.
~4小節(くらい)ずつ作るオリジナルソング~
【第4回】
曲全体の構成開始! イントロからいってみよう!
(01/10/12)
モッティ
|
オンラインソフトで作ったオリジナルソングを全世界に発信するぜ! というちょっと大それたこの企画。おマヌケな歌手志望の青年「ケケ中」の人生を狂わせまくりながら、果たしてデビューまでたどりつけるのか? それは神のみぞ知るっつーか行き当たりばったり、つーか出たとこ勝負の世界。
プロデューサーにして作曲、編曲、エンジニアまでやることになってしまったモッティは、今回から3回にわたって、オリジナルソングの構成をしてみようなどと思っている。4小節(くらい)ずつ、ゆっくりアバウトに作ってみよう!
|
ケケ中
|
「4小節(くらい)ずつ」の意味
担当I氏: |
「ちょっとちょっとモッティさん! どーいうことですか? キー!」 |
編集部に顔を出すや否や、モッティは編集担当I氏に詰め寄られた。
担当I氏: |
「この連載も3回終わったんですよ。でも、まだサビの4小節しかできてないじゃないですか! キー! 4小節くらいずつっていうことは、もう12小節はできてないといけないんですよ! キー!」 |
ものすごい勢いでまくしたてられるモッティ。その傍らで、当のケケ中はボケっと
しながらヘッドフォンで前回作ったサビの部分をくりかえし聴いている。
モッティ: |
「いや、4小節(くらい)ずつですから、こんなもんでしょう。4小節よりもたくさん作ることもありますから。やるときはやりますよ」 |
担当I氏: |
「ならいいんですけどね、キー! この連載は年末までですから、それまでにこのケケ中クンをしっかりデビューさせてあげてくださいねっ!
キー!」 |
モッティ: |
「あぁそれはもちろんですよ。それにしてもIさん、さっきからキーキーどうしちゃったんですか?」 |
担当I氏: |
「キーキーなんか言ってませんよ! 失礼ね! キー! じゃぁ、3回くらいで曲の全体像が見えるようにしてくださいね! キー!」 |
|
Iさん、いくらなんでもそこまで言わなくても…… |
あぁ、どうかしちゃったわけじゃなくて、単に虫の居所が悪かったらしい。でも、これは気合を入れて作らないといけないなぁ。
ちょうどI氏にツッコまれたので、曲の構成に入る前にタイトルにある「4小節(くらい)ずつ」という意味をちょいと説明しておこう。我々が耳にしているポピュラー音楽は、曲の構成上、ほとんどが4小節でひとかたまりになっている。4小節でまとまりがつかないときには8小節、12小節、16小節というように4の倍数ごとのまとまりになっているのだ。何か音楽を耳にしたらかたっぱしから「1・2・3・4」と拍をとってみよう。歌の1フレーズが4の倍数の小節になっているはずだ。今後、MIDIソフトを使って曲の構成をするときに、曲のまとまりをコピー&ペーストする作業がたくさんでてくるが、ほとんどの場合4小節ごとでかたまりになっているだろう。
では、4の倍数じゃない小節は使わないのかというとそうでもない。曲の雰囲気を転換したい「ブレイク」とか「ブリッジ」とか言われる部分には、1小節や2小節のまとまりがよく使われるし、4小節まで引っ張らないでわざと3小節で終わって余韻を残すという手法も使われる。だから、「4小節(くらい)ずつ」なのだ。
モッティ: |
「とまぁこんな感じなんだよケケ中クン」 |
|
ケケ中、ちょっとリラックスしすぎ…… |
一応ケケ中にも説明をしたが、あいかわらずあまり興味のない様子。おいお前、単身東大阪から歌手を目指して上京してきたんだろ! とツッコミたい衝動を抑えつつ、曲の構成を始めることにしよう。まずは曲の第一印象を決める「イントロ」からだ。
イントロにはパターンがある!
