教えて!助けて!! Adobe先生

PCを開けない時間が「制作時間」に変わる! 思いついた落書きをスマホだけでビジュアル化できるAdobe Firefly モバイル版

無料の公式生成AIアプリでクリエイターのスキマ時間を有効活用してみよう

 本コーナーでは、アドビ製品に関するナレッジや活用法について、公式ブログ「Adobe Blog」の掲載内容をもとに、アドビの各スペシャリストより直伝していただきます。気になるトピックスはブログ本編もぜひチェックしてみてください。

 デザインのひらめきは、いつも突然やってきます。

 移動中の電車、カフェでの待ち時間、会議と会議のあいだ――そんな「PCを開けない時間」に限って、良いアイデアが浮かびませんか?

 メモ帳に文字だけ残しても、後で見返すと「これ、なんだったっけ?」となることもあったりして。

 そんな悩みに効くのが、ダウンロード無料で利用できる「Adobe Firefly」モバイル版です。

 スマホアプリの「Firefly」にAdobeアカウントでログインすれば、PCと同じ生成クレジットを使えて、生成した画像はクラウドに自動同期。帰宅後は、Firefly Web版やPhotoshopで、続きを仕上げることもできますよ。

 それでは「Fireflyモバイル版でスキマ時間をデザイン時間に変える新習慣」を一緒に試してみましょう。

スマホに指で落書きすることから始めよう

 あなたはいま、電車での帰宅中。

 ボランティアで関わる「秋のきのこ狩りツアー」のランディングページのビジュアルを考えています。

 ふと「切り株にたくさん生えたきのこを見上げている」という構図が浮かんだら、すぐスマホを取り出して「Adobe Fresco」などのお絵かきアプリを起動、指でざっくりと落書きしましょう。

 びっくりするかもしれませんが、こんなにラフな落書きで、メインモチーフの位置を決めるだけでOK。頭の中のイメージを書き起こすのが大切です。描き終えたら画像を保存します。

Fireflyモバイル版で落書きをリアルな画像に変える

 次にFirefly モバイル版を起動し、[テキストから画像生成]を選択して[一般]-[モデル]で[Firefly Image 4]を指定します。

 縦横比は[ワイドスクリーン(16:9)]を指定。

 コンテンツの種類は[アート]を指定します。

 [構成]タブから先ほど描いた落書き画像を追加し、強度のスライダーは中央に。この画像を追加することで、Fireflyに構図の意図を伝えることができます。

 ここまで準備できたら、短いプロンプト「ファンタジックな森の切り株からきのこが生えている」を入力すると、数秒で4枚の案が表示されます。

 気に入った構図のものを選んで保存すれば、第一段階は完了です。

AIと対話しながら構造化プロンプトを練る

 ここからは、質感やライティングを詰めるステップ。

 自分1人で長文のプロンプトをスマホ上で書き上げるのは大変なので、画像生成プロンプトの作成を支援してくれるAIを活用します。生成した画像をAIに見せながら、「足りない要素があれば質問して」などと伝え、会話を通して理想のイメージを詳細に言語化していきます。

 たとえば「クレイアニメーションのような質感で、温かい光を感じる世界にしたい」と伝えて、AIに最適な構造化プロンプトを組み立ててもらいましょう。

完成したプロンプトの例がこちら:

“Whimsical clay-animated scene: ten hand-crafted clay mushrooms (3 large, 7 small) glowing with bright warm light, perched on moss-covered tree stumps in an enchanted pastel forest. Dominant pastel orange palette with yellow, lavender, and red accents. Handcrafted clay texture with subtle grain, soft volumetric back-light, fairy-dust sparkles swirling in the air, dreamy bokeh background. 16:9 cinematic wide shot from a low angle, natural path receding into depth, blank right 30 % of canvas for headline text. High detail, shallow depth of field, stop-motion vibe, 3-D render quality.”

 こうして構造化されたプロンプトを手に入れたら、もう一度Fireflyで生成します。今度は1度目に生成された画像を参照画像として使い、より高精度なビジュアルを出すのです。

クレイアニメのような質感の画像が指先で完成

 生成結果は、落書きの構図を保ちながら、柔らかい光に包まれたクレイアニメ風の世界。頭の中にあった「温かく夢のあるビジュアル」が、スマホ上で完成します。

 イメージが少し違うと思ったら、プロンプトを再調整。スマホだけで微調整を重ねていけます。

 さらに[生成塗りつぶし]機能を使えば、要素の追加も可能。画面の中央をなぞって「キノコを見上げている小人が向こう向きで2人いる」と入力すれば、自然な構図でキャラクターが登場。物語性のあるビジュアルに進化します。

スマホからPCへ。スムーズなワークフロー

 電車内で約20分の作業。ここまでで、LPのメインビジュアル案がほぼ固まりました。

 帰宅後、Firefly Web版を開けば、保存済みの画像がすぐ呼び出せます。Photoshop Web版でタイトルやキャッチコピーを加え、完成形に仕上げることも簡単に可能です。

スキマ時間が「制作時間」に変わる

 Fireflyモバイル版を使えば、PCを開かなくてもデザインが進みます。筆者は30分ほどで3~4案を生成し、チームに送ってフィードバックをもらうという作業をよく行なっています。

 「作業できない時間」が「発想を形にする時間」に変わり、もはやスマホはただの連絡ツールではなく、持ち歩けるデザインノートになりつつあります。

 なお、Fireflyの利用には生成クレジットが必要です。残数の確認方法やFAQは、アドビ公式サイトをチェックしてみてください。

Adobe 生成クレジットに関するFAQはこちら

著者プロフィール:黒野 明子

デザイナー/講師/Adobe Community Evangelist 2017-2024

1995年、武蔵野美術大学短期大学部専攻科グラフィックデザインインコース修了。ファッションカメラマン事務所、広告系デザイン事務所、Web制作会社勤務を経て、2003年から2018年までフリーランスとして活動。2019年より事業会社勤務のデザイナーとなり、現在は、エンタメ系サービスのUXとUIのデザイン、サービスプロモーション関連のグラフィック制作などに従事している。

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