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戦うか、戦わないか。判断が行く末を決めるレトロ風RPG「UNDERTALE」
遊び始めから違和感がくすぶる、重く不可思議なストーリーも秀逸
2021年8月6日 10:35
今回紹介する「UNDERTALE（アンダーテイル）」は、Toby Fox氏が開発したRPG。2Dグラフィックスによるレトロな雰囲気のあるインディーゲームながら、世界中で話題を呼んだヒット作だ。
過去に人間はモンスターと戦い、勝利した人間が魔法の力でモンスターを地底に閉じ込めた。主人公は、その地底世界に迷い込んでしまった1人の子供。再び地上へと戻るため、モンスター達が巣くう地底世界を旅することになる。
見た目はレトロでスーパーファミコン世代のゲームを思わせる。音楽もFM音源っぽく、筆者はPC-9801の頃のPCゲームを思い出した。世界設定もまあまあ他でもありそうなものだし、懐かしのコマンドRPGを楽しみたい人に向けたゲームなんだろうな……という印象を、未プレイの人は受けるだろう。しかし実際のプレイ感は全く違う。
主人公は遺跡にある穴に落ちた後、トリエルと名乗るモンスターと出会う。モンスターと言っても言葉は通じるし、主人公のことを優しく気遣い、自分の家へと連れて行ってくれる。そこには主人公の部屋が用意されていて、美味しいパイを食べさせてくれる。そして主人公に「新しい家族ができて嬉しい。あなたと暮らせて嬉しい」と言う。
これはゲームをスタートしてしばらくの話だが、どうにも気味が悪い。人間界ではない謎の世界で、自分のことを助けてはくれているのだが、人間界に送り返してくれるわけではなく、ずっと一緒に暮らそうと言うのだ。地底の世界も、トリエル自身も、意味がわからない。しかも主人公は子供なのだ。決して素直に受け入れられない気持ち悪さが漂い続ける。
もちろん主人公がここで暮らし続けるわけもなく、地上に戻るべく進むことになるのだが、その先も何があるのかわからない世界で翻弄されることばかり。物語がどう展開していくのか読めないし、主人公の行く末が気になってしょうがない。
ゲームの手触りも特殊だ。2Dグラフィックスの世界で主人公を上下左右に操作して歩くという基本システムはシンプルだが、スイッチなどを作動させないと先に進めないパズル的な要素があちこちにある。
敵との戦闘では、攻撃して倒すほかに、会話して相手をなだめ、逃がすという選択肢も取れるようになっている。迷い込んだ子供が着の身着のままでモンスターと戦うというのも変な話なので、世界観にもマッチしている。会話がうまくいけば敵を逃がすことができるし、何度も会話しなければならないこともある。
会話の間も敵はこちらを攻撃してくる。攻撃を受けると、白いフィールドとハートマークが表示される。フィールドには様々なものが飛び交い、プレイヤーはハートを上下左右に動かして飛んでくるものを避ける。シューティングゲームの弾避けの感覚で、一定時間逃げきれば攻撃が止まり、飛んでいるものに当たってしまうとHPが減る。
世界観やビジュアルのイメージから、特定のゲームを連想する人も多いと思う。そういう形で本作に興味を持ってもらえるのも一向にかまわない。
ただ本作を遊んでみた感触が、かれこれ40年はゲームをプレイしてきた筆者にとっても、妙に新鮮なのだ。主人公以外に人間が出てこない世界観、敵を倒す必要がない戦闘システム、そして倒したら倒したで「殺したこと」をことさらに強調するストーリー展開。それらの気の重い選択を、ただ迷い込んだだけの小さな子供に課すことの気持ち悪さ。
全編ホラーで思いきり気持ち悪いというのではなく、喉に小骨がつっかえたような気持ち悪さがずっとあるようで、実にもどかしい。だがそれも本作の魅力なのだと思う。序盤だけでもプレイしてもらえれば、小骨が取れるまで遊び続けてしまうこと間違いなしの、不思議な魅力を放つ作品だ。
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