曲の頭の部分、イントロ。イントロダクションという言葉のとおり、曲の導入部だ。ボーカルが入る「歌モノ」の場合は、曲の最初から歌が始まるまでの部分を指すことが多いが、いきなり歌から始まってしまう場合もありうる。ここでは、曲の冒頭部ということで考えていくことにしよう。
イントロにはいくつかのパターンが考えられる。ここでちょっと挙げてみよう。
・ |
サビのコード進行や伴奏を、そのままもしくはアレンジして使用 |
・ |
イントロ用にギターやキーボードなどのリフ(フレーズ)を作る |
・ |
歌入りでサビをイントロに使用 |
・ |
ボーカルのみ(アカペラ)でサビを歌い、その後ほかの楽器が演奏を開始 |
・ |
いずれかの楽器が先行して演奏し、順次ほかの楽器が演奏を開始 |
まだまだいろんなパターンが考えられるし、上記のパターンを組み合わせるというのもアリだ。今回は、前回使ったサビのコード進行を使い、キーボードだけ少し先行させてから、ドラム、ベース、ギターが演奏を始める、という併せワザを使うことにしよう。サビのコード進行をイントロに使うと、聴いている人に「あぁ、イントロの伴奏は、サビと同じだったんだ」と気付かせることができるという効果もある。
MIDIの作成には前回と同じく「Cherry」を使う。前回作ったサビのMIDIファイル「olsdebut-03-02.mid」を読み込んで、そこに変更を加えていく。まず、[表示]-[演奏モニタ]で演奏モニタを表示させ、メロディが入っているトラック03をミュート(消音)させておこう。「#03」と書かれている部分の右下にある「Play」という文字は、クリックすると「Mute」に変わりトラック3は演奏されなくなる。続いて、トラックウィンドウに移り、チャンネル10(トラック11)のドラムとチャンネル3(トラック5)の1小節目と2小節目を消しゴムツールを使って削除しておこう。
|
トラックウィンドウで編集するときには、スナップ機能を活用しよう |
この時点で聴いてみると、3小節目でドラムとベースが入ってくる部分が唐突すぎるような感じがする。そこで、2小節目の途中にドラムのフレーズをちょっと入れてみよう。ここでは普通のドラムパターンではなく、ちょっと変わったフレーズにしてみると雰囲気が出るだけでなく、ドラムとベースの始まりスムーズになるぞ。「フィル・イン」とか「オカズ」と呼ばれるもので、イントロやフレーズとフレーズの間を埋めるために使われるものだ。
ベースパターンも前回のサビからちょっと手を加える。イントロには歌のメロディが入っていないので、ベースにその一部をなぞらせてみよう。ここでの注意点は、あくまでも一部だけを利用して、サビのメロディの「予告編」的な役割に徹することだ。ベースはリズムをつかさどる重要なパート。基本はバスドラムとほぼ同じリズムを刻むようにする。
柔道着でイチロー!?
ここまでの部分をMIDIファイルにしてみた。「olsdebut-04-01.mid」がそれだ。しかし、リズム以外はキーボード(ここではエレクトリックピアノ)の音が鳴っているだけで、いかんせん寂しすぎる。ここはほかの楽器にバッキング(伴奏)をさせてみよう。
バッキングはトラック6にチャンネル4を割り当てて入力していこう。前回と同じように、トラックリストウィンドウでトラック6のプロパティを表示させ、「Port」に「A」を、「CH#」に「04」を入れる。トラックウィンドウに移ってトラック6を表示させ、[挿入]-[プログラムチェンジ]。楽器音は「029 Muted Guitar」がいいだろう。これは、ギターを右手で弦に少し触れて消音(ミュート)しながら弾くときの楽器音だ。鉛筆ツールで短めの単音フレーズを入れていく。
|
どこ見て弾いてるんですかっ!! |
「うむ、楽器音の選定はだいたいいいぞ。『柔道着でイチローの真似は難しい』というからな」
う、またもや先回りされてるよ。フランクン古田先輩だ。いつからいるの? とか、どっから入ったんですか? とかいうツッコミは控えよう。
モッティ: |
「柔道着でイチローですか? レオタードで中田じゃダメなんですか?」 |
古田: |
「ま、似たようなものだ。曲のイメージに合った楽器音を使えという古くからの格言だ」 |
モッティ: |
「古くからって……。」 |
古田: |
「この曲のコンセプトは何だった? モッティ?」 |
モッティ: |
「ちょっとトロピカルなフュージョン風歌謡曲、ですが」 |
古田: |
「そうだろう。フュージョンといったらエレクトリックピアノ、ミュートギターは定番だな。オルガン系の音を使ったりしてもトロピカルな感じになるぞ。ギターも歪んでいないクリーンな音を使うと清々しさが出る。まぁ、ギターソロはカッコよく歪んだ音もいいがな。また、ベースにチョッパーベースやシンセベースを使うというのも手だぞ」 |
モッティ: |
「ギターソロはケケ中に弾かせようと思っていますので、考えておきます。ほかの楽器音もあとからエフェクトをかけますから」 |
古田: |
「それでもいいだろう。しかし、曲を作るときからそのあたりを頭に入れておくといい。おっと、もう行かなければ……」 |
モッティ: |
「ありがとうございます! でも、そっちはトイレですよ!」 |
古田さんはなぜかトイレに消えていった。そのあとトイレから出てきた形跡もないが、まぁよしとしよう。
ということで、ミュートギターのバッキングを入れて、さらに、オルガン(楽器音は19番の「Rock Organ」)を入れてみた。また、ベースも38番の「SlapBass 2」に変更してベキベキした音にしてみた。5小節目から8小節目までは、新たに作曲した部分だ。7小節目はリズムをちょっと変則的にしてあるぞ。ここまでのMIDIファイルは「olsdebut-04-02.mid」だ。例によってケケ中のMP3プレイヤーにこのイントロの部分もこっそり入れておいた。さて、次回はイントロの伴奏パターンを利用して曲の構成を考えてみよう。こんな調子で果たしてケケ中はデビューできるのか!? 注目せよ!!
今回使用したオンラインソフト
(文:モッティ 監修:フランクン古田)
記事中の楽曲制作者は望月 貞敏氏です。著作権は同氏に帰属しますので、こちらのファイルの無断転用・転載は著作権法違反となります。