余裕がないときの心の整え方 特別出張版
苦手なあの人と同じプロジェクトに【禅マインドフルネス】
人間関係が良好になる「あるある」
2016年11月25日 06:20
この集中連載では、医師であり禅僧の川野泰周氏がストレス社会の「あるある」問題の向き合い方について教えてくれる著書『「あるある」で学ぶ 余裕がないときの心の整え方(できるビジネス)』から抜粋した“心が折れるその前に、あなたの心を整える方法”を、心がざわつく年末に、短期集中連載というかたちで忙しいビジネスパーソンの皆さま、家庭を支える主婦の皆さま、将来を模索している学生の皆さまにお届けします。
苦手なあの人と同じプロジェクトに
うーん。やりにくい……
誰でも苦手な人はいるもの。もし、苦手な人と同じプロジェクトになった場合、きちんとコミュニケーションをとっていかなければ、いい仕事ができません。
会社という組織の中で上司や部下との人間関係に悩んでいる人がいかに多いことか。日頃、精神科クリニックで診療にあたっている私にはよく分かります。職場だけではありません。本来はくつろげる場所であるべき家庭においても、夫婦間、親や子供との関係など、近しい人たちとの関係に悩みを抱えている人は驚くほど多いものです。
より信頼感のある、温かな関係性を手に入れたいとき、あるいは取り戻りたいとき私は「マインドフル・リスニング」をお勧めしています。
人間は本来、他者に「うわの空」
私たちは日頃、相手の話をよく聴いているようで、実はほとんどはうわの空ということが少なくありません。ハーバード大学の心理学者であるマシュー・キリングスワースが二〇一〇年に発表した研究データによれば、人間は五十パーセント近くの時間を「今やっていること」について考えずに過ごしているそうです。これは人と会話をしているときにもあてはまります。そう、人間は本来他者の話をよく聞かないものなのです。
そこでまずは、相手の話に注意を向けて一生懸命に聴くトレーニングをしてみましょう。大切なのは漫然と「聞く」のではなく、意識して「聴く」気持ちを持つことです。
苦手な相手にこそ、寄り添う気持ちで
苦手な人と話すチャンスがあったら、まずは相手の話を意識的に一生懸命に聴きましょう。聴き終わったら、その人がどんな気持ちで話をしたのか推測し、それを言葉に出しましょう。たとえば相手が過去の悲しい経験について語ったときには
「Aさんは本当に悲しい思いをしたのですね」
と、いうように。気をつけなければいけないことは、いきなり反対意見や疑問で返さないこと。どうしても反対意見を言いたいときには相手の言葉を肯定したうえで、言うようにします。
たとえばAさんと意見が違ったとき
「いや、a案はないです。b案でしょ」
ではなく、
「Aさんのa案も興味深いですね。私はb案が面白いと思います」
というように伝えます。
もしも相手の気持ちを推察できないときは相手の発言内容を「サマライズ(短くまとめて反芻(はんすう))」するのです。たとえばAさんが
「自分はもっと評価されてもいい!」
と話したら、
「なるほど。Aさんはもっと評価されてもいいとお考えなのですね」
と、おうむ返しで返すのです。
話を真剣に聞いてもらえると嬉しい
本当にこんな簡単なことで対人関係が良くなるのか、疑念をお持ちかもしれません。しかし、この「マインドフル・リスニング」が効果絶大なことは、臨床心理学やカウンセリング、コーチング、コンサルティングなど多くの分野で知られています。
苦手な相手との関係性を良くしたいなら、まずはその相手を尊重し、集中して話を聴くことです。関係が悪いと、あなたにとって苦手な相手は
「話半分程度にしか聞いてもらえないだろう」
という先入観を持っています。そんな相手に対してマインドフルな聴き方を繰り返せば、相手の接し方も徐々に優しさを帯びたものに変わってくるはずです。自分から与えた優しさが自分に戻ってくる。これは仏教でいうところの「因果応報(いんがおうほう)」そのものです。
【POINT!】 |
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・相手の言葉を一生懸命に聴く |
・相手の気持ちに寄り添う意識を持つ |
・反対意見を言う前に、一度相手の言葉を肯定する |