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開催直前!Maker Faire Tokyo 2026キックオフレポート:レゴ製のキャッシュレス自販機、猫が乗る2輪バイク、輪ゴムで100m走るクルマなどなど………
「まだ歩けません」「仲間を探しに来た」――熱量あふれる“作りかけ”の祭典
2026年9月3日 16:20
2026年9月5日(土)と6日(日)の2日間、「Maker Faire Tokyo 2026」が有明GYM-EXで開催される。
「Maker Faire」(メイカーフェア)とは、電子工作やデジタルファブリケーション、DIY全般など、高度な技術を要するものから誰でも手作りできるものまで、ものづくり全般に興味のある「メイカー」と呼ばれる人たちが、自分たちの作品を持ち寄り、展示し、来場者と交流するイベントだ。
それに先立つ2026年8月1日、キックオフイベントが開催された。希望した出展者が集まり、Maker Faire Tokyo 2026で展示する予定の作品を持ち込んだり、ライトニングトークで自らの活動を紹介したりするなど、メイカー同士の交流が行われた。
本稿では、このキックオフイベントで見ることができた作品を紹介する。なかにはまだ完成していないものもあったが、本番の開催までには急ピッチで仕上げてくるはずだ。気になる作品があったら、ぜひ会場へ出かけ、その目で確かめてほしい。
会場に持ち込まれた作品
まずはキックオフ会場に実物が持ち込まれ、実際に動く様子を見ることができた作品から紹介したい。
レゴ製のキャッシュレス自販機 【Tsubasa】
Tsubasaが展示していたのは、レゴブロックで組み上げたキャッシュレス決済式の自動販売機。本体の外装から内部の払い出し機構まで、構造物はすべてレゴで作られている。制御にはRaspberry PiとM5 Atom Liteを使用。M5 Atom Liteは親指の先ほどのサイズの小型マイコンモジュールで、Wi-Fiを内蔵しており電子工作でよく用いられる。
使い方は、本体に表示されたQRコードをスマートフォンで読み取ってWebページにアクセスし、そこで決済して商品を選ぶというもの。すると販売機からチロルチョコが出てくる。レゴという身近な素材で組まれた見た目と、スマホ決済という現代的な仕組みの取り合わせが面白い。詳しい構成は制作者のWebページで公開されている。今回がメイカーフェアへの初出展だという。
飲酒ペースが分かるIoTコースター、IoTかるた、猫バイク!【メイカースペースKM1ユーザー会】
メイカースペースKM1ユーザー会は、川崎の東芝本社内に設置されたメイカースペース「Creative Circuit メイカースペースKM1」を利用する有志によるグループだ。仕事とは関係なく、それぞれが思い思いに作ったものを持ち寄って展示している。企業のなかにこうした場があり、そこに集まった人たちがメイカーフェアに出てくるという構図は、近年のメイカーフェアでたびたび見られるものになってきた。
会場で目を引いたのが、猫のぬいぐるみが乗った赤いバイクだ。コントローラーによってリモートで走行するもので、前後の2輪で走り、ステアリング時には2輪が同時に舵角を取るだけでなく、乗っている猫が体重移動までする。重心移動による操作を効果的に行うため、猫にバッテリーを背負わせて、あえて重心を高くしているのだそうだ。Maker Faire Tokyo 2026の会場では、TV番組『魔改造の夜』(NHK)に出演経験のあるメイカーによるレースイベント「魔改造1~2輪耐久レース:自作モンスターで3分間爆走周回せよ」に参加予定とのこと。
同会はこのほかに、内部に荷重センサーを搭載したIoTコースターも展示していた。グラスの中身の減り具合と持ち上げた回数を荷重センサーで検知し、そこから飲酒量や滞在時間、飲んだペースといった「飲み方」を推測するというもの。実際にある飲食店で試験的に導入しており、他のお店でも導入する話が進んでいるという。
もうひとつが「IoTフォントかるた」。フォントベンダーのダイナコムウェアが発売した「フォントかるた」のカードにICタグを内蔵し、読み取ることで正解かどうかを判定してくれる。昨年も展示していたが、今回はスマートフォンアプリ版を開発してバージョンアップ。読み札(フォントの特徴を解説する文章)の読み上げと、画像認識による正解・不正解の判定ができるようになった。読み上げにはAI音声を利用しており、ずんだもんなどから選ぶことができる。
現実と仮想空間がリンクする球体ロボ【omicro】
omicroが展示したのは、球体ロボット「omicro Flux」と複合現実アプリ「Boundary Blur」による、拡張現実を体験できるデモ。Maker Faire TokyoやMaker Faire Kyotoなどで過去にも展示してきたものだが、改良を重ねてよりスムーズに、より多くのことができるようになっている。
