週末ゲーム

第640回

2つの特殊ショットで弾幕を撃退するシューティング「RefRain ~prism memories~」

通信ログの会話だけで進む物語、デジタルな世界観も秀逸

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、シューティングゲーム「RefRain ~prism memories~」をご紹介する。

 本作は2011年の夏コミにて初頒布された同人ゲームだが、今年5月13日よりSteamでダウンロード販売が開始された。Steamでの販売価格は1,480円(税込み)。

2つの特殊ショットで切り抜けていく、変わり種弾幕シューティング

基本的には縦スクロールの弾幕シューティングのスタイル

 「RefRain ~prism memories~」は、電脳空間を思わせる世界で少女たちが戦う縦スクロールシューティングゲーム。全5ステージ構成(EASY MODEでは4ステージまで)で、各ステージの最後にいるボスを倒せばステージクリアとなる。

 ゲームとしては激しい敵弾が襲ってくる、いわゆる弾幕シューティングの様相だが、実際のプレイ感は少々異なる。本作のサイトでは“戦略的循環攻撃型弾幕撃込シューティング”と名付けられている。

 攻撃は、主に前方へ射出するメインショットと、低速移動しながら自機に追従するオプションが敵をロックオンして攻撃するロックショットの2種類が基本となる。このほかに、“M.E.F.A2(Mood.Emotion.Feeling.Affect attack)”と“コンセプトリアクター(概念展開)”という2つの特殊なショットを使い分けて戦う。

 M.E.F.A2は、画面左下の“M.E.F.A2ゲージ”を消費して発動する。M.E.F.A2ゲージは敵にショットを当てたり倒したりした時に上昇し、特に敵の近くでショットを当てた時に上昇量が多くなる。ゲージは最大で6発分まで溜まる。

 M.E.F.A2の特長は、最大4種類の攻撃に変化すること。M.E.F.A2の発動ボタンを1回押すだけだとゲージを1つ消費して単発の攻撃を出すが、連打するとそのたびにゲージを消費しつつ、全く違う攻撃が発動する。格闘ゲームで言うところのコンボのような感じで、4種類の異なる攻撃を立て続けに発動できる。

 特に重要なのが3発目以降。命中させた敵はノックバック状態となり、一定時間は動きが停止する。この間に攻撃を集中させてダメージを与えられるだけでなく、通常よりもM.E.F.A2ゲージの上昇量が増える。ノックバックした敵に近付いて攻撃すれば、再びM.E.F.A2ゲージを溜めてM.E.F.A2を発動できるという仕組みだ。さらにM.E.F.A2の各攻撃は弾消し効果と発動後の無敵時間があり、4発目には画面上の敵弾をすべて消す効果もある。弾幕をできるだけ引き付けて発動することで、防御と攻撃を両立するという仕組みだ。

 コンセプトリアクターは、“コンセプトリアクターゲージ”を消費して発動する。コンセプトリアクターゲージは、敵を倒した時や、ノックバックした敵に攻撃を当てた時に出るアイテムを拾うことで増加。最大3発分まで溜めておける。

 コンセプトリアクターを発動すると、画面内にある敵弾が、当たり判定のない破壊可能なオブジェクトに変化する。このオブジェクトを破壊するとM.E.F.A2ゲージが大幅に上昇する。弾幕の回避として使えるだけでなく、M.E.F.A2ゲージを溜めて反撃するきっかけを作ることもできる。発動直後は無敵時間も発生するため緊急回避的にも使えるが、敵のレーザー系の攻撃はオブジェクトに変化しないので油断は禁物だ。

 M.E.F.A2で敵をノックバックさせ、攻撃してアイテムを拾い、コンセプトリアクターを発動させて弾幕をオブジェクトに変え、再びM.E.F.A2を発動する……というように、2つのゲージが互いに補完し合うように溜まっていく。

 ボス戦でうまく立ち回れば、一方的に攻め立てて倒すことも可能だ。逆に雑魚戦や大した弾幕でもない時に使ってしまうと、肝心な時に両ゲージが足りずに困ることになる。無敵時間や弾消しを乱発できると言うと大味なゲームに聞こえるかもしれないが、実際は2つの特殊ショットをうまく連携させて敵を黙らせるという戦略も取れる、頭脳的なゲームと言うべきものだ。

攻撃の基本となるメインショット
ロックショット時は自機の動きが遅くなり、精密な回避にも適する
M.E.F.A2はゲージを消費するが攻撃力が高い
M.E.F.A2を連打すると、最大で4種類の攻撃に派生する
3発目以降のM.E.F.A2は敵をノックバックさせる効果がある
コンセプトリアクターを発動すると、弾幕が半透明のオブジェクトに変わる

全く味付けの異なる3種類の機体で楽しめる

ティ
ミューズ

 プイーヤーキャラクターは、最初は“Must Vipier”を操縦するミリアを選べる。少しプレイすると、“Blitz Lester”を操るティ、“Bronx Terror”を操るミューズが追加され、自機は3種類に増える。

 自機の性能は3つともかなり違う。Must Vipierはメインショットが前方拡散、ロックショットは前方集中。M.E.F.A2は範囲が広く使いやすいものが多く、スタンダードな性能を持っている。

