週末ゲーム

第601回

“ニコニコ自作ゲームフェス5”お勧め作品ピックアップ 第3回

すごろく風RPGやハッキングがテーマのノベルゲームなどなど5作品を紹介

“ニコニコ自作ゲームフェス5”公式サイト

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、ニコニコ動画にて開催されている自作ゲームの祭典“ニコニコ自作ゲームフェス5”の参加作品から、窓の杜編集部がピックアップした作品を全3回にわたりご紹介する。

 第1回ではミニゲーム的な作品を、第2回ではアクション・シューティングゲームを中心に紹介した。最終回となる今回は、RPGやノベルゲームなど計5作品をご紹介する。

スコアアタック型のすごろく風RPG「コロコロクエスト」

「コロコロクエスト」

 「コロコロクエスト」は、すごろく風にマス目で区切られたフィールドを進んでいくRPG。クリアはなく、HPが尽きてゲームオーバーになった時点の到達距離や所持ゴールドなどを追求するスコアアタック型だ。

 1~6の数字いずれかが確定済みのサイコロがカードゲームの手札のように4つ配られ、1つを選んでその目の数だけ進んでいく。敵が配置されたマスに止まると戦闘となり、攻撃時のダメージも、攻撃力にサイコロの目を掛けて決まる仕組み。

 さらにゴールドを入手できる宝箱や、HPを回復できる回復の泉も配置されているが、これらも基本値にサイコロの目を掛けた値の効果が発生する。目の代わりに“×2”と書かれたサイコロが配られることもあり、使うと他のサイコロの効果を2倍にすることができる。

 ある程度の距離を進むたびに町があり、ゴールドを払って装備品を強化可能。ただしHPを回復する宿屋などはなく、レベルアップでHPが回復することもないため、回復の泉が唯一のHP回復手段だ。戦闘によるレベルアップと装備品の強化、HP回復をバランスよく行い、徐々に強くなっていく敵に備えるのがポイント。強制的にストップとなるボス戦のマスも待ち受けている。

 すごろく風を謳う作品だがサイコロの目が完全ランダムではなく、敵のHPや取得経験値、宝箱や回復の泉の基本値もマス上にあらかじめ表示されているため、手持ちのサイコロをうまく組み合わせて止まるマスとそのマスで出す目を制御する、パズル的な要素も強い内容。少しでも長く生き延びることを目指す戦略性と、ほどほどのランダム性により繰り返し遊べるゲームとなっている。

4つ配られるサイコロのうち1つを選んで進んでいく
サイコロには赤・青・緑の色があり戦闘時は3すくみの相性でダメージが変わるが、これを含め最終的なダメージや効果値はあらかじめ表示されるため、プレイヤーが細かい計算をする必要はない。どのサイコロを出し、どれを残すかの意志決定に集中できる
回復の泉でのHP回復量もサイコロの目に左右される
レベルアップ時はどの能力値を重点的に伸ばすか選択可能
「コロコロクエスト」
【著作権者】
アレク 氏
【対応OS】
Webブラウザー
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-

鏡の世界で過去の記憶と向き合っていく探索ホラーADV「虚白ノ夢」

「虚白ノ夢」

 「虚白ノ夢」は、強い願いや未練を抱えた魂が吸い寄せられるという“鏡の世界”で過去の記憶を探っていくホラーアドベンチャーゲーム。湖に身投げし鏡の世界で意識を取り戻した少女“ミシロ”は、この世界に来る前の記憶を失っていることに気付く。そんな中でも覚えていた『自分の人生が初めから存在しなかったことにする』という望みを叶えるため、自分の姿が映る鏡を探し、これを割ることで記憶を取り戻していく。

 ゲームは仕掛けを解くことで物語が進んでいくフィールド探索型。探索の拠点となる広間から、“愛の間”、“死の間”といったそれぞれ独特の雰囲気をもつフィールドへ踏み込む形で、仕掛けは基本的に各フィールド内で完結する。マップもコンパクトにまとまっており、小さい謎解きの積み重ねでテンポよく進行。ヒントをもとにアイテムの使い道を発想するなど、頭を使う部分に集中できる。

 ホラーゲームとしては、初見殺しや謎解きのミスで発動する即死トラップも散りばめられているが、より恐ろしいのは仕掛けを解いてほっと一息、さて戻ろうと背を見せたタイミングで襲ってくる脅かし要素。意識の間隙を突いてくる恐怖演出が巧妙で、気を抜くことができない緊張感が、常に薄暗さのまとわりつく世界への没入を誘う。

