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~4小節(くらい)ずつ作るオリジナルソング~
【第5回】
曲の構成その2 Aメロ、Bメロを作ってサビにつなげ!
(01/10/19)
ケケ中
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オンラインソフトで作ったオリジナルソングを全世界に発信できるかな? できるといいな。できるかも……。できるハズ! いや、できる!! というちょっと大がかりなこの企画。ちょっとおマヌケな歌手志望の青年「ケケ中」の人生を狂わせまくりながら、徐々に曲の形らしきものが見え始めたかな? 4小節(くらい)ずつ、ゆっくりアバウトに作ってみよう!
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モッティ
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Aメロ、Bメロ、サビ……
Y氏: |
「お、モッティさん。いやー、異動になっちゃったんだけど、ちょっと気にかかることがあるんだよねぇ。ほら、トロピカルなやつ」 |
先週の編集担当I氏に続いて、今度はその親分というか上司というか、ついこないだまで編集チーフだったY氏に呼び止められてしまった。どうやらY氏の中で本連載は「トロピカルなやつ」ということになっているらしい。異動になった後も気にかかることって……?
Y氏: |
「イントロができたけど、まぁトロピカルな感じはするような気がしないでもないねぇ」 |
モッティ: |
「(するのかな? しないのかな?)あ、ありがとうございます」 |
Y氏: |
「でも、もうひとつの軸、フュージョンっぽさってのがあんまり出てないような気がするなぁ。やっぱりフュージョンっていえばギター、ドラム、ベース、キーボード、ホーンとそれぞれのパートが火花を散らしあうような、なんていうのかなぁ、アツいものなんだよ。でも、聴こえてくる音は極めてクール。そう、あれはまだクロスオーバーなんていう言葉で呼ばれていた頃……」 |
フュージョン談義が小一時間続く中、うなずくことしかできないモッティ……。
Y氏: |
「つーことで、もっとフュージョンっぽく。よろしくね。じゃ」 |
う、痛いところをつかれてしまった。フュージョンっぽさ。モッティの考えるフュージョンっぽさっていうのは印象的なギターのリフとソロにあるのだが、ギターはMIDIには含めず、ケケ中に弾かせるんだよねぇ……。え! ケケ中に弾かせる!? 大丈夫なのか? この連載の主人公はケケ中正義、この男だ。スモーク・オン・ザ・ウォーターのイントロしか弾けないこの男にフュージョン風ギターが弾けるのかどうかというのは大きな問題なのだ。
そんなモッティの不安を察知してか、ケケ中が「お手伝いすることありまっか?」とたずねてきた。正直、ケケ中には歌とギターを練習していてほしいのだが、曲ができていない以上、仕方がない。とりあえず好きなようにギターを弾いて、ギターに慣れておいてくれと伝えると、拍子抜けしたような顔をして戻っていった。
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いくら慣れろっつったって、そんな弾き方をしろとは言ってないぞ…… |
ケケ中の弾くスモーク・オン・ザ・ウォーターのイントロをBGMにして、とりあえず今回やらなければいけないことにとりかかる。それはイントロから始まってボーカルが入り、間奏のギターソロ、エンディングとつながる曲の構成だ。この連載で作ろうとしているボーカルの入る「歌モノ」の場合、「1番、2番」という言い方があるように、曲の構成上、はっきりと分けられる区切りがある。ここから攻略するぞ。
さて、歌の1番、2番といっても、その中にも流れがある。歌い出しの部分、ちょっと盛り上がる部分、前々回作った聴かせどころである「サビ」などだ。各まとまりは、「Aメロ」「Bメロ」などと呼ばれる。歌い出しの部分が「Aメロ」、そのあとサビへと展開する部分が「Bメロ」だ。Aメロを繰り返して「Aメロ-Aメロ-Bメロ-サビ」という展開をする曲が多い。また、Aメロ、Bメロなどの曲の単位は前回説明したように、ほとんどが4小節単位で作られている。
今回はこのAメロ、Bメロの伴奏部分を作ってみよう。メロディは次回っつーことで。
イントロのMIDIファイルからAメロ、Bメロを作ってみる!
