レビュー

漂流宇宙船の謎を遺されたログから読み解いていくSF ADV「Analogue: A Hate Story」

データベース画面でログにアクセスしゲームが進行。AIとの会話も楽しい作品

「Analogue: A Hate Story」

 「Analogue: A Hate Story」は、漂流した宇宙船のログを読み解き、宇宙船で起きた出来事を探っていくSFアドベンチャーゲーム。本作はカナダのChristine Love氏が2012年にリリースした作品で、先日PLAYISMの翻訳により日本語版が発売された。

 なお本作はダウンロード販売されており日本語の体験版はないが、執筆時現在PLAYISMのウィンターセールにより、通常980円のところ1月5日まで490円で購入できる(いずれも税込み)。

 プレイヤーは消息を絶ってから数千年ぶりに発見された多世代宇宙船“ムグンファ”の調査を請け負い、外部から通信で宇宙船のシステムにアクセスするという設定。ムグンファに搭載された女性型のインターフェイスAI“*ヒョネ”の協力を得て、船内のさまざまな人物が遺した書簡や手記、報告書といったログを読み進めていく。

 ゲームはデータベースのような画面で進行。AIから提示されたログのうち詳しく知りたいものをAIに見せたり、二択の質問に答えることでストーリーが展開していく。船内コンソールにアクセスして宇宙船のトラブルを解決するテキストアドベンチャーのようなシーンもあり、SFらしい雰囲気を存分に味わえる作品だ。

データベースのような文書一覧からログを選択し、読み進めていく
言語入力システムの不調によりAIとの対話はAIが用意した二択でのみ行える設定。後は興味のあるログを見せることがコミュニケーション手段だ
コンソールから船内管理システムにアクセス。コマンドを駆使してトラブルを解決するテキストアドベンチャー要素も

 ログを読み進めていくと浮かび上がってくるのは、“蒼き花嫁”と呼ばれる人物の存在。コールドスリープから呼び覚まされた彼女は周囲の技術と文化水準が退化してしまっていることに戸惑い、一方で周囲は“一族に託された卵”から出てきた娘が社会に馴染めないことに戸惑う。

 空白の時代に何が起きたのか、なぜムグンファの社会が退化してしまったのかを探る……のは本作の主題ではなく、描かれるのは蒼き花嫁を中心とした一族盛衰の記録や、絶望とわずかな希望の中で過ごした彼女の鮮烈な生き様だ。さまざまな立場と視点で記されたログからは政治的な思惑や婚姻と性の悩みなど、生々しい感情や赤裸々な場面までが明かされていき知的好奇心をくすぐる内容となっている。宇宙開拓時代の宇宙船を舞台に李氏朝鮮王朝をモチーフにした男尊女卑社会が描かれるというギャップも、独特の世界観を醸し出しており興味深い。

 とはいえ重苦しいばかりの作品ではなく、ナビゲーターという役割を遂行しつつもちょくちょく私見や雑談を挟んで来る*ヒョネとの会話は楽しく、選択肢によって彼女との関係も変化していく。*ヒョネとは立場の異なる別のAI“*ミュート”も登場し、“AI萌え”も堪能できる作品だ。

ムグンファのセキュリティ担当という立場で船内を見てきたもう一人のAI、*ミュート。*ヒョネの事を嫌っているようだが……
*ヒョネ衣装変更も可能で、さまざまな反応が楽しめる

 なお、本作は日本語未翻訳の続編「Hate Plus」もリリースされており、こちらは空白の時代の記録を探る内容となっているようだ。本作に引き続き翻訳されることを期待したい。

ソフトウェア情報

「Analogue: A Hate Story」
【著作権者】
Love Conquers All Games
【対応OS】
Windows XP(編集部にてWindows 8.1で動作確認)、Mac OS X 10.5.8以降
【ソフト種別】
ダウンロード販売 980円(税込み)など
【バージョン】
-

(中村 友次郎)