.
~4小節(くらい)ずつ作るオリジナルソング~
【第9回】
ギタリスト促成栽培計画!
(01/11/30)
![](olsdebut9_1.jpg)
ケケ中
|
オンラインソフトでオリジナルソングを作曲、録音して、いっちょ全世界に発信してみようぜ! というこの企画。東大阪から単身上京してきたちょっとおマヌケな歌手志望の青年「ケケ中」は、果たして本当にデビューできるのか!?
今回は「ちょっとトロピカルなフュージョン風歌謡曲」に欠かせない(?)ギターの特訓だ。4小節(くらい)ずつ、ゆっくりアバウトに作ってみよう!
|
![](olsdebut9_2.jpg)
モッティ
|
トランスポーーーーズ!(必殺技風に)
3回連続で編集担当I氏に怒られてしまうモッティであった。I氏の指さす先には当然のごとく恍惚とした表情で大声を張り上げるケケ中。前回、歌詞が完成して無意味な「ラララ~」という声じゃなくなったから、いいんじゃないの?
担当I氏: |
「歌詞ができたのはいいんだけど、高い声が出ないからやっぱり歌になってないんですよ、キー! 音域にムリがあるから、さっさと曲を直しちゃってください! キ~~!」 |
モッティ: |
「……キーですね。な、直します」 |
確かに曲作りの過程で、ピアノの白鍵だけを使う「フツーのドレミ」つまりハ長調で作っていたから、ケケ中の声域のことはあんまり考慮に入れていなかった。歌い手の声域に合わせて曲全体のキーを合わせるという作業を行わなければ。
この曲でいちばん高い音は、Bメロの最後に伸ばす音だ。ハ長調のままでいくとDの音、つまりフツーのドレミでいう「レ」だ。サビへとつながるいちばんの盛り上げどころだから、この音をケケ中が無理なく歌える音にしなければ。
![「Music Studio Standard」でトラックを選択し、ノートNOを変更することによってトランスポーズする](olsdebut9_3s.gif) |
「Music Studio Standard」でトラックを選択し、ノートNOを変更することによってトランスポーズする |
キーを変えることを「トランスポーズ」という。ドラム以外の全トラックの音を上げたり下げたりすればOKだ。「Music Studio Standard」を使ってトランスポーズしてみよう。
MIDIファイルを読み込んだらトラックウィンドウで、エレクトリックピアノ、オルガン、ベース、ギター、ボーカルの計5トラックを選択し、[実行]-[イベントチェンジ-トラック]。ダイアログで[ノート]タブ-[ノートNO]の項が[加算]になっていることを確認して、右から2番目のボックスに半音きざみの数値を入れる。プラスの数値なら音を上げる、マイナスなら下げるという具合だ。
モッティ: |
「え~と、ケケ中君。ちょっと高いところ歌いづらくない? もしそうだったら、音をちょっと下げるけど」 |
ケケ中: |
「ワシ自身としてはどっちゃでもええんですが。気持ちよぉ歌えとるし」 |
……しばし絶句。まぁいい。とりあえず半音3つ分くらい下げるので、さっきのボックスに「-3」と入力して、イ長調(Aメジャー)くらいにしておく。ケケ中にプレッシャーをかけすぎないためにも、どうしても歌えないときには録音時に再度キーをトランスポーズするくらいの気持ちでいるとしよう。キーを下げるときにはベース音が下がりすぎて聴こえづらくなることもあるので、ベーストラックの調整も同時に行うことを忘れずに。
ケケ中がケケ中たるゆえん……それはギターだ!
