【第399回】
SFシミュレーション&アドベンチャーゲーム「打撃戦艦アルテミス」
くせ者揃いの艦隊で月独立戦争を戦え!ターン制でもRTSでもない新システムを搭載
(09/12/25)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、システム、ストーリーともに作り込まれたSFシミュレーションゲーム「打撃戦艦アルテミス」を紹介しよう。
人類初の星間戦争“月独立戦争”が舞台のSFストーリー
「打撃戦艦アルテミス」は、地球からの独立を目指す未来の月を舞台に、絶望的な戦力差の月独立戦争を戦い抜いていくSFシミュレーションゲーム。ゲームは主人公たちの会話で進むアドベンチャーパートから始まり、ストーリーの進行に応じて戦艦戦を行うシミュレーションパートに突入。戦闘後にまたアドベンチャーパートへ戻る。ゲームは章立てだが、物語はほぼ切れ目なく進行していく。
なお、本作は同人ソフトで、無料の体験版が公開されている。完全版は一部の委託販売店やイベントで頒布されており、詳細は作者のWebサイトを確認してほしい。体験版では本編となる“ストーリーモード”を全13章中2章まで、またストーリーモードと別のステージをプレイできる“フリープレイモード”は全12面中5面までプレイ可能だ。
物語の主人公は、新造戦艦アルテミスを中心とした“アルテミス艦隊”の司令“レイシア・レンツローズ”の部下で、艦隊の専従参謀である“ユーリ・クラレンス”少佐。最新技術の塊であるアルテミス艦隊は戦意高揚を目的とした艦隊で、司令のレイシア以下若い女性のクルーが多い。メディアとも結託して救世主のごとき活躍を月市民に喧伝する役割を求められているが、ただの広告塔としての役割に納得しないレイシアは……というのが序盤の展開。彼女の思惑に否応なく巻き込まれる形で、主人公のユーリは戦場を生き抜いていくことになる。
主要キャラクターは、アルテミス艦長の“ファナ”、レーダー員“メリア”、火器管制官“チホ”、補修担当のアンドロイド“マーヴィ”と全員女性。彼女達やユーリは“記憶印可”という技術により知識の強化を受けており、ベテラン軍人に劣らぬ能力をもつ……はずなのだが若さ故の問題も多く、ユーリは参謀という職ながら人間関係の調整役としての役割も求められる。そのため、彼の軽妙な語り口とも相まってコミカルなシーンも多いが、基本的にはシビアでハードなエピソードが多く、交わされる会話も甘いものばかりではない。しっかりSFしているので、なかなか読み応えがある。
ターン制でもRTSでもない、先読みが重要なシミュレーションパート
シミュレーションパートは、四角いマスで仕切られたクォータービューのマップ上に戦艦を配置して戦う形式。ただし、一般的なターン制ではなく、“タイムライン”という細かい時間進行の区切りに合わせて移動や攻撃といった各艦の行動をあらかじめ決定し、ゲームを進行していく。
一度に決定できる行動の内容や手数に制限はなく、たとえば画面の一番遠くまで移動することや、ずっと砲撃を続けることも可能。ただし、あらゆる行動にはそれに応じた準備時間がかかるので、行動を一番最初に決定したとしても、最初に動けるとは限らない。さらに、行動決定後はタイムラインの進行と共に全ユニットが同時に行動を開始するので、敵味方すべての動きを想定して行動を決めなければ、攻撃しようにも攻撃範囲に敵艦がいないなど、まったく無駄な行動をしてしまうことにもなりかねない。
ただし、完全にリアルタイムでゲームが進行するRTS(リアルタイムストラテジー)ゲームとも違い、行動を決定するまではゲームが進行しないので、事前にじっくりと戦略を立てることが可能だ。タイムラインの進行により行動を済ませた艦は、再び行動の入力待ちとなる。
戦艦は主に小型、中型、大型という3種類のサイズに分類され、搭載できる武装などが異なる。小型艦は行動が機敏で回避能力も高いがHPが低く、被弾すると撃破されやすい。大型艦は動きは遅いが耐久力が高く、強力な武装を搭載可能となっている。傾向としては、サイズが大きいほど移動開始までの準備時間や旋回に必要な時間が長く、武装も強力なものほど発射までに時間がかかるという形だ。艦の性質を考え、大型艦の動きを中心として中型、小型の艦がそれに合わせるように艦隊を運用するとよいだろう。
より確実に行動するには、長時間の行動を一気に決めるのではなく、周囲の状況に合わせて前進、旋回、攻撃など1アクションずつ細かく入力していくのが無難ではある。しかし、移動と攻撃を連続して行うことで、“指揮ポイント”というポイントを獲得でき、これを溜めると“オペレーション”という特殊なコマンドを実行可能。オペレーションは遊軍からの追加攻撃のほか、敵艦隊の行動を混乱させる、通常は伏せられている敵艦隊のタイムラインを見えるようにするなど、戦局を有利にする大きな助けとなる。そのため、行動の的確さと指揮ポイント獲得のバランスを考えた行動決定が勝利の鍵を握る。
なお、敵艦が攻撃範囲にいないのに攻撃を実行するなど、行動が無駄になった場合は再命令をしなければならない。これは無駄な時間を消費するので、不慣れなうちは移動、攻撃、攻撃、といった2~3アクションを1回の行動指示とするのがいいだろう。この程度であれば大きな失敗をせずに戦いを乗り切れるはずだ。
また、行動を決める場合は自艦と敵艦の向きも重要だ。戦艦は形状的に、正面は被弾面積が狭く回避しやすいが、前方の砲門しか攻撃に使えないため攻撃力は低いという設定。また、側面は被弾面積が広く回避能力が低下するものの、前後の砲門を使えるため攻撃力が上昇する。さらに、艦の後方90度は死角となっていて攻撃できないばかりか、受けるダメージも増加してしまう。これらも考慮に入れて艦を動かしたいが、なかなかうまくいかないものだ。それでも、死角を突かれないように艦を配置して守る、ぐらいは意識しておきたいところである。
ゲームのメインとなるストーリーモードのプレイ時間は、おおむねアドベンチャーパート7、シミュレーションパート3といった配分で、ストーリーを読み進めていく時間が長い。とはいえシミュレーションパートの戦略性は高く、ストーリーなしのフリープレイモードも含めるとボリュームもかなりのもの。まずは体験版をプレイしてみて、気に入ったらぜひ購入してほしい。
体験版
- 【著作権者】
- circumflex
- 【対応OS】
- (編集部にてWindows XPで動作確認)
- 【ソフト種別】
- 体験版(完全版はイベント、委託販売)
- 【バージョン】
- -(09/11/16)
- 【ファイルサイズ】
- 294MB