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~4小節(くらい)ずつ作るオリジナルソング~
【第7回】
ケケ中バージョンアップへの道 ボーカル編
(01/11/09)
モッティ
オンラインソフトで作ったオリジナルソングを軽い気持ちで全世界に発信でもしてみましょうか? みましょうよ! というこの企画。東大阪から単身上京してきたちょっとおマヌケな歌手志望の青年「ケケ中」。ここのところ放置気味だった彼だが、ボーカルパートのメロディが完成したことによっていよいよ主役になるときが来たぜ!
今回から3回(くらい)にわたって、ケケ中をバージョンアップするための方策を練ってみる。あ、もちろん楽曲のブラッシュアップもするけどね。4小節(くらい)ずつ、ゆっくりアバウトに作ってみよう!
ケケ中
「ジャ○アン・リサイタル」からの脱却を目指して……
「モッティさん! アレ、どうにかしてくださいよ。キー!」
それは「歌」なのか?
ものすごい勢いで編集担当I氏に詰め寄られてしまった。I氏の指さす先には恍惚とした表情で「ラララ~」と大声を張り上げるケケ中がいた。前回作ったボーカル入りの楽曲をバックグラウンドとして流しているから、歌っているんだよな、きっと……。しかし、傍から見たら、その声はとうてい「歌」になっていない。
「ちょっと、ケケ中君、キミが歌好きだということはよくわかった。だけど、がなりたてればいいってもんじゃないんだ。キミも歌手志望だからそれくらいのことはわかってるよね」と、かなりやさしくケケ中を諭すモッティ。
「はぁ。自分では素晴らしい歌声やと思うとるんですが、誰も誉めてくれんのですわ」
( ゜д゜)ポカーン
やばい、ケケ中気付いていない。自分の歌が「ジャ○アン・リサイタル」だということに……。しかし、せっかくやる気になっているところを頭ごなしに否定して、そのやる気をそいでしまっては元も子もない。それをなだめすかして、いい方向へと持っていくのもプロデューサーの手腕なのだ。
「いや、元気なのは結構。だけど、もうちょっと工夫するともっとよくなるよ(汗)。まだ歌詞ができていないから、まずは基本的な発声練習からやってみよう」
ケケ中はちょっと不満そうな顔を見せたが、「歌う」のをやめた。
ボイストレーニング&音感強化へ!
さっそく声を出すときの姿勢をちょこっとだけケケ中に指導。足は肩幅よりもちょっと狭く、背筋は伸ばしながらも力まずに立つ。このとき、後頭部というか延髄のあたりを後ろからつまみあげられたような感覚でアゴを引くといい。自然とお尻がキュッと引き締まるはずだ。呼吸方法は腹式呼吸。腹筋に力を入れながら息を吐き、力を緩めたときに胸に空気が入ってくるような呼吸法だ。よく「お腹から声を出す」というのはこれだ。
と、モッティに教えられるのはこれくらいのもの。ケケ中の場合、ちゃんとしたボイストレーナーのもとでイチからしごいてもらうというのが理想だが、それでは窓の杜的ではない。ボイストレーニング&音感強化にもオンラインソフトを活用してみるぞ!
まず取り出したのはおなじみ「ソング頼太」。今回は“カラオケの鉄人”機能を利用する。マイクから入力された声の高さを測定して、きちんとした音の高さで歌えているかを判定してくれるセルフボイストレーナーともいえる機能だ。
「ソング頼太」の“発声基礎”では単音の発声練習ができる
まずは小手調べとして、“発声基礎”からやってみよう。Windowsシステムのボリュームコントロールで、録音をマイク入力に指定しておく必要があるぞ。ノイズを拾ってしまうとうまく測定できないのでマイクの設置にも注意だ。準備が整ったら[ツール]-[カラオケの鉄人]-[発声基礎]を選択。[出題]ボタンを押すと五線譜に音符が表示され、MIDI音源からその音が流れる。続いてマイクのアイコンが出ているうちにマイクに向かって流れた音と同じ高さで発声してみよう。測定された音がきちんと合っていれば「ピンポーン」、間違っていると「ブー」という音が流れる。キチンと歌っているつもりでも、声の出初めからちょっと上ずってしまったりすると「ブー」となってしまう。“鉄人”と銘打っているだけに結構厳しい。入力した声がオクターブ下に測定される場合は出題範囲を1オクターブ下げるといい。
ケケ中が10分ほどチャレンジした結果、正解率10%。明らかにノイズを拾ってしまったものを除いても20%というところだろうか。「いや、いきなりこの音を出せ言われても、メロディになってないから難しいんですわ」とぼやくが、「それが実力なんだよ」と言いたいところをグッとこらえて、「じゃぁ、今度はメロディでやってみようか」とあくまでもやさしく振る舞うモッティプロデューサーだった。
フレーズの発声練習は「ソング頼太」の“発声実践”機能を使おう
メロディを使って発声練習するときには“発声実践”だ。「ソング頼太」上で楽譜をコピーしておいて[ツール]-[カラオケの鉄人]-[発声実践]。今回はサビのメロディをコピーして使ってみた。「Play」ボタンを押してメロディを聴いたら続いて[Rec]ボタンを押してマイクに向かって歌う。ウィンドウには歌うべきメロディの楽譜と、実際の声を楽譜にしたものが並んで表示される。ふたつの楽譜のうち合致している個所、つまりキチンと歌えている個所にはスマイルマークがつく。
意気揚々とチャレンジしたケケ中だが、結果はスマイルマークふたつのみ。さすがにへこんでいる。
「まぁ、歌っているうちにだんだんと上達してくるよ。繰り返しやることが重要さ」とモッティはあくまでも“いい人”を装ってケケ中に声をかける。「ここで絶望して東大阪に帰られちゃったらこの企画どうなっちゃうんだよ」という心の声を押し殺しながら……。
音感を養う「音感マスターGX」
ケケ中にはもうひとつソフトを与えておいた。「音感マスターGX」だ。これは出題されたフレーズをなぞって、ウィンドウ内に表示されたピアノの鍵盤をクリックしていく音感強化ソフトだ。「ソング頼太」の“聴音”機能でも単音で同じようなことができるが、「音感マスターGX」はフレーズで出題されるのがミソ。声だけではなく、耳を鍛えるというのも重要だ。
ケケ中にはこれらのソフトで練習させておいて、モッティの方は楽曲のブラッシュアップに励むとしよう。
グルーブクオンタイズでハネた感じのリズムにする!
