クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
ガレージキットの当日版権って何
~第5章:先生……二次創作がしたいです~
2016年8月25日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“替え歌って面白い! けど”の続きとして、今回は“ガレージキットの当日版権って何”というテーマを解説する。
ガレージキットの当日版権って何
この間、ガレージキットの展示即売会『ワンダーフェスティバル』を見に行ってきたんですよ。
おお、立体造形にも興味があるのですか。
造る方じゃなく、見る方の興味ですけどね。
そこでちょっと気になったことがあって。
『版権おりませんでした』って書き殴られた張り紙だけ貼ってあるブースがあったんですけど、あれって何だったんだろう?
うーん。ちょっと長い説明になります。
まず、漫画やアニメの登場キャラクターをフィギュアやぬいぐるみなどの立体造形にして販売するには、権利者の許諾が必要です。
これを一般に『商品化権』といいます。
いわゆるキャラクターグッズですか。
そうです。
一方、ワンダーフェスティバルが開始された当初、アマチュアモデラーによるガレージキットは無許諾で展示販売されていました。
二次創作同人誌と同様に、ファン活動として黙認されていたのです。
ふむふむ。
ところが、ワンダーフェスティバルの規模が大きくなるにつれ、正規に商品化権を取得して権利者にロイヤリティを払っているメーカーと、無許諾のアマチュアディーラーとの摩擦が大きくなってきました。
そこで導入されたのが、当日版権システムなのです。
どういうシステムなんです?
権利者に事前申請をして、イベント開催当日のみ、会場内限定で展示販売の許可を得るシステムです。
ほぼ完成状態の原型画像を窓口のワンダーフェスティバル実行委員会へ送付して監修してもらい、問題なければ『版権がおりた』ということになります。
ロイヤリティが必要になる場合もありますね。
あ、もしかして申請してもダメな場合があるわけですか。
そういうことです。
審査が厳しい権利者もいれば、緩い権利者もいます。作品によっても異なります。
また、過剰な性的表現など公序良俗に反すると判断された場合は、実行委員会の権限で出品不可になります。
せっかく造ったのに、許可がおりないって悲しいですね。
審査する側も大変なので、すべて一律で許諾しないとか、逆に申請のみの事前審査なしで許諾するとか、別な選択肢もありますがいずれも一長一短です。
まあ、何事もちゃんとやろうと思うと、面倒なものですよ。
ぐぬぬ……。
次回予告
今回の続きとして次回は“〈コラム〉TPPでコミケ終了?”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!