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~4小節(くらい)ずつ作るオリジナルソング~
【第10回】
運命の歌&ギター録音当日……
(01/12/14)
ケケ中
オンラインソフトでオリジナルソングを作曲、録音して、全世界に発信しちゃってもいいんですか? いいんです!((C)川平弟1997くらい)というこの企画。東大阪から単身上京してきたちょっとおマヌケな歌手志望の青年「ケケ中」は、果たして本当にデビューできるのか!?
あぁ、この日がやってきた。歌とギターの録音だ。4小節(くらい)ずつ、ゆっくりアバウトに作ってみようとか謳ってきたが、いよいよ佳境なのだ!
モッティ
Where is Keke-naka???
ここ何回か、ボイストレーニングやギタリスト促成栽培計画を敢行し、どうにかしてケケ中の音楽能力をアップするかに腐心してきたプロデューサーこと私モッティだが、その真価が問われるときがおとずれた。ボーカル&ギターの録音をしなければいけないのだ。正直、某有名プロレスラーが大一番の前に口にした「時は来た」などというカッコイイ言葉はとてもじゃないが吐けるはずもなく、モッティの心境的には「やっべー、とうとう来ちまったよ」てな感じだ。
そんな不安でいっぱいのプロデューサーを尻目に当のケケ中はいつものように……あれ、歌(らしき声)が聞こえないぞ。ギターの練習でもやってるのかな?
恐る恐るケケ中の練習場に足を踏み入れるモッティ。だがそこには散らかった歌詞カードと投げ捨てられたように放置されたギターがあるのみ。そこにいるべきケケ中は見えない。おいおい、今からフランクン古田氏のスタジオで録音だっていうのに主役がいないんじゃお話しにならないよ。
あぁ、本連載の主役はどこへ……
まぁなんとなくこんなことになるような気がしてはいたんだ。単身、東大阪から歌手を目指して(間違ってインプレスに着いてしまったのだが)上京するような剛毛がもしゃもしゃと生えていそうな強心臓をもちながら、大事な歌詞作成のときにはお腹が痛くなってしまう……。だが、今そんなことを悔いてもしかたがない。そんなことをしている間に編集担当I氏の……
「キー! 何やってんですか? 早く出発しなきゃ、古田さん待ってますよ。キー!」
あぁ、幻聴ではない。やはり聞こえてきた。
3回連続で編集担当I氏に怒られてしまうモッティであった。I氏の指さす先には当然のごとく恍惚とした表情で大声を張り上げるケケ中。前回、歌詞が完成して無意味な「ラララ~」という声じゃなくなったから、いいんじゃないの?
公開(!?)ゴーストボーカリスト&ギタリスト
ケケ中がいないことを説明し録音の延期を提案するが、I氏は首を縦に振らない。どうしても今日録音しなければいろんなスケジュールが立たないとのことなのだ。世の中はこの企画を中心に回っているわけではない。
と、そこについこないだまで編集部員だったE君が通りかかった。会社に置きっぱなしになっていた荷物を整理しにきたのだ。手にはギターを持っているではないか? E君が空手家だということは知っていたが、ギタリストでもあったのか?
モッティ:
「あ、E君だ。それ、E君のギター? 」
E君:
「そうですよ。押忍」
もう、モッティの頭の中では「ゴーストギタリスト」の起用という方針でいっぱい。そのときにはゴーストっていうのは表向きわからないようにコッソリとやるもんだけど、連載の中で公開しちゃうんだよなぁ、なんて考えは微塵も浮かばなかった。
「いや、帰って引越しのしたくとかしなくちゃいけないんですよ。押忍……」といやがるE君を拉致し古田氏のスタジオへと連行。これでギターの弾き手は見つかった。めでたしめでたし。
古田氏のスタジオに到着したところでI氏から「ところで歌はどーするんですか? キー!」というツッコミが入った。……もうちょっと早くツッコんでほしかったっすというモッティの泣き言もむなしく響く。今、スタジオの中にいる人間の中で、この楽曲をよく知っているのはひとりしかいない。そう、プロデューサーにして作詞作曲者のモッティだけだ。メロディも歌詞も基本的にモッティの好みで作ってある。当然歌える……。
かくいうわけでボーカリストまでもゴーストの起用となった。はぁ。古田氏もいささか呆れ気味だ。前回の最後に「出たとこ勝負」と書いたが、まさかこんなカタチになるとは……。
ぬかるみの上に家は建たない
たとえばYAMAHAのDS-XGならば録音のソースを「Stereo Out」にすることで内蔵MIDI音源が録音できる
スタジオでは、モッティが用意しておいた伴奏のWAVEファイルを流しながら、ギター、ボーカルの順番で行われた。この伴奏のWAVEは、PCのサウンドカードのLINE-INに接続したMIDI音源(YAMAHA MU100B)の音を「Music Studio Standard」のオーディオレコーディング機能で録音したものだ。外付のMIDI音源でなくサウンドカード内蔵型のMIDI音源やソフトウェアMIDI音源を使っている場合でも、Windows標準のオーディオミキサーの[オプション]-[プロパティ]-[録音]で適切なソース選べば、MIDIの演奏をWAVEファイルに録音できる。
空手家にしてギタリスト。拉致連行されて……
E君のギターだが、いきなり連行されてこの曲のギターを弾け! と言われたわけだから、どんなギタリストでもとまどってしまうのはあたりまえ。だから、とりあえずギターソロの一部をお願いすることにした。このギターソロに補足してモッティがアコースティック風のギターソロをMIDIで付け加えた。
モッティのボーカルは……、あえて何も言うまい。曲の一部をかいつまんでMP3ファイルにしておいた(「olsdebut10.mp3」)。
録音したギターとボーカルのWAVEファイルが入ったCD-ROMを古田氏に作ってもらい、作業は終了。古田氏のスタジオはMacintoshでシステムが組まれているが、録音されたギターやボーカルは「Music Studio Standard」でミキシングをするので、最終的にはWAVEファイルとしてモッティの手元に入ればいい。読者の方で、レコーディングしたいけどスタジオがない! というような場合なら、ラジカセやDATやMDにギターとボーカルを録音しておいて、PCのLINE-INからWAVEとして録音するという手もあるぞ。
編集部に戻り、もらったCD-ROMを開くと、そこにはWAVEファイルにまぎれて「readme.mov」というQuickTimeの動画ファイルが含まれていた。なんだ? と思って再生すると、白衣姿の古田氏の姿。
ぬかるみの上に家は建たない……深いお言葉っす
「モッティ。録音おつかれさま。ミキシングで各楽器やボーカルにリバーブなどのエフェクトを使うだろうが、そのときに注意することがある。リズムパート、特にベースにはリバーブをかけすぎないようにするべし。リズムはタイトにまとめることが大切だ。ぬかるみの上に家は建たないぞ」
古田さん、今回はツッコミどころがないです……。
さて、次回はとうとう最終回。ミキシングと最終出力だ。それとこの曲のタイトルが決まっていなかったことにも今気付いたぜ! 果たしてケケ中はデビューできるのか……じゃなくて、果たしてケケ中はどこに行ってしまったのか? 注目せよ!!
今回使用したオンラインソフト
(文:モッティ 監修:フランクン古田)
記事中の楽曲制作者は望月 貞敏氏です。著作権は同氏に帰属しますので、こちらのファイルの無断転用・転載は著作権法違反となります。