.
~4小節(くらい)ずつ作るオリジナルソング~
【第6回】
曲の構成その3 そしてボーカルのメロディ完成へ!!
(01/10/26)
ケケ中
|
オンラインソフトで作ったオリジナルソングをちょっくら全世界に発信でもしてみるか! というこの企画。東大阪から単身上京してきたちょっとおマヌケな歌手志望の青年「ケケ中」の人生をじっくりと狂わせながら、徐々に曲の形らしきものが見え始めたかな? 4小節(くらい)ずつ、ゆっくりアバウトに作ってみよう!
|
モッティ
|
メロディは忘れた頃にやってくる
|
断じて泳いでいるわけではない |
ケケ中: |
「あ、モッティさん! 何こんなところで泳いでるんですか! 邪魔やからあっち行ってやってくださいよ」
|
この声で目が覚めた。泳いでる? 自分がどんな体勢をとっているのかもわからなかったが、徐々にここが床の上だということがわかってきた。
モッティ: |
「あ、あぁ、おはよう」 |
ケケ中: |
「なんや、寝てはったんですか。あ、今日から歌の練習って言うとりましたな? 張り切って歌いまっせ~」 |
モッティ: |
その歌なんだけど、すまん、もうちょい待ち。いいメロディが浮かんでこないんだ。今日中にはなんとかするからさぁ」 |
ケケ中: |
「ホンマ、頼んまっせ。ワシがデビューできるかどうかはモッティさんにかかっとるんやから」 |
う、ケケ中にまでプレッシャーをかけられている。音楽をきっかりと学んだ人ならば、作曲法などのちゃんとしたセオリーが身についているだろうが、残念ながらモッティにはそういった知識がない。そういう人にとってメロディを作るということは、ある種の偶然のようなもの。今まで聴いてきた音楽の断片から「こんな感じ」という記憶をたどりながら音を紡いでいくしかない。
と、言葉で説明できないようなことばっかり言っても仕方がないので(苦笑)モッティ的メロディ作りで気をつける点をいくつか挙げてみる。
1. |
Aメロ、Bメロでリズムを変え、単調にしない |
2. |
歌詞が決まっている場合は、その語感にあわせる |
3. |
盗作はしない |
1.に関しては、前回のAメロ、Bメロの伴奏作りでも述べたように、起承転結の「転」にあたる部分で、ちょっと変化をつける。2.に関しては、今回は残念ながら歌詞が決まっていないのでパス。そして3.だが、人ならば好きな歌のひとつやふたつは必ずある。パッと思い浮かぶメロディがどこかで聴いたことのあるようなものになるのは仕方がないことだ。だけど、意図的な盗作はマズいという意味だ。また、盗作や似ている曲調を指摘されたら、素直に謝って変更する、というのもアマチュアレベルでは重要だろう。
それ以前の大前提として、キーに合わせてメロディを作るということがある。今回作っている曲のキーはハ長調(Cメジャー)。つまりピアノの白鍵部分だけを使う音階(この連載では「フツーのドレミ」と称している)だ。これを別の音階、たとえば、「フツーのドレミ」のミから始まる長調の音階(ホ長調、Eメジャー)「ミ・ファ#・ソ#・ラ・シ・ド#・レ#・ミ」で歌ったら、伴奏とメロディがぜんぜん合わない、ということが起きる。今回は、白鍵部分だけの音を使うということだけ頭に入れて作ってみる。
と、わかってはいるのだが、なかなかいいメロディが浮かばない。伴奏を繰り返し聴いてしまうと、ベース音やオルガン音に気を取られてしまうのかもしれない。うー、困ったぞ、これは。
そこに、メールが着信した。送信元は……フランクン古田先輩だ。
> 昨日の深夜ちょっと心配になって電話したんだが、何か寝ぼけていたぞ。うわ
> 言のように「メロディ、メロディ」なんて言って。そのうち鼻歌を歌いだした
> から、それを録音しておいた。どうせ夢の中で歌っていたんだろうから覚えて
> はいるまい。根を詰めすぎてもダメだからな。添付ファイルはその歌だ。では。
つーか、なんでとっさに録音できるんだよ! というツッコミは控えつつ、添付ファイルを開く。確かにワタクシの鼻歌だ。曲の伴奏とあわせても大丈夫。ありがとう古田さん。これをメロディとして採用してみます……。メロディは忘れた頃やってくる、と。
ソング頼太で鼻歌→MIDI化、Cherryファイルに統合!
