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~4小節(くらい)ずつ作るオリジナルソング~
【第1回】
オンラインソフトで音楽制作に挑戦だ!
(01/09/14)
モッティ
音楽は人の心を豊かにする! 歌うって素晴らしい! 演奏するって楽しい! 音
楽バンザイ!! でも、おいら楽器できないんだよなぁ、歌ヘタなんだよなぁううう…。
と嘆いている全国ウン10万の窓の杜読者の皆さん! 音楽こそパソコンを使うと楽し
くできる分野なのです!! どうせ音楽を作るんだったらオリジナルソング!そしてネッ
トで全世界デビュー! この連載はそんな(短絡的な)夢を現実のものにするための、
ちょっとしたお手伝いをしたいなぁ、というものです。MIDIで作曲、歌の録音からエン
コードまで、オンラインソフトでオリジナルソング作り。それも4小節(くらい)ず
つ、ゆっくりアバウトに作ってみよう! え?「!」が多いって? それは筆者の意
気込みということで……。
ケケ中
ある青年の夢……それは歌手デビューだった
僕、歌手デビューしたくて東大阪から今日上京してきたんですわ
その日、この連載の語り部にして筆者にしてライターことモッティは、窓の杜編集
部の片隅の席で頭を抱えていた。間近に迫った新連載のネタ決め。それが目下の課題
だった。編集担当I氏も編集チーフY氏も「まぁ根を詰めすぎずに気楽に考えてくださ
い」などと言葉には出すが、決して目は笑っていない。
そんなときだ。「あのー、リットーミュージックさんはこちらですか?」とモッティ
に語りかける声がする。音楽雑誌や楽譜、ビデオなどを販売するリットーミュージッ
クは、たしかにインプレスのグループ会社だが、窓の杜編集部とはちょっと離れた場
所にある。宅配便業者か来客が間違えて来てしまったのかと顔を上げると、そこには
大きな荷物をもった青年……色白で臆病そうだが、口とあごにいかにも無精ひげが伸
びちゃいました、という感じのひげを生やしている……が立っていた。
「いやリットーミュージックは……」と言いかけたがその青年はかまわず続ける。
「僕、歌手デビューしたくて、今日東大阪から上京してきたんですわ。リットーミュー
ジックさんやったらなんとかなるかなぁ思うて」。いや、おいらに言われても……と
思ったが、「待てよ、どうやらネタになりそうだぞ。オンラインソフトで音楽を制作
させて、それを連載にしちゃえばイイじゃん!」と心の中のもうひとりのモッティが
ささやく。すかさず「歌手デビューですか? いいでしょう。まかせてください!
ちょうど今、インターネットで歌手をデビューさせようという企画が進んでいたんで
すよ。あ、申し遅れました。プロデューサーのモッティです。よろしくね!」と答え
てしまった。ちらりとI氏、Y氏の方を見ると、ふたりとも大きくうなずいている。で
も、言ってしまった手前、にこやかに握手。あぁ、この青年の人生を狂わせてしまう
のか……という良心の呵責をほんのちょっぴり感じながら……。
ちょっとトロピカルなフュージョンっぽい歌謡曲!?
「僕、バリバリのユーロビートとか好きなんですよ」などという話を聞いているう
ちに、この青年の顔と、ある男の顔がダブって見えてきた。「キミ、もしかして、ケ
ケ元さん?」そう、数カ月前に「ゼロからはじめる3D CG道場」で真人間に更正させ
た、あのケケ元に瓜ふたつなのだ。ケケ元は師匠であるモッティ対しても容赦なく牙
をむくような凶暴な男で、さんざんてこずらせられた。だから記憶を封印していたの
だが、この青年の顔はその封印を解くほどよく似ている。
何!? ケケ中!? 言われてみれば
「いや、名前はケケ中っていいます」この言葉を聞いて、ケケ元の苦い記憶も吹っ
飛んでしまい「ケケ中!? キミ、ちょっとメガネを取って!」と叫んでしまった。い
ぶかしげにケケ中はメガネを取ったのだが、その顔は、あの伝説のスーパーギタリス
トの名前を思い起こさせるのに十分だった。
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロを弾くケケ中だが……
「おお! じゃぁキミは今日からケケ中正義だ! ギターは弾ける?」とたずねる
と、ケケ中はこくりとうなずき、持参したギターを手にした。弾き始めたのは、定番
中の定番、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロ。「お、いいね! でも、
歌の部分は退屈だからいきなりソロ弾いちゃって」と注文をつけると、「いや、イン
トロしかでけんのですわ。すんまへん」と脱力な答えが返ってきた。「ま、ギターは
練習してうまくなってもらわなきゃいけないね。なんといってもケケ中正義だから。
それから、キミの曲の曲調はちょっとトロピカルなフュージョンっぽい歌謡曲ね。そ
うと決まったらまずは髪型だ。オールバックでいこう。その間に僕が音楽制作に使う
ソフトをピックアップしているから」ケケ中は何を言われているのかよくわからない
ようで(あたりまえだ)、ぽかんとした表情で頭にポマードをつけはじめた。
音楽制作用オンラインソフトで、デビューを目指せ!