 探索を続けるうちに、ミシロは鏡の世界で出逢った陽気な少女“ユズ”や会社員風の男性“リョウタロウ”という2人の人物の記憶も垣間見ることになり、やがてある一族にまつわる悲劇が明かされていく。本能的な恐怖だけでなく“人の業の恐ろしさ”も感じさせる展開だが、一方でミシロが見る記憶には優しげな少年“彩人”が登場するほか、ユズやリョウタロウとの交流も心温まるもので、ミシロの心にも少しずつ変化が訪れる。

 プレイ時間は3時間前後でマルチエンディング方式。謎解きとホラーがバランス良く絡み合い、重苦しくも切ない物語を演出する、アドベンチャーゲームとして完成度が高い作品に仕上がっている。

ヒントをもとに、アイテムを使って仕掛けを解いていく。テンポのよい謎解きも楽しい作品
鏡の世界、そして記憶の中で出逢う人々との交流も描かれる。断片的な記憶の数々は、やがてある一族の物語へと収束していく
「虚白ノ夢」
【著作権者】
てりやきトマト
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.03(15/05/16)

ハッカー達の昏く熱い生き様を描くノベルゲーム「CyberRebeat」

「CyberRebeat」

 「CyberRebeat」は、ハッキングを題材としたノベルゲーム。舞台は現代より少し未来の日本。主人公の“ヒロ”はネットカフェでその日暮らしをしつつ、バイトのライター仕事のため伝説のハッカー“Warlock”について調べていたが、情報元となった出版社で不可解な火災による死亡事故が発生。ヒロはネットカフェに集うハッカー達と共に事態の真相を探っていく。

 物語は時代と視点人物が移り変わりつつ進行。ネットカフェの一室に籠もり、コーラばかり飲んでいる黒ずくめの女性ハッカー“ミサ”をはじめ、登場人物は素性不明で癖のある者ばかり。立ち絵のないキャラクターやネット上でのみ登場するキャラクターも含め、オフライン・オンライン合わせて多くの人物達が、それぞれの信念にもとづいて共闘や対立したり、意外な繋がりを持っていたりと、群像劇としても見所のある作品だ。

 作中には実在するハッキング競技“CTF(Capture The Flag)”の大会や、企業や組織のサーバーへの侵入、成りすましで情報を聞き出すソーシャルハックとさまざまなハッキングシーンが登場。ハッキングの様子は“前哨戦”とも言える既存の攻撃ツールの使用、攻撃対象サービスのバージョンチェックから始まる脆弱性調査、エクスプロイトコードの作成……などなど、真に迫ったものとなっている。

 派手な3DCGや画面中を覆うアラートといった古典的なハッキング描写とは一線を画しているが、それだけに地味になりがちなところを、攻防それぞれの心理状態やチーム内での連携を巧みに描き、手に汗握るエンターテイメントに仕立て上げているのが本作の魅力。ここぞという決め所では疾走感あふれるユーロビート系のBGMもシーンを盛り上げる。

 中盤以降は、行方知れずの家族を探すためハッキングの世界へ身を投じた少女に焦点が当たり、過去から続く因縁との対決が描かれる。自身も後ろ暗いところのあるハッカー達が、しかし日陰者だからこその矜持を持って巨大な陰謀へと立ち向かっていくさまや、一度は散り散りになった仲間達が集う展開は圧巻。プレイ時間は10時間以上とボリュームのある作品だが、徐々に加速する物語に引き込まれていくことだろう。

 なお本作はUnity製で、GitHubにてソースコードも公開されている。

ネットカフェ“リトルガーデン”に集う訳ありな人々。主人公のヒロはここを拠点に活動していく
ハッキングの描写はある意味地味だがそのぶん現実味があり、セキュリティ技術に興味があれば内容を読み解いていくのも面白い
物語は複数の時代にまたがり、やがてある陰謀を軸に収束していく
「CyberRebeat」
【著作権者】
E.N.Nach
【対応OS】
Windows Vista/7以降(Mac版あり)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2.0

筑波大学が舞台のノベルゲーム「Campus Notes vol.2」

「Campus Notes vol.2」

 「Campus Notes vol.2」は、筑波大学を舞台にしたノベルゲーム「Campus Notes」シリーズの第2作。「Campus Notes」は筑波大学に三年次編入した“桐葉悠太”を主人公に、大きく3つに分かれる物語を3作にかけて描くシリーズ。本編はvol.2が無償公開で他2作は有償だが、作者によると各作品のストーリーは独立しておりどの作品からプレイしても問題ないとのこと。そのほか、第1作のキャラクターによる番外編も無償公開されている。

 vol.2では、悠太は軽音楽サークルのバンド“ココアシガレット”へ所属することに。本作は筑波大学の学生や卒業生からなる同人ゲームサークルが制作しており、大学とその近辺の施設や食事処が実名で登場。ご当地感あふれる背景や描写のもと、悠太と友人、そして3人のヒロインという仲間達によるキャンパスライフが賑やかに描かれる。