今回はイントロのMIDIファイルにAメロ、Bメロ付け加える形で作っていこう。各トラックの楽器音はもちろんのこと、ドラムのパターンなど、コピー&ペーストで流用できるものが多いので、ここはラクをしてしまえ。
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小節ごとのコピー&ペーストは、トラックリストウィンドウで行なうと便利 |
MIDIの作成はおなじみの「Cherry」だ。前回作ったイントロのMIDIファイル「olsdebut-05-intro.mid」を読み込むところからスタート。真っ先にイントロ部分から流用できるものといえば、ドラムパターンだ。イントロのドラムパターンの中で、4小節目、5小節目はクラッシュシンバルのような装飾的なフレーズが入っていないから、これをコピーして9から13小節目までの4小節に2回ペーストし、Aメロ分の4小節をまず埋めておく。トラックリストウィンドウで範囲選択して、コピー&ペーストするのが簡単だ。
この状態でMIDIファイルを最初から再生させると、イントロが終わった後、ドラムパターンだけが演奏されているはずだ。イントロの伴奏が頭に残っているうちに、これに続きそうで、歌い出しに合った伴奏を考えていくのだ。
この曲はピアノの白鍵だけを使うハ長調、つまり「フツーのドレミ」の音階を使う。この場合、曲全体の雰囲気を表すコードは「ド・ミ・ソ」つまりCだ。歌い出しには、多くの場合曲全体の雰囲気を表すコードが用いられる。今回もCで問題ないだろう。
ハ長調の曲で、Cとともによく使われるコードには、「ソ・シ・レ」のG、「ファ・ラ・ド」のF、「ラ・ド・ミ」のAm、「レ・ファ・ラ」のDmなどがある。このうち、Gというのは重要なコードで、Gの次にCが来ると落ち着いた感じになるのだ。幼稚園などではオルガンの音を合図にして「起立、礼、着席」をすることがあるが、そのときのコードは「C-G-C」だ。4小節でAメロを作るときには、4小節目の最後のコードをGにしておくと、次へのつながりがよくなる。
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キーボードとベースのリズムはこんな感じで。上がキーボード、下がベース |
このことを念頭にして、Aメロの4小節分を作る。ここではエレクトリックピアノとオルガンのトラックに1小節ごと「C-Am-Dm-G」というコードを入れてみた。ベースはルート音をバスドラムと同期するように鳴らしている。非常にありがちなコード進行だが、変な感じはしないと思う。すぐに展開部に進むのはちょっと物足りない感じがするので、2回繰り返して8小節分追加したのが、「olsdebut-05-A.mid」だ。
続くBメロは「起承転結」でいうと「転」の部分になる。聴かせどころであるサビ、つまり「結」の部分に向けて、少し趣を変えて盛り上げていくという意味合いがある。マイナー(短調)の和音をもってくると、雰囲気が変わってくるぞ。
Bメロも4小節では短く感じるので「Am-Am-F-F-Dm-F-G-G」と8小節分入力する。ここまでの入力分を「olsdebut-05-AB-01.mid」というMIDIファイルにしておいた。ダウンロードして聴いてほしい。
明日できることを今やるべからず!?
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そんなところから現れなくても…… |
さて、イントロ、歌い出しからサビに至るまでのコード進行はできたものの、大雑把な印象は拭えない。モッティの考えるフュージョンっぽさには、ちょっと「複雑なコード進行」というのも含まれる。現段階ではC、G、F、Am、Dmしか使っていない。
「曲の展開を考えるときには、『明日できることを今日やるべからず』という格言があるぞ!」どこかからフランクン古田先輩の声がする。声の出所は……PCに接続されたスピーカーからだ!! 幻聴か!?
「モッティ! NetMeetingを見ろ!」
Cherryのウィンドウの裏に隠れていたNetMeetingの画面の中には、いつもの白衣を着た古田氏がいるではないか! 神出鬼没だから、どこから現れてももうびっくりしないぞ、と心に誓っていたのだが、ネット経由とは……。
古田: |
「明日できることを今やるべからず。昔の人はいい言葉を残したものだ」 |
モッティ: |
「NetMeetingでいきなり現れて、淡々と言わないでくださいよ! それよりも、明日できることを今日やらない、って、もう今日のところは仕事しないで飲みにでも行けってことですか?」 |
古田: |
「ぜんぜん違う! G、Cなどというコード進行でまとまった感じを出すことを『和声を解決する』というが、すぐに解決させてしまうのでなく、ほかのコードを間に挟むなどして、曲に深みを出すべし、という教えだ」 |
モッティ: |
「具体的にはどのあたりなんでしょう?」 |
古田: |
「Aメロで言うと、DmからGに行く前にFを挟んでみろ。DmとFは構成音が似ているからうまくいくだろう。また、Bメロの最後、Gが2小節続いているが、はじめのGをB♭にしてみろ。ハ長調のときにB♭-Gというコード進行をすると効…………」 |
あー、途中で切れちゃったよ! 大体わかったからいいけどさぁ。でも、どこからつないでいたんだろう? それに固定カメラかと思ったら手元のアップに切り替わったりして、誰がカメラをスイッチングしているんだ? と、不可解なことは多々あるが、ここはとりあえず助言に従ってMIDIファイルを修正していく。ここまでの完成ファイルは「olsdebut-05-AB-02.mid」だ。
さて、次回はこの伴奏にメロディをつけていくぞ。以前作ったサビも尻切れトンボみたいな感じになっているので、続きを作ってしまえば歌の部分が出来上がる。いよいよケケ中に歌の練習をさせられるようになるのだ。こんな調子で果たしてケケ中はデビューできるのか!? 注目せよ!!
今回使用したオンラインソフト
(文:モッティ 監修:フランクン古田)
記事中の楽曲制作者は望月 貞敏氏です。著作権は同氏に帰属しますので、こちらのファイルの無断転用・転載は著作権法違反となります。