前回フランクン古田氏にズバッと指摘された伴奏MIDIの完成度不足だが、まずはドラムとベースのリズムパートから手を加えていく。現状のリズム、特にドラムに関しては「Cherry」のピアノロールで16分音符を打ち込んだため、キッカリとした「ツクツク・タクツク」というリズムになっている。しかし、このままではあまりにも機械的過ぎるため、もうちょっとハネた感じ、つまり「ツックツック・タックツック」といういわゆる「シャッフル」っぽいリズムにしていこうというわけだ。
シャッフルにするためには、8分音符の長さを3つに分割した「3連譜」を使うのが手っ取り早い。しかし、完全なシャッフルしてしまうと、今までの曲調がガラッと変わってしまう恐れもある。今回は「ちょっとシャッフルっぽい」くらいのハネたリズムを目指すことにしよう。
これを実現するのが、MIDIシーケンサーとマルチトラックオーディオエディターの統合ソフト「Music Studio Standard」に実装されている“グルーブクオンタイズ”機能だ。多くのMIDIシーケンサーに「クオンタイズ」という機能が搭載されているが、これはリアルタイム入力でバラついた音の間隔を、ちゃんとした音符のタイミングに揃えるのによく使われる機能だ。グルーブクオンタイズは、ジャストのタイミングからわざと音をズラすことによってリズムにノリ(グルーブ)をつけられる機能だ。
今回はサンプルとしてAメロ部分のリズムにグルーブクオンタイズをかける。まずは「Cherry」でAメロの部分以外の部分を削除したMIDIファイルを作っておいて、「Music Studio Standard」に読み込む。トラックウィンドウでドラムのトラック(012)を右クリック-[ピアノロール]でピアノロールを表示させよう。ピアノロールウィンドウで[編集]-[全て選択-イベント]したら、[実行]-[クオンタイズ-イベント]を選択、クオンタイズパネルを表示させる。「グルーブ」タブで、「小節」が「1」、「拍子」が「4/4」、音符が16分音符、[Pos]ボタンが押されていることを確認しよう。
「Music Studio Standard」の「グルーブクオンタイズ」でシャッフル風に
実際のグルーブは、パネルに16個並んだ赤い点を上下にドラッグすることで作る。赤い点を上に移動すると16分音符ジャストのタイミングから遅れ、下に移動すると早いタイミングになる。「ツクツク・タクツク」というリズムを「ツックツック・タックツック」にするためには、「ク」にあたる偶数番目の音を少し後ろにズラしてやればいい。ドラッグするときにはマウスをゆっくり動かしてやるとうまくいくぞ。
設定したグルーブは名前を付けて保存しておくことができるので、何度でも聴いて心地よい感じになるまでトライ&エラーを繰り返すことができる。
ドラムと同様にベースにもグルーブクオンタイズをかけた「olsdebut-07-g.mid」と、かけていない「olsdebut-07-ng.mid」という2種類のMIDIファイルを用意したので聴きくらべてほしい。グルーブクオンタイズによってちょっとシャッフルっぽくなるのがわかるはずだ。
さて、次回は歌詞作り。ケケ中の歌が上達するのを願いつつ、MIDIにもさらなる磨きをかけるぞ。こんな調子で果たしてケケ中はデビューできるのか!? 注目せよ!!
今回使用したオンラインソフト
(文:モッティ 監修:フランクン古田)
記事中の楽曲制作者は望月 貞敏氏です。著作権は同氏に帰属しますので、こちらのファイルの無断転用・転載は著作権法違反となります。