週末ゲーム

第549回

シミュレーションRPG「魔法少女」

戦いと青春の狭間で揺れ動く少女たちの物語

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、町を守るため魔法少女となった中学生たちの戦いを描くシミュレーションRPG「魔法少女」を紹介しよう。

突然やってきた宇宙人と戦うことになった少女たち

魔法少女となり町を襲う宇宙人と戦うシミュレーションRPG

 「魔法少女」は、突如として現れた宇宙人から町を守るため戦う少女たちを描いたターン制のシミュレーションRPG。主人公で周りとのコミュニケーションが苦手な中学生2年生の女の子“霧島千代子”と幼なじみの同級生“日向遥”は、ある日しゃべる猫“フィー”に戦士としての適正を見出され、魔法少女となって戦うことになる。戦士として適正のある仲間を増やしつつ宇宙人と戦っていく中で、多感な中学生ならではの葛藤や迷いが垣間見られるのが大きな魅力だ。

 クリアまで30時間以上という圧倒的なボリュームも特徴。20人以上の魔法少女が登場するが、それぞれの少女たちが悩みを抱え、死と隣り合わせの戦いを乗り越え、仲間とのふれあいの中で少しずつ成長していくストーリーがプレイヤーをグッと引きつける。1ステージを“1話”と表現し、それぞれの少女にスポットを当てていく手法を採用しているのもわかりやすい。1話は30分程度でプレイできるので、大ボリュームのゲームだが少しずつ進めていく楽しみもある。

 ゲームの進行は、アドベンチャー形式となる日常パートとシミュレーションとなる戦闘パートに分かれている。戦闘パートは2Dトップビューで、格子状に区切られた戦闘マップで魔法少女たちを操作して戦う。プレイヤーが魔法少女たちの移動や攻撃を行いターンを終了させると今度は敵の行動ターンと、システムはオーソドックスなターン制だ。勝利条件は多くの場合は敵の全滅だが、数ターン耐えるといった場合もある。

HPは少なく、戦闘はシビア。敵との駆け引きが重要だ

戦闘は基本1対1で行われるが、複数の敵を一度に攻撃する能力も存在する
敵の行動範囲を把握して、先制攻撃されないようにキャラを移動させよう

 中学生の魔法少女たちが活躍という可愛らしい雰囲気とは裏腹に、戦闘はシビアだ。魔法少女たちのHPは少なく、敵の攻撃を3回も受けるとやられてしまい戦闘から離脱してしまうケースが多い。それだけに戦いでは常に先手を取ることが重要だ。敵を選択するとその移動範囲を確認できるので、敵から攻撃されないギリギリの位置にキャラクターを移動させ、こちらから先制攻撃できる状況をなるべく作るようにしたい。このほか、受けるダメージが減少する地形効果がある森や町にキャラクターを配置するのも手だ。

 また、各キャラクターのステータスと能力についても把握しておきたい。例えば、主人公の霧島千代子はHPこそ高めだが防御力が低く、敵に囲まれるとやられやすい。その一方で、敵は防御力の低いキャラクターを狙う傾向にあるため、敵を一箇所に集める囮として活躍が可能だ。攻撃力の高いキャラクターで力押ししても勝てないゲームだけに、回復が得意な空手少女の“金剛リリー”、防御力をアップさせる能力をもつクールなようでヒーロー大好きな“榛名七海”など、サポート系の能力をもつキャラクターの活用がポイントになる。

 キャラクターのプロフィール画面の上部にある弱点属性をチェックしておくことも重要。霧島千代子は“冷気”が弱点、ボケとツッコミの応酬が楽しい双子の一人“山城香”は“火炎”が弱点といった具合で、その属性をもつ敵に攻撃されると大ダメージを受けてしまう。敵がもっている属性は、敵を右クリックしてプロフィール画面を呼び出し、武装の欄をチェックすれば確認可能。なお、プロフィール画面では敵の弱点属性も確認できるので戦闘の参考にするとよい。

 このほか、多くのキャラクターは通常攻撃を行うために敵へ隣接するまで近付く必要がある。攻撃力の高いキャラクターなら大きなダメージを与えられるが、敵を倒せなかった場合、反撃を受けてしまう。そのため、離れた場所から攻撃できる能力をもっているキャラクターを利用するのも大切。攻撃されないギリギリの位置まで敵を引きつけ、遠距離攻撃で敵のHPを削り、最後に通常攻撃でトドメを刺す、という状況を作るのが理想的だ。

敵のプロフィールを表示して攻撃属性や弱点属性を知ることも重要
ステージクリアごとに増えていくお金で、ステータス強化などのアイテムの購入も可能
多感な中学生たちの悩みや葛藤を描くストーリーが大きな魅力

 プレイ時間の長い作品だが、20人を超える魔法少女たちの環境や想い、性格を丁寧に書き分けており、それぞれの行く末が気になるため筆者は時間を忘れてプレイしてしまった。戦闘のグラフィックは地味ではあるが、敵の配置や属性を把握し、こちらも適切に移動しないとすぐにやられてしまう緊張感があり、それが少女たちが戦う過酷さの表現に繋がっている。

 シミュレーションRPGの醍醐味のひとつである“育成”という点ではあまり楽しみはないものの、ストーリーが進めば使える能力が増えていき、戦いのバリエーションも豊富になっていくのが楽しい。本作は「シミュレーションRPGツクール95」製とシステム的には古めかしさを感じるのも否めないが、物語といい、簡単すぎず難しすぎずのマップ構成といい、もの凄いパワーを注ぎ込んでる作品という印象を受けた。多感な時期の悩みを乗り越えるストーリーやシミュレーションRPGが好きな人には、自信をもってオススメできる大作だ。

ソフトウェア情報

「魔法少女」
【著作権者】
T・S 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.15(14/01/26)

(芹澤 正芳)