週末ゲーム

第670回

王女の苦難と成長をドラマティックに描く長編RPG「ファントム ルーラー」

自由度の高いキャラクターカスタマイズや物語を盛り上げるグラフィック演出も魅力

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、王女の苦難と成長を描く長編RPG「ファントム ルーラー」を紹介しよう。

王女の成長譚を中心に、さまざまなドラマが展開していく長編RPG

主人公のアーネ。意図せず始まった旅が、やがて彼女を大きく変えていく

 「ファントム ルーラー」は、300年前の戦いにより、その大半が闇に呑まれてしまった世界が舞台の長編ファンタジーRPG。主人公は、わずかに残された3つの国のひとつであるリヴィアス王国の第三王女、アーネスティン・レンフィース(通称アーネ)。とある事件をきっかけに、彼女は王城を離れ見知らぬ土地を旅することになる。

 ある目的のためアーネを王城から連れ去った男レヴィンスや、アーネの親友で側近だがアーネと離れ離れになってしまった少女レーナなど、多数の登場人物達の事情や想いが交錯してドラマが展開していく。“呪いの夜”と呼ばれる現象により負の感情から魔物が生まれたり、8種類用意されている魔法の属性も感情と密接にリンクしていたりと、人の感情がテーマのひとつとなっているのも特徴だ。

 箱入りのお姫様だったアーネがさまざまな現実を目にし、出会った人々や自分自身と向き合っていく成長譚と、闇に蠢き世界を揺るがす存在に立ち向かっていく者達の戦いが収束していくシナリオも魅力。表情差分が豊富に用意されたキャラクターイラストや、細かい仕草まで描き込まれたドット絵、サイドビューの戦闘アニメーションなど、自作グラフィックによる演出面も作品を盛り上げるものとなっている。

さまざまな人物や勢力の思惑が絡み合い、ドラマが展開していく

“結晶”を消費して魔法を習得。豊富なパッシブスキルによるキャラクターカスタマイズも醍醐味

 本作の特徴となるシステムが、魔物を倒したり、探索などで入手できる“結晶”によるキャラクター育成だ。属性ごとに8系統ある魔法はキャラクターごとに使える系統が決まっているほか、アーネはとある方法により使える魔法属性を増やすことができる。魔法は基本的にレベルアップで習得せず、該当する属性の結晶を一定数消費して習得する仕組みとなっている。

 また、同様に結晶を消費して、属性ごとのパッシブスキルを習得可能。スキルはステータス上昇や特定の状態異常の無効化、通常攻撃への特殊効果の付与などさまざまなものが用意されており、イベントなどで入手するものも含めて計10個まで自由にセットできる。

 魔法やスキルを習得すると、新たに習得可能な魔法やスキルが解放されるという形で、習得可能なものはどんどん増えていく。数多くの選択肢から何を優先していくかという結晶の割り振りや、状況に応じたスキルのセットがキャラクターカスタマイズの醍醐味だ。

属性ごとの結晶を消費し、さまざまな魔法やスキルを習得していく
スキルは同時に10個までセット可能

属性相性、熟練度……魔法の使いこなしが軸となるサイドビューバトル

戦闘はサイドビューのCTB

 戦闘はコマンド選択型で、敵味方が入り混じって順次行動するCTB方式。特徴的なのは魔法の属性相性の扱いだ。

 火属性は氷属性に強い、といった一般的な“すくみ”型の優劣に加えて、本作では1つの属性がさらに正(プラス)と負(マイナス)へと分かれており、“同属性でプラス・マイナスが逆同士”という攻撃が一番ダメージが増加する。言葉にすると少々ややこしいが、魔物の属性はすべてマイナスなので、基本的には“敵と同じ属性でプラスの魔法”が一番有効と、実戦における肝は意外とシンプル。一方、マイナスの魔法は基本威力が高めに設定されているが、魔物と同属性だと吸収されてしまうため使いこなすのが少々難しい、という位置付けだ。

 また、同じ魔法を一定回数使うと威力などが強化される熟練度の要素もあり、これは戦闘中でも反映されるため威力強化を実感しやすい。お気に入りの魔法を使い込むもよし、敵の属性や状況に応じて使い分けるもよしと、魔法を軸にした戦術の組み立てが楽しい作品となっている。

 ゲームを進めると使用可能になるコマンドである“戦術”もバトルのポイントだ。これは使用後もそのまま自分の行動順が継続する特殊なコマンドで、一定ターンの間パーティ全体にバフをかけたり、次の攻撃だけを強化するといったものがある。1回の戦闘でそれぞれ一度だけ使用可能な上、使用に条件があるコマンドもあり、特にボス戦などでは使い所の見極めが重要となる。

 さらに、特定属性の魔法の力を身に宿して自身を強化する“バースト”や、バースト中に使用可能な必殺技も存在。必殺技は非常に強力だが、HPがピンチの時のみ使用可能で使用後はMPが0になる。さらにバーストも終了し、バースト終了後はしばらくその属性の魔法を使えなくなる……とリスクも大きい。それだけに、うまく決まって強敵を倒しきれると爽快だ。

“戦術”はキャラクターごとにユニークなものが揃っている
強力だがリスクも大きく、使い所の見極めが重要な必殺技。カットインも見どころだ

トレジャーハントの楽しみも。シナリオ、バトル共に密度の濃い作品

魔物の撃破などで入手できる“お宝”を、非売品の装備品と交換できる

 本作の難易度は執筆時現在、“ノーマル”と“リアル”の2種類が用意されている。難易度リアルでは敵のパラメーターが強化されるほか行動なども変化し、歯応えのあるバトルを求める人向けの難易度となっている。

 筆者は難易度リアルでプレイしたが、序盤はそれなりにレベル上げや結晶稼ぎも必要になるなど、なかなかにハードな印象。しかし、ある程度魔法が揃ってくると戦術の幅が一気に広がり、これまで勝てなかったボスや、ダンジョンで宝箱を守る強敵などを倒せるようになるカタルシスを感じられた。

 また、難易度リアルでは戦闘勝利時の結晶取得数が増えるほか、売却したり、お金では買えない装備品と交換できるアイテム“お宝”のドロップ率も上がるため、敵が強いぶん、こちらもどんどん強化していける。難易度はゲーム開始時のほか、ゲーム中も随時変更が可能。どちらを選ぶかはもちろんプレイスタイル次第だが、難しい方の難易度がただ難しいだけでなく、キャラクター育成やトレジャーハントの楽しみを存分に味わえる作りとなっているのはうれしいところだ。

 イベントシーンにも比重が置かれており、公称プレイ時間は15時間以上。とくに中盤以降はストーリーが二転三転し、衝撃的な展開も待ち受けている。300年前にたった7人で世界を闇へと染めていった者達や、かつて隣国を恐怖に陥れた快楽殺人者など、歴史や過去の事件と現在の繋がりが明らかになっていくのも見どころ。1対1の戦闘でお互いの決意をぶつけあうような場面もあり、苦難に直面し成長していくアーネや仲間達の姿を、シナリオでもバトルでも存分に堪能できる密度の濃い作品だ。

世界を知り成長していくアーネの姿や、彼女達に待ち受ける苦難が描かれていく

ソフトウェア情報

「ファントム ルーラー」
【著作権者】
KOU 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2.03(17/03/30)