週末ゲーム
第671回
鏡の“向こう側”で少女を待つものとは?サイコアドベンチャー「SPIEGEL EI」
2つの世界を行き来するシステムや、断片的な物語を考察する楽しみが特徴
2017年4月14日 11:00
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、サイコアドベンチャーゲーム「SPIEGEL EI」を紹介する。
本作はクリアまで2時間ほどの短編作品となっており、マルチエンディング制が採用されている。繰り返しプレイをすることで、断片的に語られる物語をさまざまな視点から理解できる仕組みや、ゲーム内で突きつけられる“選択肢”に対して“キャンセル”することができるゲームシステムが特徴だ。
“鏡の世界”に迷い込んだ少女の物語
本作の主人公は、とある孤児院に新しくやってきた少女“アイ”。入口に大きな鏡が飾られている孤児院で、アイはそこで暮らす“フロイ”そして“テューマ”に出会う。アイは、部屋の鍵をなくしてしまったテューマたちを手伝っているうちに、鏡に向かって赤い血のような跡が続いているのを見付ける。それを追うようにして鏡に向かうと、現実ではない異質な世界へ迷い込んでしまうのであった……。
本作の基本的な形式としては、ヒントを元に謎解きを行い世界を探索していくオーソドックスな探索ADVとなっている。特徴的なゲームシステムは、現実と鏡の世界の2つを行き来して攻略を行うシステムや、ゲーム内に存在するほとんどの選択肢に対して“キャンセル”を使用できる部分だ。
まず2つの世界を行き来するシステムに関して、アイは孤児院の入口にある鏡を調べることで、非現実的な風景が広がる“鏡の世界”に行くことできる。鏡の世界は現実世界を裏返したような構造となっており、現実世界で鍵のかかっているドアには鏡の世界でも鍵がかかっているなど、状況がそのまま反映される。
そのため、鏡の世界に隠された鍵をみつけ、現実世界のドアを開くことで、対応する鏡の世界のドアが開かれる……といったように、両方の世界でギミックを解くことによって進行できる形となっているのだ。
謎を解きつつゲームを進めていくうちに、アイはさまざまな選択肢を選ぶことになる。選択は“はい”“いいえ”といった基本的な2択から、どういった受け答えをするかといった内容までさまざまだが、それらの受け答えを選ぶほかに“キャンセル”を行うことができる。キャンセルによって、プレイヤーが選択肢を選ぶ代わりに、アイが自分の意思で返答を行う。
なお、作中でアイが自分の言葉を発するシーンは、ほとんどが“選択肢をキャンセルした時”だというのも特徴的な演出だ。次第にプレイヤーは、ゲームの主人公であるアイとの間に生まれる“奇妙な距離感”を感じていくことになる。
次第に交わりゆく“現実”と“鏡”の2つの世界
鏡の世界と現実世界を行き来していくうちに、次第に現実世界の人間が鏡の世界に現れるといった現象も起こるようになる。目の前で起こっていることは真実なのか?時折フラッシュバックされる記憶の風景とは?次々と起こるそんな出来事に翻弄されていくうちに、底の知れない沼に沈みゆくような感触を味わうことだろう。
本作は、2012年にリリースされて以降人気となったアドベンチャー「Ib」などに類する探索型フリーゲームの流れを汲みつつも、システムや物語の見せ方に工夫が見られ、独自性を感じる作品となっていた。特にゲーム開始時、名前の入力を促される場面での“とある演出”で、一気にこのゲームの世界観に引き込まれる方もいるのではないだろうか。
すべてを語りきらない物語も特徴となっており、全部で5つ存在するエンディングをそれぞれ見ていくことで、この物語の考察をプレイヤー自身が行うことも本作の楽しみ方のひとつだ。1つのエンディングまでは2時間程度で遊べる短編であるので、一度遊んでみてはいかがだろうか。
ソフトウェア情報
- 「SPIEGEL EI」
- 【著作権者】
- タオ 氏
- 【対応OS】
- Windows
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.02(16/02/05)