週末ゲーム

第633回

正当派・死んで覚えるアクション「Momodora: 月下のレクイエム」

コンティニューを連発しながら動きを見切る、シビアでダークな探索型アクションゲーム

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、探索型2Dアクションゲーム「Momodora: 月下のレクイエム」をご紹介する。

 本作はゲーム配信サイト“PLAYISM”および“Steam”でダウンロード販売されているインディーゲームで、販売価格は980円(税込み)。

操作感は良好ながら、開始1分でゲームオーバーもあるハードなアクション

女司祭のカホが、呪いに蝕まれた国を単身で旅する

 「Momodora: 月下のレクイエム」は、女司祭のカホが単身で冒険する2Dアクションゲーム。カホは自分の村にかけられた呪いを解くため、原因と思われる国の女王へ謁見すべく城へと向かう。しかしその国も呪いに支配され、道中は魔物が跋扈する危険地帯となっている。

 本作は、海外では“Metroidvania”と呼ばれる系統の、広大なマップを探索してアイテムを見つけ、仕掛けを突破して奥へと進んでいくアクションゲームだ。本作を開発するBombserviceは『80~90年代のゲームに多大な影響を受けた』としており、クラシカルなドット絵とオーソドックスな探索アクションとなっている。なお本作は「Momodora」シリーズの4作目となるが、過去作より前の時代の話となっており、本作から遊んでも何ら問題ない。

 カホの基本的なアクションは左右移動と2段ジャンプ、無敵状態になりながら移動できる緊急回避。攻撃は木の葉を操る近距離攻撃と、弓矢による遠距離攻撃が主体となる。近接攻撃はボタン連打でコンボが可能。弓矢は一定時間ボタンを押し続けると、威力が上がり一度に放つ矢の本数が増える。使うボタンが多めなので、思い通りに使いこなすのに少々慣れが必要だが、操作感はキビキビしていて快適だ。

 ゲーム開始前に難易度設定が可能。筆者は“2Dアクションゲームに慣れている人向け”というノーマルでスタートした。ゲームはライフ制で、敵や敵弾に接触するとライフが減り、0になるとゲームオーバー。敵の攻撃の種類によってダメージにはかなりの幅があり、序盤から雑魚に2~3発攻撃をもらうと死んでしまうこともある。筆者は冒険をスタートしてから1分ほどで初ゲームオーバーを迎えて、『これは気合を入れねば』と感じた。

 それからは順調に進めたかというと、全くそんなことはなかった(笑)。緊急回避で後ろに回り込まなければならない敵や、画面外から毒袋を投擲してくる敵など、序盤から結構な難しさだ。地面を何気なく歩いてきて殴ってくるだけの敵も、攻撃のタイミングを誤ってちょっとでも触れようものなら、ライフの大半を持っていかれる大ダメージを受ける。さらに進むとボスも出てきて、文字通り一撃死の攻撃を放ってくることもある。

 敵の行動パターンや出現位置を覚えないと、すぐにダメージが蓄積していってやられてしまう。ゲーム的にもクラシカルな、死んで覚えるゲームの正統派という手応えだ。ある程度の間隔でセーブポイントは用意されているが、難所を1つ超えるごとにセーブできるというほど甘い設定ではないので、雑魚相手にも何度もゲームオーバーになりつつ、『そろそろセーブポイントが欲しい!』と思いながら進んでいく。

序盤、見た目にはそう難しそうではないのだが……
盾を装備していて緊急回避で後ろに回らないと倒せない敵など、最初からかなりハード
近距離攻撃は木の葉で敵を叩く。連打で連続攻撃になる
遠距離攻撃は矢を放つ。連射や溜めも可能
ボスは即死級の大ダメージを与えてくる攻撃も持っている
セーブポイントに到達できれば一安心

主人公が成長し、プレイヤーが敵を見切ると面白くなる

アイテムを入手してカホを成長させていく

 ゲームクリアするまで、とにかく何度もゲームオーバーになる作品なのだが、手が操作に馴染んでくると、アクションの面白さがわかってくる。序盤はカホのライフが少なく、ちょっとしたミスからゲームオーバーになりがちだが、アイテムが揃ってくると徐々に余裕が出てくる。プレイヤーの上達とともに、カホも成長していく。

 カホの成長要素は、ライフの最大値の増加と、回復や能力アップを行えるアイテムの獲得、新たなアクションのマスターがある。ライフはセーブポイントに到達すると最大まで回復するので、最大値が高いほど楽になっていく。アイテムはフィールド上で拾えるものと、敵を倒すと拾える星状のお金(木の葉?)で購入できるものがある。

 アイテムは任意のタイミングで使用するアクティブなものと、選んでおけば常時発動するパッシブなものがある。アクティブなアイテムには、回復アイテムや、一時的に攻撃力などをアップさせるものなどがある。アイテムには使用回数が設定されているが、セーブポイントに到達すると使用回数は最大に戻る。使い捨てではないので、次のセーブポイントまで手持ちのアイテムでやりくりすればいい。同時に装備できるのは最大で3つまでだが、メニューからいつでも変更は可能だ。

 パッシブなアイテムは、装備しておくと効果を発揮する。敵を倒した時に出るお金を自動で回収するアイテムは重宝する。また遠距離攻撃に毒の効果を付与できるものや、ライフが少ない時に攻撃力が上がるものなど、ボス戦で重宝する攻撃的なアイテムもある。こちらは同時に2つまでしか装備できない。付け替えは可能なので、ボス戦に入ったら変更するのが基本だ。