さて、本企画の最大の難関に取り組むときがきた。それはギターだ。そもそも東大阪から単身上京してきた青年が「ケケ中正義」として「ちょっとトロピカルなフュージョン風歌謡曲」に取り組むことになった理由は、その風貌がかの著名なギタリストに似ているからという一点しかないのだ。しかし当のケケ中はギターがほとんど弾けない。何とかカタチだけでもギタリストっぽくしておかないと。
モッティ: |
「つーことでケケ中君。そろそろギターの練習だけど、やっぱりカタチだけでもギタリストっぽくなってもらわないと……」 |
ケケ中: |
「カタチだけっちゅうと、こんな感じでっか?」 |
![燃やすな!](olsdebut9_4.jpg) |
燃やすな! |
モッティ: |
「誰がジミヘンの真似してギター燃やせって言った!? まぁカタチといえばカタチだけど……。そういうカタチじゃなくて、最低限ギタリストっぽくなってもらうにはコードくらい弾いてくれないと困るのだよ。コード」 |
ケケ中: |
「はぁ、で、コードって?」 |
モッティ: |
「和音だよ、わ・お・ん。チャカチャカとギターでコードを弾きながら歌うって風になってほしいんだけど」 |
ケケ中: |
「弾きながらって、ワシのオツムは16ビットコードで書かれとる部分がかなり残っとるさかい、プリエンプティブなマルチタスクには弱いんですわ」 |
わけのわからない言い訳は放置して、とりあえずギターの練習をさせる。ちょっとトロピカルな曲調にするためには、AやEといった「ド・ミ・ソ」でできているような単純なコードだけじゃなくて、その上にコードの基音から数えて4番目や7番目や9番目の音を乗せたコードを使うと音に広がりができる。こういったコードのことを「テンションコード」という。
![コードのポジションが一目でわかる「バーチャルギター」](olsdebut9_5s.gif) |
コードのポジションが一目でわかる「バーチャルギター」 |
ところが、このテンションコードをギターで弾くときには、左手で弦を押さえるポジションが概して覚えにくい。そこでフリーソフトの「バーチャルギター」を使う。これはコードを押さえるポジションをギターのネックを模した画面で表示してくれるソフト。ギターは同じコードを鳴らすのにいくつもの押さえ方がある楽器だが、「バーチャルギター」は1つのコードに対して3つのポジションを表示してくれる。よく使うコードを32個まで登録してワンタッチで表示できるので、曲で使われているコードを登録しておくと便利だ。現在配布されているのはv1.3とほぼ同様の機能をもったv2.0のalpha(シーケンス機能無しバージョン)だが、v2.0正式版では表示させたコードをそのままMIDIファイルに書き出す機能も加わるという。
早速この曲で使われているコードを登録して、ケケ中に渡す。ケケ中もちょっと難しいのを悟ったのか、神妙な面持ちでギターに取り掛かっている。録音まで時間はあまりない。弾けるようになってくれるといいなぁ……。
「4小節ずつ」の原則から外れるパターンもある
かなーり不安たっぷりのケケ中ギターだが、とりあえず楽曲のブラッシュアップも並行して行わなければ。今回はボーカルが入る最後の部分から後奏に移る部分を調整してみよう。
前回公開したMP3ファイルの該当部分を切り出してみたのが「olsdebut09-before.mp3」だ。だが、これだとまだまだ曲に続きがあるような感じがしてしまう。これは「曲の各部分を構成する“パーツ”は4小節ずつ作る」という原則を律儀に守っているからだ。この場合、サビの最後の小節にはボーカルがほとんど入っていないから、後奏の最初の小節とまとめてしまえば都合がいい。場合によっては4小節ずつという原則から外れた方がいいこともあるのだ。
この部分を修正してMP3ファイルにしたもの「olsdebut09-after.mp3」を用意したので、先ほどのMP3ファイルと聴き比べてほしい。後者の方は曲が終りに近づいているんだなぁという感じがするはずだ。
さて、次回はいよいよ歌とギターのレコーディング。もう出たとこ勝負としかいいようがない(涙)。こんな調子で果たしてケケ中はデビューできるのか!? 注目せよ!!
今回使用したオンラインソフト
(文:モッティ 監修:フランクン古田)
記事中の楽曲制作者は望月 貞敏氏です。著作権は同氏に帰属しますので、こちらのファイルの無断転用・転載は著作権法違反となります。