セーブデータ間でアイテムを共有!?ループで運命を変えていく現代和風RPG「並行往来記」体験版

「並行往来記」体験版

3人の主人公のうちのひとり、鬼童の“でーじー”。気性の激しい性格だが情に厚い面も

フィールド移動はオートで進行。画面右上に表示されるシンボルの色が青→緑→黄→赤と変わっていき、赤になると敵とエンカウントする。エンカウント頻度の設定次第では1ステージで一度もエンカウントしないこともある

　「並行往来記」は、女の子の姿をした3人の妖怪が主人公でマルチシナリオ型の現代和風RPG。Webブラウザー対応のフリーゲームとして公開されており、ゲーム投稿サイト“RPGアツマール”にてプレイ可能。開発中の作品で、体験版として公開されている。

　本作の主人公は、鬼童の“でーじー”、硯ノ精の“はこべ”、火間蟲入道の“あわもりそう”。物語は彼女達が、道具を過去や未来へ送ることができる“魑魅の壺”を入手するというプロローグから始まる。以降は主人公ごとに用意されたシナリオを任意に選んでプレイできるようになる。

　本作のユニークな点は、すべてのセーブデータ間でアイテムを共有していること。周回プレイ時の引き継ぎに限らず、いま現在並行でプレイしている別のシナリオ間や、同じシナリオの過去のセーブデータも含めて所持アイテムと装備内容が随時同期される。たとえばでーじー編で入手したアイテムをはこべ編で使うといったことも可能。また、特定のアイテムを入手することで物語の展開が変化する。

　これはニューゲーム時も同様で、フラグとなるアイテムを入手してから改めてゲームを開始すると、全く違う物語が始まることもある。そのほか、敵を倒すと経験値アイテムを入手でき、これもセーブデータ間で共有され、取得数に応じて自動で経験値が加算される。“強くてニューゲーム”ができるのはもちろん、ボス戦直前にセーブした後でレベルが足りないと感じたら過去のセーブデータや別のシナリオで経験値を稼ぐ、なんて荒技も可能だ。

　3つのシナリオのうち、でーじー編とはこべ編は“ステージ”として区切られた物語を追っていく内容。各ステージは導入パート、目的地へのフィールド移動、ボス戦といった構成だが、フィールド移動がオートで進行するのも特徴だ。“戦略方針”として敵とのエンカウント頻度を5段階で調整でき、こうした設定次第で1ステージは数分程度と非常にテンポよく進む。本作は進め方次第では始めからやり直しとなる場合もあるが、経験値共有とエンカウント頻度調整により、ループにより変化する物語をストレスなく気軽に楽しむことができる。

フラグとなるアイテムを入手することで、ニューゲーム時に全く異なる物語が始まることもある

さまざまな妖怪と戦いながら物語を進めていく。戦闘はターン制のコマンド選択型で、ターン経過により“夜”になると与ダメージが5倍、被ダメージが2倍になるという要素も

勝った妖怪からは勝者の権利として何かを奪えることがある。選べるのは1つだが、もう一度倒せば別のものを奪うこともできるので、これも繰り返しプレイのモチベーションになる

あわもりそう編では他のシナリオで入手したアイテムを使い、妖怪を召喚してパーティメンバーとすることが可能

　一方あわもりそう編は、さまざまなマップを選んで探索を行うフリーシナリオ的な内容。オート移動なのは同じだが、分かれ道でランダムに分岐する要素があり、ボスに到達して倒すと新たなマップが解放される。マップによってはなかなかボスに到達できず、プレイヤーが進行に介入する余地のないまま何度も周回することになるのは辛いところだが、その分、中身がランダムの宝箱からどんどん新たな装備品を入手することが可能。セーブデータを通じて、他のシナリオへ強い武器や防具を供給できるのはなかなか面白い。

　物語には主人公達の他にも多数の妖怪が登場。それぞれの目的や義によって主人公達と戦ったり仲間になったりと、賑やかな内容となっている。敵から武器を奪うのが趣味で容赦ない性格だが、情に厚い所もあり周囲から“姉さん”と呼ばれているでーじーなどキャラクターも個性的で、軽妙な味わいがある掛け合いの会話やオリジナルのキャラクターイラストも見所だ。

　タイムトラベルを題材とし、システムに組み込んだADVやRPGは定番ジャンルのひとつと言えるものだが、セーブデータがチェックポイントのような役割を果たし、別の時間や物語との間でアイテムを受け渡ししつつ試行錯誤を重ねるというプレイ感はなかなか新鮮だ。なお本作は前述の通り開発中の作品だが、独特のコンセプトは十分に体験することができた。完成に向けた今後のバージョンアップも楽しみな作品だ。