今回はロボット側を改良し、運動能力を向上させたという。球形であるがゆえに外部の影響を受けやすく、アプリ上での操作や仮想空間内の要因による動きと、現実のomicro Fluxの動きとの間にズレが生じやすい。そこで、正確に動いて正確に止まれることを目指し、そのズレを最小化することで現実と仮想空間がリンクする感覚を高めようとしたのだそうだ。
M5Stackを使ったオリジナルシンセサイザー【PikoPiko Factory】
PikoPiko Factoryは、オリジナルのシンセサイザーを開発しているメイカーフェア常連チームのひとつ。キックオフで展示していたのは、M5Stackをコアに据えたシンセサイザーだ。M5Stackは小型のディスプレイやボタンを一体化した開発モジュールで、これも電子工作の定番として広く使われている。キーボード部分には自作PCキーボード用のキートップ(Shiftキー)とキースイッチを流用しており、従来使っていたタクトスイッチと比べて複数キーの同時押しがしやすく、入手性も良いのがメリットだという。
ロボットや車、ドローンなどを作れる学習用マイコンボード【TUTものづくりサークル】
TUTものづくりサークルは、豊橋技術科学大学でものづくりが好きな学生が集まったサークルだ。展示していた「Turtle Pico」は、Raspberry Pi Picoを利用した学習用マイコンボード。USB Type-Cポート、オーディオ出力、microSDカードスロット、モーター制御など、さまざまなインターフェイスを搭載している。拡張性に優れており、このボードにデバイスを接続していくことで、ロボットや車、ドローンなどを組み立てることができるという。
ロボットをリアルタイムでデジタルツイン化、立ち上がらせるのも一苦労?【Meridian計画】
Meridian計画は、コンピューターとロボットをリアルタイムでデジタルツイン化するシステムを、安価に実現しようという取り組み。
数百円で手に入るサーボモーター「SG90」のような小型のものから、人が乗れる大きさのロボットまで、同一のシステムで動かせるのが特徴だ。デジタルツインとは、現実のモノや空間を仮想空間上に写し取り、両者を連動させる技術を指す。展示は2つの予定で、コントローラーを操作して仮想空間内のロボットを立たせる物理パズルと、実際に作れるロボットを仮想空間上で戦わせる新作ゲーム。
前者はキックオフイベント会場で展示を行っていた。ロボット型コントローラを操作して、仮想空間内のロボットを立たせるには、仮想空間内でのロボットの重量、重心の位置、地面などとの摩擦を推測し、ロボットコントローラを介して画面内のロボットに物理的に適切な動きをさせないと、立ち上がらせることができない。なかなかの難易度で、取材中に見ていた限りでは一度で立たせることができた人はいなかった。
toioで作った「タケコプター」?【ソニー・インタラクティブエンタテインメント】
ソニー・インタラクティブエンタテインメントでは、同社が取り扱うプログラミング学習ロボット「toio」を展示。手のひらに乗るキューブ型のロボットで、専用のカードの上に置くと、カードに印刷された目には見えない命令を読み取って動くというもので、小さな子どもでも遊ぶことができる。同社はこれまでにもMaker Faireに出展しているが、毎回新しいtoioの遊び方・楽しみ方を提案している。
今回のキックオフは、3Dプリンターで作った「タケコプター」風のアイテムにtoioを内蔵し、帽子に取り付けたベース部分に「ぐるぐる回る」という命令のカードを入れることで、toioを動力源にしてタケコプターが頭上でぐるぐる回り続けるというもの。3Dプリンターでなくても手近な素材で工作し、それにtoioとカードを組み込むことで、子どもでもさまざまな動く作品を作り出すことができることを示した。
SSDの中はこう動いている!中身が分かるキューブを展示【キオクシア】
キオクシアは、東芝時代から数えて13回目の出展になる。同社が毎年制作している同人誌は5冊目にあたり、キックオフの時点では「今頑張って編集中」とのことだった。また、会場には多色LEDが6×6×6の格子状に配置されたキューブが展示されていた。これは、SSD(に搭載されたNANDフラッシュメモリー)に記憶されたデータが消えていく様子を可視化したデモンストレーションで、OS上からのファイルの消去、フォーマット、完全消去などによって、SSD内部でどのような動作が行われているのか感覚的に理解できるものになっている。
「まだできていない」——本番へ向けた作りかけ
キックオフはあくまで本番の1か月前。ライトニングトークでは、完成前の状態を率直に明かす発表が相次いだ。
目標は4脚ロボットの製作!【RABBOT LABORATORY】
なかでも会場の笑いを誘っていたのが、RABBOT LABORATORYだ。自作のエアシリンダーと自作サーボバルブで位置制御する4脚ロボットの製作を目指すチームで、今回が3回目の参加になる。登壇者は「毎年、歩けてないけど歩けそうな動画で申請している」と前置きしたうえで、「まだ歩けていません」と明かした。