ひとことでPCで音楽制作するといっても、MIDIファイルを作って演奏する、歌や楽
器を録音して音声ファイル編集する、楽器や歌の練習用ソフトで音楽的な才能を磨く
など、いろいろな側面を持っている。ここではこの連載で使えそうなオンラインソフ
トを紹介してみるぞ!
まずはMIDIファイルを作るためのシーケンサーから見てみよう。「Cherry」はステッ
プ入力(いわゆる打ち込み)とMIDIキーボードからのリアルタイム入力に対応したシー
ケンサー。ピアノの鍵盤を模した「ピアノロール」という画面に、音の高さや長さを
視覚的に表示しながら音楽を構成していくインターフェイスだ。MIDI中級者を対象と
しているソフトなので、初心者には少し敷居が高く感じられるかもしれないが、慣れ
てしまえば強力な武器になるぞ。ステップ入力もリアルタイム入力も面倒だ! とい
うときには「ソング頼太」。マイクに向かって鼻歌を歌うと、そのメロディがMIDIファ
イルとして書き出せるという、市販ソフト顔負けの強力な機能を持っている。今回は
いわゆる「歌モノ」を作るので、メロディを作るときに使うとしよう。
「Cherry」
「ソング頼太」
録音、ミキシング、エフェクトは「Music Studio Standard」が強力だ。本格的な
マルチトラックのハードディスクレコーダーとMIDIシーケンサーがひとつになった統
合型ソフト。音声ファイルに対する多彩なエフェクト機能も備えている。MIDIシーケン
サーは「Cherry」と「Music Studio Standard」のどちらを使うか迷いそうだ。
音楽のトラックをバッチリ作ったとしても、歌とギターがしっかりしていなきゃい
けない。前述の「ソング頼太」の“カラオケの達人”という機能を使うと、ボイスト
レーニングができるので、ケケ中には後々歌の特訓をしてもらうことにしよう。そし
て、フュージョン風にはさわやかなギターのカッティングも必須。ならばギターのト
レーニングには、「Virtual Guitar」でコードを覚えさせるとしよう。
えい、ここまでオンラインソフトを使ったのなら、歌詞までオンラインソフトで作っ
てしまえ!「驚異の自動作詞 ミーハー編」は自動的にミーハーな感じの歌詞をラン
ダムに作成してくれる。歌詞の元になる辞書ファイルには自分で語彙を足せるから、
トロピカルな言葉が満載された辞書ファイルを作ってしまえば、歌詞もバッチリだ。
最後の仕上げはエンコード。MP3やWMA、RealMediaといったストリーミング形式に
エンコードして世界デビュー! このジャンルのソフトには「Windows Mediaエンコー
ダ」や「Real Producer」などの定番がある。
4小節「くらい」ずつ作る!
さてさて、ケケ中のヘアセットもできたようだ。想像したとおり、うさんくささ爆
発だ。心なしか肌の色もこんがりと焼けてしまったようだ。でも、これでいい。これ
からケケ中には世界デビューという野望に向かって突き進んでもらわなければいけな
いのだから、少しくらいうさんくさい方が個性的だろう。
ということで、次回から「ここまでできました」という結果のファイルを掲載して
いくことになる。この目安がだいたい4小節。きっかり4小節と決めてしまうよりも、
臨機応変、ケースバイケースで作っていく方が、作りやすいしおもしろいかな、と。
次回はまず曲の雰囲気を決定する重要な要素、リズムから手をつけよう。果たしてケ
ケ中はデビューできるのか!? 注目せよ!!
連載で使用予定のオンラインソフト
(文:モッティ 監修:フランクン古田)