クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
キャラクターは保護されるのか
~第2章:著作権で保護される作品を教えて!~
2016年7月20日 07:00
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“アイデアと表現の違い”の続きとして、今回は“キャラクターは保護されるのか”というテーマを解説する。
アイデアと表現の違い
あれ? だとしたら、物語に登場するキャラクターってどうなるんですか。
『ジャングル大帝』も『ライオン・キング』も、ライオンが主人公なんですよね?
そうですね。
主人公はどちらもパッと見てライオンだとわかる造形ですが、あまり似ていません。
『ジャングル大帝』の主人公は名前がレオ。
全身が真っ白で、耳の先としっぽの先が黒いのが特徴です。
一方、『ライオン・キング』の主人公は名前がシンバ。
全身は薄黄色で、お腹側はやや白い。目の周囲はやや暗い色で隈取りのようになっていて、耳の内側の縁が黒いのが特徴です。
同じライオンでも、結構外見が違うんですね。
それが独創性やオリジナリティってやつですか。
そう。性格も違います。
子どものころのレオは臆病者ですが、シンバはやんちゃ者。
生い立ちも違います。
レオは母親が動物園に移送される途中で生まれてすぐに引き離されてしまいますが、シンバは両親からの愛情を受けスクスクと育ちます。
ところが、レオやシンバといった『名前』や、キャラクターの『性格』や『基本設定』は、物語を構成する上では重要な要素ですが、実は著作物ではないとされています。
「ポパイネクタイ事件」平成9年7月17日 最高裁判決文
一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。
※出典:民集第51巻6号2714頁
ええっ! そうなんですか?
だから、両親から引き離されたちょっと臆病な子どもライオンで、名前がレオというキャラクターが登場する小説を書くことは、著作権法的には問題ないのです。
法律論はそうなのですが、現実にはしばしば、読んだ側がどう受け止めるか? が問題になります。
仮に法的に問題がなかったとしても、有名な作品のキャラクターを借りるのは、原作ファンの反応が怖い気がしますね。
過去の名作に尊敬の念を込めて、あえて似たような設定や演出をするような場合もありますね。
リスペクトやオマージュなどといいます。
ただ、日本の場合、元作品への愛が感じられないと、単なるパクリだと袋叩きにされがちです。
ああ、僕も愛が欲しい……。
コンビニで買えますよ。
ほんとに!?
これはスピッツの楽曲『運命の人』へのオマージュです。
売ってないんだ……。
298円です。
売ってるの!?
これは西尾維新さんの小説『偽物語』へのオマージュです。
次回予告
今回の続きとして次回は“タイトルや見出しは著作物じゃない”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!