|
|
ソング頼太では[プロジェクト]-[MIDIファイル作成]、Cherryでは[編集]-[ファ
イル情報設定]で分解能が設定可能 |
鼻歌からMIDIファイルへの変換は、第3回のサビ作りに続いて「ソング頼太」の「鼻歌の達人」機能を使う。WAVEファイルから「鼻歌の達人」へと入力することも可能だが、WAVEファイルに入っているノイズを拾ってしまうという問題もあるので、ここでは再度マイクから入力する。あまり長く入力すると、MIDIデータの修正をするときに手間取るので、Aメロ、Bメロという単位で入力する。第3回に作ったサビは尻切れトンボだったから、ここでサビも改めて入力する。
「ソング頼太」から出力したMIDIファイルは、伴奏を作った「Cherry」上にインポートすることになるのだが、今回は「Cherry」上でのデータをもう一度作り直してみる。というのも、「Cherry」は独自のファイル形式であるCHYファイルと、拡張子がMIDの標準MIDIファイルの読み書きができるのだが、標準MIDIファイルに書き出す場合には、トラックがひとつ増える仕様になっている。「Cherry」で変更を加えるたびにトラックが増えるのはデータの管理上好ましくない。また、MIDI音源を使うときにはMIDIデータの中に初期化の信号を含ませておく必要がある。複数のツールを使ってMIDIデータを作ると、どこに初期化の信号が入っているかがわかりづらくなる。だから、前回までのデータを整理する意味も含めてここで一旦リセットしてしまおうという魂胆だ。
下準備として、前回作った伴奏のMIDIファイル「olsdebut-05-AB-02.mid」、今回作ったAメロ、Bメロ、サビの各MIDIファイルを、一度「Cherry」上に読み込み、[編集]-[ファイル情報設定]を開く。ここで注目するのが「分解能」の項目だ。分解能とは、MIDIデータの時間的な細かさを示す値で、4分音符をどれだけ細かく分けられるかという数で表す。分解能はMIDIファイルごとに記録されていて、MIDIシーケンサー上で分解能の違うMIDIデータをコピー&ペーストすると、演奏がおかしくなってしまう。「Cherry」では分解能480まで対応しているから、ここではすべてのMIDIファイルの分解能を480に統一しておこう。
|
Cherryにインポートされたトラックを、上の方にあるトラックに移し換える |
各MIDIファイルを上書き保存したら、[ファイル]-[新規作成]で新しいファイルを作る。そして、[ファイル]-[トラック追加読み込み]で、各MIDIファイルからトラックをインポートする。「CH#16」以下にトラックがインポートされるはずだ。これをトラックリストウィンドウで、「CH#1」など、上の方にある適当なトラックにカット&ペーストしていく。ドラムパートだけは[CH#10]にペーストする必要があるので注意。ボーカルパートは、Aメロ、Bメロ、サビを同じトラックの所定の場所に移動させよう。
データをカットして各トラック内にペーストするときは、0小節目だけは除外する必要がある。なぜなら「CH#1」~「CH#16」の各トラックの0小節目には初期化の情報が含まれている。これを上書きしてしまわないことが重要なのだ。カット&ペーストが終わったら、トラックリストウィンドウの表でインポートされたトラック名を右クリック-[削除]で削除しておこう。
トラックの移行が済んだ時点で再生させると、何か変な感じがする。そう、ドラムパートを除くすべてのトラックがピアノの音で再生されるのだ。これは0小節目に入っている楽器音情報ををカット&ペーストしなかったために起きる現象で、もう一度設定しなおす必要がある。トラックウィンドウ左側のイベントリストに、紫色で表示されている「Program」という文字をダブルクリック。各トラックで楽器音を再度設定していこう。また、テンポもかなり速い。これは「Conductor Track」に適切な情報が入っていないからだ。トラックビューで、1トラックより上にあるConductor Trackを表示させ、イベントリストの「Tempo」をダブルクリックしてテンポを設定する。100前後の数値がいいだろう。
再度設定しなければいけないことが多かったが、余分なデータが残っている状態で作業を行なうと、後々の作業が増えることになるのでここで設定しておいた。ここまでの状態のCherry形式ファイル「olsdebut-06-melody.chy」と標準MIDIファイル「olsdebut-06-melody.mid」を用意しておいた。
ケケ中の歌&ギターと同時進行で、伴奏もブラッシュアップせよ!
これでボーカルのメロディがひとまず完成。ケケ中に「メロディまだ?」とたずねられることもなくなるぞ。ここからの予定をちょっと考えてみると……。
・ |
ケケ中のボイストレーニング |
・ |
歌詞を作る |
・ |
歌唱指導 |
・ |
ギターの特訓 |
・ |
録音 |
・ |
ミキシング |
・ |
エンコード |
|
ものすごい勢いで調卓に向かう古田氏 |
こんな感じになる。曲の間奏やエンディングここまでできてしまえば、あとは勢いで何とか作れるだろう。じゃぁ、あとはケケ中にがんばってもらうぞ。
というわけで、次回はボイストレーニングに移る。こんな調子で果たしてケケ中はデビューできるのか!? 注目せよ!!
とまとめたつもりになっていたところにメール着信。また古田さんからだ。
> メロディはできたか? でもこれからもやること満載だぞ。伴奏MIDIはまだま
> だ完成度が低い。低すぎる! これからビシビシと指摘していくから、そのつ
> どブラッシュアップをかけていくんだ。心しておくよーに。
は、はい……。やっぱりねぇ。がんばりまっす……。
今回使用したオンラインソフト
(文:モッティ 監修:フランクン古田)
記事中の楽曲制作者は望月 貞敏氏です。著作権は同氏に帰属しますので、こちらのファイルの無断転用・転載は著作権法違反となります。