 Blitz Lesterはメインショットが前方集中、ロックショットは近距離全方位に自機を囲むように攻撃が発生する。雑魚に囲まれた時には便利だが、接近しないと当たらない上、威力もさほど高くない。M.E.F.A2は1発目がロックショットと似た近距離攻撃で、基本的には2発以上を撃っていくスタイルになりやすい。なかなか運用が難しいが、接敵してゲージを溜めるのに慣れてくると戦略的で面白味が出てくる。

 Bronx Terrorはメインショットを前方正面、集中、拡散とオプションの配置で変化をつけられる。ロックショットではオプション機が敵を自動追尾して攻撃。M.E.F.A2は前方に向けた強力な攻撃が多い。雑魚戦、ボス戦とも運用しやすく、本作を“普通のシューティング”だと思って遊ぶ分には最も扱いやすいと感じる。

 3種類ある機体の性能差が大きく、攻略の仕方も変わってくる。同じステージ構成でも、機体によっては接近しての回避が大事になったり、2つの特殊ショットに頼らないで切り抜けたくなる場面も出てくる。ゲージの溜めやすさやM.E.F.A2の使い勝手が違うので、すべてを無敵時間と弾消しで突っ切るようなゲームではない。

 ちなみに自機には敵の攻撃を1回だけ防いでくれるシールドが標準搭載されており、被弾すると画面内の敵弾が一掃される。2度目のダメージではミスとなるが、ステージをクリアするとシールドは回復する。自機の当たり判定は非常に小さく、コンフィグで当たり判定を表示させることもできる。弾幕を避けて進むか、特殊ショットで消して反撃するか、遊び方はプレイヤーの自由だ。

ティの“Blitz Lester”。自機の周りに攻撃が出るロックショットが特徴的
M.E.F.A2の2発目以降は広範囲に発動する。動きのメリハリが求められる機体だ
ミューズの“Bronx Terror”。敵を自動追尾するロックショットが扱いやすい
M.E.F.A2はやや前方に集中するため、雑魚の殲滅には向かない場面もある
敵弾とレーザーの雨あられ。必死に回避するもよし、M.E.F.A2などで対処するもよし

デジタルの世界で、彼女らは何をしようとしているのか

ミリアのメニュー画面。良くも悪くも無難な印象

 本作の物語は、ある巨大コンピューターの中での事象として語られている。しかし舞台設定については、ゲーム開始時点ではほとんど語られない。少女らが仮想空間で戦い、そこで何が起こっているのかは、ゲームが進むごとに明らかになっていく。

 ……と言っても、ドラマチックな演出でストーリーが語られるわけではない。機体選択後のメニューにある“LOG ARCHIVE”から、作中のキャラクター同士がやり取りするメッセージのようなデータが読めるだけだ。ステージをクリアするなど条件を満たすことで、新たなメッセージデータが閲覧できるようになる。

 3人のプレイヤーキャラクターは、メインメニューやM.E.F.A2の4発目発動時にイラストが用意されているものの、それ以上の画像はない。ただ、機体選択後に各々のメニュー画面が用意されており、機能的には同じだが外見がまったく違う。機能的で質実剛健なデザインのミリア、パステルカラーでクマの絵が描かれたティ、電子の海を漂うようなアーティスティックな演出のミューズと、三者三様だ。

 LOG ARCHIVEで読めるメッセージは、3人(と他のキャラクターも登場する)の会話のテキストがあるに過ぎない。それでもメニューのデザインをまったく別物にするという演出も加わり、各々に明確な個性が与えられている。

 いったい彼女らに何が起こっていて、なぜ戦わなければいけないのかは、ゲームを進める中で、彼女らの会話のテキストログという形で明かされていく。もしかしたら彼女らはどこかに捕らわれているのか?あるいは、彼女らは人間ですらないのか? デジタル情報だけで描かれる世界は、プレイヤーの想像力を刺激してくる。また一部のボス戦で、強力な攻撃が来る前に表示されるキャラクターのビジュアル(ボス本人?)も謎めいていて印象的だ。

 本作には4段階の難易度があるが、2段目のNORMAL MODEでもかなり難しい。シューティングゲームに慣れた人でも、特殊ショットの扱いに慣れるまでは苦戦するはずだ。またコンティニュー回数にも制限があるため、そうやすやすとは先に進めない。断じて、初見でクリアして終わりになるような内容ではない。シューティングゲームファンにじっくり腰を据えて遊んでいただきたい作品だ。

ティのメニューはいきなり別世界かと思うデザイン
ミューズのメニューはデジタルアートのよう
物語は“LOG ARCHIVE”のテキストだけで展開される。断片的な情報から、作品の世界観を垣間見ていく
一部のボスは、強力な攻撃の前にキャラクターのビジュアルが見えることがある

ソフトウェア情報

「RefRain ~prism memories~」
【著作権者】
RebRank
【対応OS】
Windows 7/8/8.1/10
【ソフト種別】
ダウンロード販売 1,480円(税込み)など
【バージョン】
1.03.2(16/06/16)