週末ゲーム

第595回

“陣形”が鍵のバトルが熱いダンジョン探索RPG「神刻の娘」

神々の武具“アーキタイプ”を使いこなし、強敵を打ち破れ!

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、陣形変更が肝となる戦闘が特徴のダンジョン探索RPG「神刻(とき)の娘 -VERITAS FILIA TEMPORIS-」を紹介しよう。

神々の武具を求めて異界を冒険するRPG

クォータービューで描かれる2DダンジョンRPG

 「神刻の娘」は、神の力を宿した人間“神格者”でパーティを組み、ダンジョンを探索していくRPG。天空に浮かぶ“まほら島”の女神ラプラスによって地上から召喚された神格者達は世界の終末を防ぐため、神々の武具“アーキタイプ”を求めてギリシア神話や北欧神話の世界など、さまざまな異界で冒険を繰り広げて行く。

 戦況に応じて陣形を変更しながら戦っていく、自動進行ながら戦略性の高いバトルが本作最大の特徴だ。また、ダンジョン探索によりアーキタイプや、人の手により造られアーキタイプに準じる力を持つ“人造武具”を集め、パーティを強化していくのも醍醐味となっている。

 ダンジョンや戦闘画面はクォータービューで、描き込まれたドット絵によるバトル演出も魅力。また、BGMは『ロマンシング サ・ガ』『パズル&ドラゴンズ』などで知られる伊藤賢治氏が全曲手がけており、熱い戦闘曲などでプレイを盛り上げてくれる。植田佳奈さん、江口拓也さん、下野紘さん、田村ゆかりさん、中原麻衣さんなど声優陣によるボイスも見所だ。

 なお、本作はDMMにて基本プレイ無料のブラウザゲームとして提供されており、一部のアイテムや機能拡張が課金要素となっている。神格者をランダムに召喚する、いわゆる“ガチャ”要素はあるが、メインクエストの進行で仲間になる神格者だけでも十分にゲームを進めることが可能。また、課金アイテムによる召喚でなければ登場しないキャラクターはおらず、キャラクターの能力を補正する“称号”にのみレアリティが存在する。称号は一種のやり込み要素で、集める楽しみはあるが攻略に必須というほどではない。

ゲーム開始時には神格者を一人選択。選ばなかったキャラクターもストーリーの進行で仲間になる
“トウキョウ”から“まほら島”に飛ばされてきた神格者は、ラプラスの導きによりアーキタイプ探索へと旅立つ
神格者はクエスト進行中に出逢うほか、ゲームを進めると強敵撃破などで手に入るアイテムにより召喚ができるようになる。召喚時は3人の候補から選ぶことが可能。ちなみにゲームタイトルは「神刻の娘」だが神格者は女性に限らない

リアルタイムに進行する戦略性の高いバトル。陣形とウェポンアーツを使いこなせ!

陣形編集画面では数字をクリックして入れ替えることでパーティメンバーの立ち位置を変更できる

 ダンジョン探索は神格者5人でパーティを組んで行う。神格者は盾役となる“アーマー”や物理攻撃職の“ソルジャー”、魔弾で攻撃する“ソーサレス”、回復役の“ヒーラー”などさまざまなクラスに分かれており、戦闘時はそれぞれのクラスごとに設定された行動を自動で行う仕組み。ここで重要になるのがパーティメンバーの立ち位置を決める“陣形”の切り替えだ。

 陣形は探索やイベントで入手し、あらかじめ5つまでセットしておく仕組み。パーティメンバーの立つ位置によって攻撃力や防御力に補正がかかるほか、前列と後列の概念があり、クラスごとの行動はどちらに居るかによって変化する。たとえばアーマーなら前衛では攻撃、後列では自分のHPを回復といった具合だ。さらに、敵・味方とも基本的に、攻撃時は正面の敵を優先して狙う。

 各陣形ごとに誰がどこに立つかは自由にカスタマイズ可能。これにより、陣形の変更は各パーティメンバーの行動の変更と攻撃ターゲットの変更、さらには“どの敵から誰が攻撃を受けるか”という被ターゲティングの制御まで兼ねることになるわけだ。

 敵が強力な技を繰り出す予兆を見せた際に、正面の味方が危なければHPに余力のあるメンバーと位置を交替する……といった立ち回りが重要で、オートバトルといってもよほどの戦力差がなければ、完全放置で済む戦闘はほとんど無い。プレイの感触としてはクラスごとの行動が固定のためMMORPGなどで定番のロール制に近いが、敵の注意を引き付けるヘイトコントロールの代わりに、陣形変更によって攻撃を受けるメンバーを制御する形になる。