実際、キックオフに持ち込まれていたのも脚の部分だけだった。もっとも、その脚は着実に進化している。歩行のためには脚部にかかる荷重の測定が必要になるが、今回は足先に中空のゴムパーツを取り付けていた。見た目は猫の肉球のようで、ホースでセンサーにつながっており、荷重がかかると内部の空気圧が変化するのをセンサーで検知する仕組みだ。ただし精度にばらつきが出ることと、荷重がかかってから検知までにタイムラグがあることが課題で、別の方法も模索しているという。本番では1脚を動かす予定とのことだった。
車移動の『まだ着かないの?』を『もう着いちゃうの』に変える!【日産自動車 総合研究所 横浜ラボ】
日産自動車 総合研究所 横浜ラボが進めているのは、「僕の運転席」というプロジェクトだ。小さなハンドルを製作中で、こちらも「絶賛準備中」だという。目標として語られたのは、「車移動の『まだ着かないの?』を『もう着いちゃうの』に変えること」。「この小さなハンドルから新しい物語を始めたい」「ぜひ皆さんと一緒に物語を作っていけたら」という言葉で発表を締めくくっていた。
横浜ラボは日産社内でも「かなり変わったことをやっている」部署で、昨年は実車から取り出した信号に連動して動くミニカーを展示していた。
ハンドルやブレーキ、アクセルの操作に加え、ウインカーやドアの開閉までミニカー側が追随するというもので、デモでは「羽の生えたクルマ」を羽ばたかせてもいた。今年の小さなハンドルは、クルマと何かを連動させるというその延長線上にありながら、向きが逆になっている。信号を取り出す側ではなく、ハンドルを握る側から物語を立ち上げようとしているように見えた。なお横浜ラボ自体は昨年も出展しているが、「僕の運転席」というプロジェクトとしては初めての出展になる。
初出展組と、仲間を探しに来た人たち
ライトニングトークに登壇した29組のうち、8組が今回初めての出展になる。なかには、作品を見せること以上に、一緒に作る仲間を見つけることを目的に掲げる出展者もいた。
超小型衛星をみんなで打ち上げ!【ポケットキューブサークル】
ポケットキューブサークルは、今年1月に結成されたばかりのサークルだ。
5cm角の超小型衛星「ポケットキューブ」を製作して打ち上げることを目指しており、すでにSpaceXのロケット「ファルコン9」で再来年前半に打ち上げる契約が成立しているという。キックオフには実際のサイズのものを持ち込み、基板を自分たちで作っていることなどを説明していた。打ち上げにかかる費用は約600万円とのことで、こちらもメンバーと支援を募集している。
凧で空撮する「カイトフォト」【テザービジョン】
テザービジョンは、Maker Faire Tokyoにビジターとしても参加したことがなく、今回が初めての出展になるという。手がけているのはカイトフォトと呼ばれる空撮で、凧に360度カメラ「Insta360」を取り付け、高度150mほどから撮影する。1~2か月ほど前には、その映像がニコニコ動画で総合5位に入ったそうだ。キックオフには機材が大きく持ち込めなかったが、本番では現物を展示する予定とのことだった。
輪ゴム3本で100メートル以上を走る「ゴムワンカー」で大会を!【カナ】
カナが展示していたのは、輪ゴム3本で100メートル以上を走る「ゴムワンカー」だ。カーボンロッドと3Dプリンター製の部品で組まれており、重量は十数グラムしかない。これは、姫路科学館で2006年から開催されている「ゴムワングランプリ」というレースのための車両。輪ゴム3本で走るゴム動力車で走行距離を競うもので、カナは長年このレースに出場している。当初は木製だった車両も、参加者の技術力の向上とともに素材が進歩し、F1マシンのように先鋭化してきたという。
キックオフで展示していたのは、前回大会を受けて改良した車両だった。駆動する大型の車輪を2つから1つに減らして軽量化を図ったものだが、バランスが崩れて左右にぶれてしまい、ロスが多くなって失敗だったとのこと。一方で、レース自体は先細りになっている。最盛期には小学生が数十人も参加していたが、現在の出場者は数人程度で、このままでは休止の可能性もあるという。ゴムワングランプリを全国に広げるための仲間を探しに、メイカーフェアにやってきたのだそうだ。
おわりに
このキックオフイベントから、Maker Faire Tokyo 2026の本番までは約1か月。学生なら夏休みだが、社会人にとっては決して十分な時間ではないかもしれない。そのなかで、未完成の部分を仕上げたり、より完成度を高めたりするだけでなく、なかには新たなアイデアで新作を作り上げるメイカーもいるかもしれない。
また、キックオフに参加し、本稿で紹介したメイカーと作品は、Maker Faire Tokyo 2026に集まる出展者と作品のうち、ごく一部に過ぎない。今回は約280組の出展者が参加を予定しており、短い時間ではすべてを見ることはできないほど、さまざまな展示であふれている。
このレポートで紹介した作品や、まだ未完成だったものが、実際にどう動くのか、はたまた完成させることができたのか、ぜひ会場で見届けてほしい。












































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