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【第5回】
レジストリを知ることとは?
レジストリの編集テクニックを知る前にこれだけは知っておこう
(02/06/17)
前回までで、レジストリの概念・危険性・バックアップの必要性と、バックアップデータの作成と復元の方法を学んできました。レジストリのことが一通り理解できたところで、レジストリの編集について触れていこうと思います。まず、レジストリをユーザーが編集することを念頭に置き、パソコン中級者ではなく“レジストリ中級者”が、一体何を知っているべきなのかを考えてみることにしましょう。
レジストリ初心者とレジストリ中級者の違い
パソコン初心者やレジストリ初心者は、レジストリに対していくつかの思い込みがあります。去年の末、私のホームページ上で「レジストリに関して、どのような印象をもっているか」というアンケートを実施したところ、「レジストリは怖いものであり、レジストリそのものが危険な存在である」とか、「レジストリを編集すれば、Windows自身やWindows上でありとあらゆる目的が達成できる」というような回答が数多く寄せられました。なかには、レジストリの編集を通して、特定のソフトのバグを修正してほしいという要望までありました。
前にも述べたとおり、レジストリが危険といわれるのは、その存在そのものではなく、扱い方や、万が一壊れた際の被害の大きさによるものだということは、もう分かったと思います。そしてレジストリに保存されているデータが、Windows自身やWindows上で利用するソフトやハードの設定そのものであることも、もう知っていますね。ですから、レジストリを編集して実現できることも、Windows上で利用するハードやソフトの設定変更などの範囲に限られるということも想像できると思います。
レジストリ中級者は、レジストリが危険といわれる実際の理由や、レジストリ編集によって得られる効果を知っているからこそ、中級者なのです。また、レジストリが壊れてしまったときの復旧策や、レジストリが壊れたときのために事前にやっておくべきバックアップの方法を知っています。
つまり、レジストリ初心者とレジストリ中級者の大きな違いは、レジストリ初心者が「空想の範囲」でしかレジストリを知らないのに対し、レジストリ中級者は「現実のレジストリの仕組みと運用方法」を理解できているということだといえます。
レジストリ中級者になるためには?
では、レジストリ中級者になるために、レジストリ中級者は何を知っているべきなのかを考えてみたいと思います。ちなみに私自身は、次のことを知っている人を“レジストリ中級者”と呼ぶことにしています。
それではそれぞれの項目の意味を解説していきましょう。
1.レジストリの存在意義と、レジストリの抱える問題点を知っている
まずは、レジストリが「ハードやソフト、Windowsの設定情報をまとめたデータベースである」ことを知っておかなければなりません。また、ただ「怖い」「危険」といっているだけではなく、具体的に何が怖くて何が危険なのかを知っておく必要があります。これについては第1回目で説明しましたね。
2.レジストリに関わる問題が発生したときに、その対処方法を知っている
まずは、レジストリのバックアップと復元方法を知っておく必要があります。レジストリのバックアップデータを作っておけば、レジストリが壊れてWindowsが起動しなくなったり、起動しても動作が不安定になってしまったときにレジストリを復元することができます。それぞれのOSでのレジストリバックアップと復元の方法については、第3・4回で触れています。
3.レジストリの構造を知っている
Windowsがレジストリをどのように管理しているかを把握しておくことによって、レジストリの編集がしやすくなります。このことについては第7回以降で学んでいく予定です。
4.編集してもよいレジストリと、編集してはいけないレジストリが分かる
編集してよいレジストリは、レジストリ全体のごくわずかです。また、それぞれのレジストリを変更した場合に何が起きるかを知っていないと、レジストリを編集する意味はありません。それどころか、分からない箇所を編集してしまうと、Windowsが起動しなくなることがあるというのは第2回でも述べたとおりです。何が書かれているか分からない部分は、手を出してはいけません。言い換えれば、レジストリの大部分は編集してはいけない部分ということになります。
5.レジストリ編集は、編集した人の責任で行われることを知っている
レジストリの編集は、編集する個人の判断で行われる行為であり、誰かから強要されて編集するものではありません。したがってレジストリ編集は、十分な知識をもった人が行うか、そういう人に習いながら自らの責任で行う必要があります。また、レジストリを編集して壊してしまった場合、誰も責任を取ってはくれません。レジストリを誤って編集してWindowsが起動しなくなった場合、失ってしまったデータは元には戻りませんし、Windowsやソフトの再インストールも自分で行わなくてはなりません。このことは今後実際にレジストリを編集していくときにも十分理解しておいてほしいポイントです。ですからレジストリ編集の前には、第3・4回を参照して、レジストリのバックアップデータを必ず作るようにしてください。
ここで注目してほしいのは、レジストリ中級者は「この箇所を編集すれば、こんな効果が現われる」ということをレジストリすべての項目について知っているわけではないということです。しかし「分からない箇所についてはむやみに編集してはいけないこと」は知っていますし、仮に誤って編集してしまった場合には、誰も責任を取ってくれないことを知っているからこそ、復元方法も理解しているのです。
したがって、レジストリの中級者だからといって、Windowsやソフトを利用していてほしいと思った機能を追加できるというわけではありません。レジストリを編集するとだいたいどんなことができるかを知っているにすぎないのです。
レジストリ中級者の心得を理解したところで、次回は実際にレジストリの中身を見ることにしましょう。
(矢吹 拓也)