REVIEW(11/10/06)
“超王道”連作ファンタジーRPG「Grimoire Hearts」
霧に覆われた世界を舞台とした笑いあり、涙ありの冒険譚
「Grimoire Hearts(グリモアハーツ)」は、霧に覆われた世界“ユ・オルセル”を舞台に、運命に抗う青年とその仲間達の冒険を描く全四章構成のファンタジーRPG。現在は序章にあたる“Disk1:a bargain is a bargain”が公開されている。Windowsに対応するフリーソフトで、編集部にてWindows XP/7で動作を確認した。作者のWebサイトからダウンロードでき、動作にはRPGツクールVXのランタイムが必要。
本作の主人公は、インフェリア王国の騎士団長“デュクス”の息子ながらも剣の腕はからきしで魔術師志望、しかしその魔術も才能がなく全く使えないという青年“ユウリ”。森の奥のいおりで平凡に暮らしていた彼が、夢の中で世界の危機と、自分が特別な存在であることを告げられることから物語は始まる。……と、一見ものものしい導入だが、基本は癖のあるキャラクター達による掛け合いで進行する、コメディ要素の強いRPGだ。
本作のシステムは、フィールドは2D見下ろし型、戦闘はコマンド選択型と、基本はオーソドックスな作り。特徴は、パーティの仲間同士や、この世界で暮らす人々との交流を描くためのさまざまな仕掛けが用意されていること。
仲間同士の交流としては、多数用意されているイベントシーンに加え、パーティメンバー同士でのちょっとした会話を楽しめる“チャット”システムがある。チャットには次の目的地などを確認する“ノーマルチャット”と特定のシチュエーションで発生する“グルービーチャット”があり、メニュー画面から選ぶことで会話イベントが始まる仕組み。
また、パーティが訪れる町などではさまざまなサブイベントが発生するほか、物語の進行に応じて町の人の会話内容もどんどん変わっていき、特定のタイミングで特定の人に話すことでグルービーチャットが発生することも。こうしたチャットやサブイベントは、スルーしてもメインストーリーは進められるが、個性豊かなキャラクター達によるテンポのいい会話のやり取りは楽しく、つい色々な人に話しかけたくなってしまう。またサブイベントなどにより、スキルなどを入手できることもある。
なお、本作の戦闘はランダムエンカウントだが、“エンカウントキャンセル”というシステムがあり、エンカウント直前に[!]マークが出たところですかさず決定キーを押すと戦闘を回避できる。あまりキャンセルを続けると今度は不意打ちを食らうが、戦闘の難易度自体がそれほど高くはないので、いきなり大ピンチになることは少ない。ゲームをサクサク進めたいなら、積極的に活用していこう。
本作にはほかにも、アイテムの合成や戦ったモンスターを記録する“魔物大辞典”などさまざまな要素が用意されている。古今東西のRPGのシステムから、RPGの楽しさをストレスなく堪能するための要素をバランスよくピックアップして実装しているという印象だ。
本作はコメディタッチで進みつつも、シリアスな場面ではプレイヤーの心を揺さぶるような熱い台詞が目白押し。ある意味王道、お約束の展開だが、膨大な会話イベントでキャラクター達の日常や人間関係を丁寧に描くことで、台詞に単なるお約束を超えたリアリティと説得力を与えてくれている。
また、主要キャラクターには立ち絵が用意されており、さまざまな表情の変化で会話を彩ってくれる。BGMも多数用意されイベントシーンを盛り上げるほか、街やフィールドのBGMは民族楽器を使用した哀愁ただようものが多く、どこか懐かしさを感じさせてくれる。
本作は長編として構想されているが、Disk1自体の平均プレイ時間は公称7~8時間程度。どこでもセーブが可能など、ユーザーフレンドリーな作りのため広くお勧めできる。RPGに興味があるなら、ぜひプレイしてみてほしい。
「Grimoire Hearts Disk1:a bargain is a bargain」
- 【著作権者】
- 太郎2 氏
- 【対応OS】
- (編集部にてWindows XP/7で動作確認)
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.0