使ってわかるCopilot+ PC
第103回
PCゲームのArm版Windows対応がさらに進むか? セガが「NVIDIA RTX Spark」に新作ゲームを提供
2026年7月17日 12:40
「RTX Spark」で「バーチャファイター」最新作が動作
7月15日、NVIDIAのCEOを務めるジェンスン・フアン氏が来日し、アミューズメント施設のGiGO秋葉原3号館で、セガと共同でのイベントを開催した。
NVIDIAとセガのつながりは、2000年代のアーケードゲーム筐体での協業があるが、実際にはもっと古く、NVIDIAの初代ビデオチップ「NV1」で「バーチャファイター」のPC版を動作させたのが始まり。
さらにセガは「セガサターン」の後継機を開発する際、グラフィックスチップの開発をNVIDIAに任せた。このプロジェクトは失敗し、NVIDIAは倒産の危機に陥るが、セガは開発費用を支払うだけでなく、500万ドルの追加投資まで行った。
フアン氏は過去にもセガに救われた話をたびたびしてきたが、熱心なゲームファンやPC業界通のほかにはあまり知られていなかったようで、このイベントの様子は一般にも大きく報道されたようだ。ここ数年でNVIDIAの存在感が大きく増したことも話題性を呼んだのだろう。
ただし本連載において重要なのは、同じイベントで語られた別の話。NVIDIAが2026年秋に発売を予定している「RTX Spark」の試作機で、セガの新作ゲーム「VIRTUA FIGHTER CROSSROADS」を動かして見せた。これは「VIRTUA FIGHTER CROSSROADS」がPCでも発売されるというだけの話ではない。
「RTX Spark」向けゲームはArmネイティブ版になる
「RTX Spark」は、NVIDIA製のGPUと、ArmアーキテクチャのCPUを搭載するSoC。最大128GBの大容量メモリを搭載でき、高性能なGPUで強力なAI処理が可能であるのが特徴だ。製品としては、Microsoftの「Surface Laptop Ultra」などとして発売される予定。
セガのゲームが動作することについては、NVIDIAから追加発表があった。『セガは「RTX Spark」の先進技術をサポートし、近日発売予定の『VIRTUA FIGHTER CROSSROADS』をはじめ、セガの象徴的なシリーズ作品をゲーマーがこれまでにない形で体験できる機会を提供します』とのことだ。
先進技術のサポートや、これまでにない形のゲーム体験というのがどんなものかは気になるが、ここで大事なことは、セガが「RTX Spark」で動くゲームを複数提供するという点だ。
「RTX Spark」はArmアーキテクチャのCPUで、動作するOSもArm版Windowsとなる。これまでのWindows用ゲームはほぼ全てがx64/x86アーキテクチャで開発されており、Armにネイティブ対応したものはごく僅かしかない。
Arm版Windows 11には「Prism」という強力なエミュレーターがあるため、x64/x86アーキテクチャのソフトもほぼ完全に動作する。しかしパフォーマンスは何割か失われるため、特にパフォーマンスが重要なゲームにおいては、どうしても魅力が下がってしまう。
しかし、セガのような大手ゲーム会社が、今後の新作を「RTX Spark」に対応させるという。これでx64アーキテクチャのみで作っているということはないはずで、Arm版も用意するのはまず間違いない。
ということは、同じArm版Windowsを採用するQualcomm製のSoCを搭載したPCでも、これらのゲームはネイティブ動作するはず。Arm版WindowsにおけるPCゲーム環境が、一歩前進することになる。
GPU性能差はあるが、Armネイティブ対応ゲームが増える契機になる
ただし、Qualcomm製のSoC、具体的には「Snapdragon X」および「Snapdragon X2」シリーズで、「RTX Spark」対応とされるゲームが快適に動作するかはまた別問題だ。
「RTX Spark」のGPUは、性能的には単体GPU製品の「GeForce RTX 5070」に匹敵する。これほど高性能なGPUを内蔵したSoCは、x64プラットフォームにも存在しない。さらにNVIDIA製GPUには、フレームレートを向上させる「DLSS」など、独自の機能がある。
セガが「RTX Spark」をターゲットにゲーム開発を行うと、必然的に他社のSoCではパフォーマンス不足となる。どこまで動かせるかはタイトルによって異なると思うが、基本的には「RTX Spark」のGPU性能を前提にしたゲームタイトルにはなるだろう。
それでも、先行きはとても明るい。Arm版Windowsでのゲーム環境で最大の弱点となっていたアンチチートは、「RTX Spark」の登場に合わせてゲームメーカー各社が対応を進めている。対戦型のゲームは動作が軽量なものも多く、アンチチートさえ対応されれば、Qualcomm製のSoCでも快適に遊べるタイトルはかなり多いはずだ。
PCは仕事にしか使わないのであれば、Arm版Windowsはバッテリー持続時間の長さなどでメリットもある。しかしゲームや趣味でも使いたいとなると、どうしてもパフォーマンスや動作不具合で避けられがちだ。「RTX Spark」の登場で、今後はArm対応が加速していく。今回のセガの発表は、それを象徴する出来事の1つと言える。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜で連載『石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』』(AKIBA PC Hotline!に移動)、『使ってわかるCopilot+ PC』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/

























