイルへ変換するソフトが次々に登場した。当時、PDFファイルの需要が高まっていたところ、それらのソフトが無料だったこともあって、仮想プリンター型のアプリケーションが一気に注目を集めるようになった。

 また、Windows Vista以降のOSに標準搭載されている「Microsoft XPS Document Writer」も仮想プリンター型のアプリケーションであり、マイクロソフト社独自の文書フォーマット“XPS(XML Paper Specification)”で文書を出力したい場合に利用する。

「PrimoPDF」
「CubePDF」

 このように、仮想プリンター型アプリケーションの多くが、ある文書を別のフォーマットへ変換するため、『仮想プリンター = PDFファイル』といったイメージが強いだろう。しかし、余白の多いページを印刷対象から除外する「GreenPrint」や、プリンターインクを節約する「なんでもエコ印刷」など、実際の印刷を補助する仮想プリンター型アプリケーションも存在する。

 “Google クラウド プリント”および、その仮想プリンター型クライアントソフト「Google クラウド プリンタ」がおもしろいのは、印刷ジョブの送受信を代行するといったように、仮想プリンターの役割を文字通りに果たしている点だ。それに加えて、印刷対象をPDFファイルに変換した上で“Google ドライブ”へ保存する機能も搭載しており、それはまさに真の仮想プリンターであると言えるかもしれない。

(中井 浩晶)