 その一方で、筑波大学のコンピューターで構築されたグリッド上にAIを持つアンドロイドが登場するなど、SFや超自然を取り込んだ世界観も特徴。先端的な教育・研究機関という設定を活かした多分野にわたる蘊蓄も散りばめられており、知的好奇心も刺激される内容だ。

 とはいえ堅苦しい話では全くなく、個性的なバンドメンバー達による軽妙な掛け合いが楽しい作品。また、ヒロインごとにシナリオが分岐する後半では、それぞれの事情を抱えたヒロインと、優しい性格ゆえにもう一歩を踏み出せない悠太が少しずつ距離を縮めていく、微笑ましい恋愛模様も見所となっている。

 ココアシガレットの“宿敵”とも言える存在との対峙などもあり、とくにヒロインのひとり“雪丸四駆”のシナリオでは、四駆を守るため一丸となって事件へと立ち向かう熱い展開も。「Campus Notes」は3作品合わせて、筑波大学にある9つの学群に対応する10人のヒロインが登場するのも特徴だが(理工学群のみ理学と工学から1人ずつで計2人)、本作に登場する3人もそれぞれ異なる魅力があり、プレイ時間は約10時間とボリューム的にも充実した作品となっている。

姉の背中を追って筑波大学に編入したものの目的を見失っていた悠太は、その姉からサークルに入ることを勧められ、軽音楽サークルのバンド“ココアシガレット”へ所属することに
ヒロインのひとり“雪丸四駆”。子供のような無邪気さと理路整然さが入り交じった口調が特徴だが、この喋り方にも秘密があるようで……
シリーズ第3作「Campus Notes : forget me not.」の体験版も同梱。こちらでは“悠太がサークルに入らなかったルート”が描かれる。同人ノベルゲームでは珍しいフルHDサイズの画面も目を惹く作品(設定によりフルHD未満の解像度にも対応)
「Campus Notes vol.2」
【著作権者】
4th cluster
【対応OS】
Windows Vista/7/8
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.2.1

多視点サスペンス・アドベンチャー「雨雲」

「雨雲」

 数年にわたって各地で発生する女性失踪事件を、犯人と事件に巻き込まれる人々、その両面から描いていくサスペンス・アドベンチャーゲーム。物語は章構成になっており、章ごとに舞台と主な登場人物が変化。一見、それぞれ繋がりがないように見える物語が、ある人物を軸として繋がりを持つことが徐々に明らかになっていく。

 過去に起こった最初の事件が描かれる章では、犯人がとある妄執に取り憑かれることになった原因が陰惨なまでに描かれる一方、被害者側が抱えていた事情や“事件の瞬間”の混乱と恐怖が別視点で描かれるなど、多視点により深みを増す物語を楽しめる。犯行シーンでは被害者の背後からすり寄っていく犯人の様子などがアニメーションで演出されるのも見所だ。

 選択肢による分岐や、刑事の立場で捜査を進めるパートもあるが、ゲームとしては隠された真相を見つけ出すタイプではなく、プレイヤーにとっては自明の犯人が少しずつ追い詰められていく様子を追う、いわゆる倒叙物に近い構成。同時に、犯人に目を付けられた女性が無事生き延びられるかどうかをハラハラしながら見守る緊張感も醍醐味となっている。

 捜査パートはそれまで読んできた物語の内容から必要な情報をピックアップする形で、難易度は低め。プレイ時間は2時間程度と内容的にもボリューム的にもTVの2時間サスペンスドラマを彷彿とさせるもので、短編ながら余韻を感じさせる、悲喜こもごもの人間模様が印象深い作品だ。

序章で描かれる犯行シーン。被害者の背後から迫る犯人がアニメーションで演出され、画面に引き込まれる
第一章ではフリーターの“児島零時”を中心に、コンビニ店の同僚との交流が描かれる。一見平和に見えるが……
すべての始まりが描かれる第二章。重苦しい展開が続く
選択肢や捜査パートが入るようになる第三章。事件の解決はプレイヤーの手に委ねられる
「雨雲」
【著作権者】
サム 氏
【対応OS】
Windows 98/Me/2000/XP/Vista/7/8
【ソフト種別】
フリーソフト(犯罪、暴力描写につきR15)
【バージョン】
1.04(15/04/22)

(中村 友次郎)