 新たなアクションには、空中での緊急回避や、猫に変身して細い通路を通れるようになるもの(これはアクティブなアイテムとして用意されているが、使用回数に制限がない)などがある。緊急回避は地上・空中とも、一定距離を無敵状態で移動できるため、間にある敵や攻撃を無視して回り込める。これを使わないと回避不能な攻撃を繰り出してくるボスもいるので、攻略には必須のテクニックだ。

 この緊急回避を使いこなせるようになると、アクションの面白さがぐっと増す。特にボス戦では、ボスの予備動作を見て攻撃を緊急回避で切り抜け、反撃していくというプロセスが面白い。もちろん予備動作を見切るために何度もゲームオーバーになることも多いが、初戦では『こんなの絶対無理だ!』と思ったボスが、何度かやっているうちに楽勝で倒せたりする。見切れれば何とかなるが、見切るまでがそこそこ大変という難易度もちょうどよかった。

 攻撃力を上げるアイテムを多重装備して、回復アイテムが切れる前に一気に倒すというゴリ押しが効く相手もいる。それはそれで、アイテムの使い方を考えた立派な攻略法だ。ゴリ押しでは抜けられそうにないボスもいるが、何十回トライしても全く倒せないというほど厳しい相手もいなかった。繰り返しやられるストレスが適度に溜まった頃に倒せて、いい具合に達成感が得られるという、実にいい塩梅にまとまっていた。

フィールドを探索すると、アイテムが見つかることがある
ライフの最大値が増えると、わずかながら楽になる
敵を倒すと、星状のお金が手に入る
手に入れたお金で購入できるアイテムもある
どのアイテムを装備しておくかも重要。装備はいつでも切り替えられる
ボスの攻撃を見切って、華麗に反撃するのが醍醐味

100%探索を目指すやり込み要素。主人公の怖さが引き立つ演出も良し

マップの繋がりを見ると、何かありそうな場所がわかることもある

 探索要素はそれほど難解ではなく、素直に進んでいけば概ねゲームは進行していく。フィールドの仕掛けは、足を踏み外すと一撃死する場所があちこちにあるものの、さほどシビアな配置にはなっておらず、戦闘以外のアクションで難しい場所は少なめ。次にどこに行くべきかというヒントが少ないため迷いやすくはあるが、全体マップを開くとマップの繋がりが見えるので、行けそうな場所は概ね見当が付く。

 オマケ的な要素として、“アイボリーバグ”という特殊なアイテムを集めるものがある。攻略に必要なものではないが、一見行けそうにない場所に隠されていることが多いコレクションアイテムだ。攻撃すると壁が消えて新たな道が現れるというパターンが多い。また落下したらゲームオーバーに見えるところも、全体マップで確認するとさらに下のマップがあったりするので、わざと落ちてみるのも重要だ(そして普通にゲームオーバーになることもある)。

 全体マップを見ると、マップの到達度がパーセント表示されている。すべてのマップをオープンにするのもゲームの目標の1つになる。また隅々まで探索することでアイテムが入手できることもあるので、攻略に詰まったらあちこち周ってみるのもいい。最初は次のセーブポイントに到達するだけで大変だが、アイテムが揃ってくれば行き来するのはそう難しくはない。

 唯一気になるのが、セーブポイントから別のセーブポイントにワープできる機能。新たなアクションが可能になれば、序盤のマップに戻りたいこともある。だがワープ機能はゲームの後半にならないと解放されず、ワープ先に指定できるセーブポイントも一部に限られている。マップはかなり広大で、なおかつ僅かなミスが命取りになる場所も多いため、長距離の移動を何度も強いられる。ワープは最初からできてもよかったなと思う。

 作品全体を見渡してみると、最初から最後まで続くダークな世界観が印象的だ。ストーリー性はさほど強くないが、要所にはNPCが居て、それぞれの気持ちを語ってくれる。中にはカホのことを誤解して襲い掛かってくる人もいるが、カホは一言も発することなく、淡々と倒して進んでいく。作中でカホが声を発するのは、ライフが切れて倒された時の『キャー』という悲鳴だけだ(これだけは散々聞かされることになる)。何も言わず、ただ目的のために危険を顧みず進むカホが、誰より不気味に感じることもある。

 映像はドット絵で解像度は低めながら、暗い雰囲気で統一された世界観とよくマッチしている。音楽もシーンに合っていて、特にボス戦などでは気分を盛り上げてくれる。何度も何度もゲームオーバーになっても心が折れずに済むのは、良質な音楽に助けられている部分が大きいと感じた。

 80~90年代のゲームに影響されたというものの、昔ほどシステム周りは不親切ではない。それでいてバトルの難易度はかなり高く、アクションゲームファンにも十分な歯ごたえがある。ハードなアクションをキビキビした操作感で楽しめること、そしてダークな世界観が最後まで続くことに魅力を感じたら、ぜひプレイしてみることをお勧めしたい。

フィールドの移動では、バトルほどシビアなシーンは少ない
隠された“アイボリーバグ”を見つけるのもゲームの目的の1つだ
登場するキャラクターも個性的で、セリフも面白い。しかしカホは一切喋らないのがゲームの怖さを引き立てている
最大の魅力はやはりボス戦にある。落ち着いてボスの攻撃を見極め、対処していくのが面白い

ソフトウェア情報

「Momodora: 月下のレクイエム」
【著作権者】
Bombservice
【対応OS】
Windows 7(編集部にてWindows 10で動作確認)
【ソフト種別】
ダウンロード販売 980円(税込み)
【バージョン】
1.02b(16/04/05)

(石田 賀津男)