#モリトーク
第46話
Operaの独唱が止む日
(2013/2/19 10:27)
Opera社が先週、自社製レンダリングエンジン“Presto”の開発を止め、「Google Chrome」や「Safari」なども採用する“Webkit”へ切り替えるという、衝撃的な計画を発表した。「Opera」の特長はレンダリングエンジンを含めた、その独自性であり、ほかの主要Webブラウザーと比べても個性はピカイチなため、その衝撃度は「Opera」の開発が終了する以上のものがあるかもしれない。
これまでの「Opera」は、W3Cが提唱するWeb標準規格を忠実にサポートしつつも、タブ切り替え機能やマウスジェスチャー機能、スピードダイヤル機能などをいち早く取り入れたほか、モバイル向けの製品もスマートフォンが定着する以前から公開されている。今改めて考えると、「Opera」は独自性が高いのではなく、先進的だったのだろう。
現在フリーソフトである「Opera」は、もともと有料ソフトであったことを覚えているだろうか。有料ソフトであっても、ツールバー上に広告を表示する代わりにフリーソフトとして利用することが可能だったため、2003年には窓の杜ライブラリの年間ダウンロード数でトップを獲得するほど、「Opera」の人気は絶大だった。もちろん有償版のユーザーも多く、日本での販売権が(株)トランスウエアから当時の(株)ライブドアへ移行した2004年5月には、それが大きな物議を醸した。そして2005年9月、「Opera」は完全無料化し、その後も順調に進むと思われた。
ところが、「Google Chrome」が登場した2008年頃から雲行きが怪しくなる。「Google Chrome」がシンプルかつ高速動作な路線を打ち出したことで、ほかのWebブラウザーもそれに追従した結果、主要なWebブラウザーはコモディティ化し、個性が売りだったはずの「Opera」もその波に飲み込まれてしまう。「Google Chrome」と「Firefox」が“高速リリースサイクル”によってスピード感と露出度を高める一方、拡張機能の実装が主要なWebブラウザーのなかで一番最後になるなど、「Opera」はマイペースを貫く。このあたりの決断が中途半端だったため、変化の速いインターネットの世界で「Opera」は遅れをとってしまったのだろう。
Opera社は今回、レンダリングエンジンの移行に伴ってWebkitを選択したが、「Firefox」のレンダリングエンジンである“Gecko”でもよかったはずだ。その理由を推測してみると、Opera社の発表にも『スマートフォン向け製品から始める』とあるように、やはりWebkitがモバイル環境で圧倒的なシェア率を誇るからであろう。同じくデスクトップ向けとモバイル向けの両方が提供されている「Sleipnir」も昨年、メインのレンダリングエンジンをWebkitへ切り替えた上で、Geckoを非搭載にしている。
筆者個人の希望を言えば、Opera社にはGeckoを選んでほしかった。というのも、「Firefox」のMozillaは今後、Geckoをベースにした“Firefox OS”と呼ばれるモバイル環境をリリースする予定であり、もしOpera社がGecko陣営についていたら、スマートフォン市場はもっとおもしろいことになったはずなので、少し残念でもある。