敵の足元が赤く光ったら強力な攻撃を出してくる予兆。正面に居る味方は残りHPが低く、このままではやられてしまうので陣形を変更する
“アーマー”クラスのメンバーが攻撃を受けて味方を守ることに成功

 パーティ編成はもちろんプレイヤーの自由だが、敵の攻撃はザコ戦でも激しいため安定して戦うには盾役と回復職はほぼ必須。その他の攻撃職は、物理・魔法と攻撃タイプの違いや、後列に居るとき自己回復するか遠隔攻撃をするかといった違いで特徴付けられており、敵の傾向や、持久戦か速攻かといった戦闘スタイルに応じたパーティ編成が楽しめる。

後列では魔法攻撃を行い、前列での剣攻撃にも特殊能力“魔法剣”の効果で魔法属性が乗るためどんな敵にも安定してダメージを通せる“魔法剣士”。ただしどちらも特化型より威力は低い器用貧乏とも言えるクラスだ
全クラス最高レベルの攻撃力と、最低レベルの防御力を併せ持つ“バーサーカー”。後列に居る時は自己の攻撃力を高め、前列に出た時に強力な攻撃を繰り出す
武具はクラスによって使える種類が決まる。攻撃範囲は使用するメンバーの立ち位置がベースとなる

 戦闘にプレイヤーが介入する要素でもう1つ重要なのが、パーティ共有の値である“WP(ウェポンパワー)”を消費して、アーキタイプや人造武具の力を引き出すウェポンアーツだ。本作において武具は装備するものではなく、アイテムのように使うことでその効果を発揮する。WPは時間経過で増えていき、武具ごとの必要WPを満たせば他の行動に割り込んでウェポンアーツを発動できる。

 攻撃タイプの武具は、前列の敵1体を対象とする聖剣、直線的に後列まで貫く神槍、全体攻撃となる幻杖など種類によって効果範囲が異なる。また、パーティの回復や支援を行う護杖や天盾も存在する。

 クラスなどによって扱える武具の種類に違いがあるほか、特定種類の武具の効果にボーナスが付く場合も。さらに、通常攻撃と同様にキャラクターの立ち位置によって攻撃範囲が決まるため、ここでも陣形は重要な要素となる。

 また、陣形を変更しているとまれに、仲間同士で協力して攻撃などを行う“ユニオンアタック”が発動。一度発動したユニオンアタックは同種の陣形を利用時に、WPを消費して任意に発動できるようになる。いわゆる技の“閃き”を、陣形変更をトリガーに発動する連携技としてアレンジしたものと言えそうだ。

ユニオンアタックは強力な連携攻撃。範囲の広い攻撃や特殊効果を持つ攻撃も多く、使用がクラスに依存しないため使い勝手もよい
2人突撃攻撃なら前列に2人が並ぶ陣形など、陣形に応じて使えるユニオンアタックが変化する
神々の武具であるアーキタイプの効果は桁違いだが、必要なWPも多い

 当然、強力な武具やユニオンアタックほど消費するWPは大きい。自動進行する戦闘の最中に、WPを溜めて敵を一掃できる大技を放つか、小中規模の技をこまめに使うか、回復や防御力アップなどで持久戦に持ち込むか……などなど、限られたリソースをどう配分していくかをリアルタイムに判断していくのが面白く、陣形変更と並んで戦闘にメリハリを与えてくれる。

「神刻の娘」戦闘プレイ動画
ザコ戦とボス戦(1分20秒あたりから)を収録

さまざまな仕掛けと神話世界の風情がダンジョン探索を盛り上げる

 クエストはダンジョンを探索し、基本的には出口となるゲートに入ればクリア。ダンジョンは双六のようなマス目がつながったフィールドで抽象的に表示されるがランダムダンジョンというわけではなく、罠だらけの道に敵が多い道と進行ルートが2つあったり、特定の順番でスイッチを押すことで先に進めたりと、さまざまな仕掛けで冒険らしさを感じさせてくれる。

一方しか進めず引き返せなくなる道や、さまざまな仕掛けが神格者達を待ち受ける

 また、特定の神格者がパーティに居ると、NPCからの依頼といったイベントが発生。とくに神話の異界では、こうしたイベントやクエスト開始時などに表示されるダンジョンの情景描写が神話のエピソードにもとづいており、古典的な味わいのあるテキストとも相まって独自の風格を醸し出している。

特定の神格者がパーティに居ると専用のイベントが発生
NPCを護衛する依頼。勝手に動き回るNPCがモンスターのシンボルに重なると即失敗というなかなか難儀なイベントだ
神話の異界ではクエスト開始時の情景描写が、一種のフレーバーテキストとしてプレイヤーを神秘の世界に誘う
パーティにレンジャーが居れば罠の位置を見ることが可能に

 エンカウント方式はシンボルエンカウントで、パーティが一歩移動すれば敵シンボルも一歩動く仕組み。これを利用して敵を避けつつ進むことも可能だ。また、神格者のクラスには付近の罠を感知してフィールド上に表示したり罠を回避できる“レンジャー”など探索に役立つ特殊能力を持つものもあり、戦闘能力だけでなくこうした能力もパーティ編成に関わってくる。

ライフ制により高まる緊張感。どれだけ戦い続けられるかはプレイヤー次第

 ここまでは本作のコアなゲーム要素について紹介してきたが、手触りとしてはブラウザゲームというよりは、コンシューマのダンジョンRPGに近い。一方で本作のブラウザゲームらしい要素としては、HPとは別に存在する“ライフ”と、その回復のための休養が挙げられる。

 ライフはクラスなどにより異なるが基本的に最大5~6つあり、戦闘不能になると1つ減る。パーティのうち誰か1人でもライフが0になると、クエストは失敗し強制撤退となる仕組みだ。戦闘不能自体からはHP回復アイテムで簡単に回復できるが、このシステムにより戦闘不能がリスク要因となり、戦いに緊張感を与えている。

パワースポットで休んでライフを回復。失ったライフの数に応じて時間がかかる

 そして、失ったライフは拠点の施設“パワースポット”で休養することにより回復する仕組みで、この際は失ったライフの数に応じて回復まで実時間がかかるのが本作のブラウザゲームらしい要素となっている。

 ただ、類似する仕組みの多くが“疲労度”や“スタミナ”といった形で、プレイ内容の如何に関わらず出撃を続けることでプレイに制限がかかるのに対し、本作のライフはあくまで“戦闘不能”で減るのがポイント。どれだけ継続して戦えるかはプレイ内容次第というわけだ。

 ライフが減るのはたとえば、新しいクエストで敵が存外に強かったが強行してしまった時や、ボス戦で存分に死闘を繰り広げた時、あるいはうっかりしていて陣形変更が間に合わず味方を守り切れなかった時など、基本的に自分自身のプレイの結果なので納得感が高い。

 また、威力の割に消費WPが低いが変わりにライフを消費する魔剣もあり、文字通り命を削る浪漫技の趣がある。ライフの存在はプレイを制限する要素というよりは、キャラクターの奮闘をリアルに感じられるコンテンツに昇華されているようにも感じた。

 なお、パワースポットは標準で2枠あり、最大5枠までの拡張が課金要素となっている。このあたりの作りは、同じDMM配信の人気作「艦隊これくしょん~艦これ~」の入渠ドッグに近い。拡張することで利便性が上がるのは間違いないが、クエストに出撃した全パーティメンバーのライフが減るとは限らない上、キャラクターの数自体が「艦これ」ほど多くはないので、「艦これ」のように拡張がほぼ必須、というほどではなさそうだ。

加速していく物語からも目が離せない、“手軽にしっかり”遊べる良作

 本作のストーリーは、まず“まほら島”で仲間を集め、続いてアーキタイプを探すため神話の異界を旅する展開が続く。序盤からしばらくは探索が中心でシナリオは最小限という印象だったが、ある章の終盤から物語は急展開を見せる。

 それに応じてクエストも、1回しか挑戦できず、失敗してもストーリーは進むが有用なアイテムの入手機会を失う拠点防衛クエストなど、緊迫感に満ちたものが待ち受けている。セーブ・ロードの概念がなくやり直しが効かないオンラインゲームという形式が、いい方向でゲーム性に寄与していると感じさせられた。

 昔ながらのしっかり遊べるダンジョンRPGのテイストと、マウス操作やオートバトルによる手軽なプレイ感が程よく融合した作品。3月のサービス開始以降、度重なる調整でゲームバランスや遊びやすさが改善されているのも好印象だ。やり応えのある戦闘やダンジョン探索が好きというRPGファンなら、ぜひ一度試していただきたい。

アーキタイプを求める神格者達の前には、さまざまな試練が待ち受ける
ストーリーを進めていくと、自分達とは別に動いている神格者達と相対することに。ラプラスとは異なる勢力が……?
陣形を編み出して神格者達へ何度も挑み、負けると勝者への礼儀としてその陣形を教えてくれる隊長ゴブリン。敵ながらどうにも憎めない相手だ
各神格者の背景設定はキャラクター紹介に軽く記載される程度だが、探索や戦闘時などの台詞でキャラが立っており、冒険を続けるうちに愛着が沸いてくる

(中村 友次郎)