週末ゲーム

歴史シミュレーションゲーム「流雲三国志」

豊富なパラメーターを有する本格派歴史SLG

(12/04/27)

タイトル画面

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、三国志の世界で覇権を競うシミュレーションゲーム「流雲三国志」を紹介しよう。

三国志の世界で覇権を競う歴史SLG

200人を越える人物からプレイヤーキャラクターを選ぶ。激動の時代を制することができるか?200人を越える人物からプレイヤーキャラクターを選ぶ。激動の時代を制することができるか?

人物情報で全国の人物の所在やステータスが確認できる。まずは情報を把握しよう人物情報で全国の人物の所在やステータスが確認できる。まずは情報を把握しよう

 「流雲三国志」は、中国の三国時代の人物となって大陸の統一を目指す歴史シミュレーションゲーム(SLG)。フリー版と有料版が公開されており、フリー版では西暦190年の“董卓専横”シナリオのみがプレイ可能。この時代に登場する28人の君主と200人以上の人物からいずれか1人を選択し、統一を目指すこととなる。1,890円(税込み)などで販売されている有料版ではプレイできるシナリオが順次追加されており、全年代の12シナリオがプレイ可能となる予定だ。

 ゲームは月単位で進行し、各月ごとにプレイヤーが選択した人物の“行動力”という数値を消費して、軍事や内政、交友などさまざまな行動を実行していく。ゲームの目的はマップ上にある全都市を占領することで、プレイヤーの人物が死亡し、血縁の跡継ぎがいない場合はゲームオーバーとなる。

 人物には5種類の身分があり、国の全権をもつ“君主”、君主の配下として複数の都市を任される“都督”、君主もしくは都督の下で1都市を任される“太守”、どこかの国に所属する“一般”、誰にも仕えていない“在野”となってる。在野の人物なら空白地で自ら勢力を旗揚げするか、仕えたい人物に仕官し、出世を目指す。一般以上であれば自分の所属する勢力の中で出世し天下統一を目指すか、ある程度の富と人材を集めて下野し、新戦力を旗揚げするといったプレイが可能だ。

 本記事では基本となる君主でのプレイを前提に、進行を紹介していく。プレイヤーの行動ターンになると、君主のいる都市のマップ、都市のステータスと各種コマンドが画面に表示される。最初にすべきことは情報の確認だ。都市のステータスには都市にいる兵の数、保有する兵糧と金、毎月の収入、民衆の忠誠度などが表示されている。また、3列に並んでいるコマンドの中央列には全国にいる人物や自分の配下、各勢力や都市の情報などが見られるものが並んでおり、これら情報確認は行動力を消費しないので何回でも自由に実行可能。

 これでまず自分の都市、配下の人物、隣接する都市の勢力の情報を把握しよう。そして自分の都市がすぐ攻め込まれそうな状況でなければ、“人物情報”で部下にしたい優秀な人物を探す。歴史SLGはとにかく人材確保が重要だからだ。

人材集めが最優先

優秀な人材を発見したら、自ら出向いて会話して友好度を上げ、勧誘して配下に優秀な人材を発見したら、自ら出向いて会話して友好度を上げ、勧誘して配下に

人物の能力は多岐に渡る。能力や特技を活かして仕事をさせよう人物の能力は多岐に渡る。能力や特技を活かして仕事をさせよう

 人物には“統率”“武勇”“魅力”“知略”“政治”という6種類の基本となる能力値があり、これらは最大30までで、優劣を示す指標となる。“統率”“武勇”が高い人物は戦争で、“魅力”“知略”“政治”が高い人物は内政や外交で活躍する人材だと考えていい。また人物には“特技”“戦術”“特殊戦術”“奥義”“所持品”という項目もあり、これらも能力の優劣の一因となる。

 目をつけた人物が在野であれば、“移動”コマンドでその人物がいる都市まで行き、“交友”コマンドの“訪問”で面会を申し込み、会話をして友好度を上げてから“勧誘”で自分の配下に加えていく。断られた場合は友好度をもっと上げて勧誘すれば成功する可能性が出てくる。ただし人物には仙人や先生といった誰にも仕える気がない者もおり、そういった人物は勧誘しても配下にはならない。

 人物が一般の身分であれば、在野の人物と同様の方法で別の君主から自分の配下に引き抜くことが可能。ただし人物の“忠誠”が高い場合や自分とその人物の相性が悪い場合は断られる。自分の魅力や名声が低い場合、悪名が高い場合も断られやすい。また、都市コマンドの“登用”を使うと、本拠地に隣接する都市にいる人材を選んで配下になるよう持ちかけることも可能。隣接都市であればこちらを使うと行動力の消費を減らせる。

 ほかにも各都市には“酒店”があり、ここで“くつろぐ”を実行するとまだ未登場の新たな人材を発見できる場合がある。有能な人材が発見できるのでこれも多用して才能ある者達を集めよう。とにかく人材不足では内政も戦争もままならない。

内政で戦力を整える

フィールドマップ上にある都市が勢力の拠点となる。施設を建設して国力を高めていくフィールドマップ上にある都市が勢力の拠点となる。施設を建設して国力を高めていく

 ある程度人材を集めたら、次は内政で都市を発展させる。本作のマップはマス目状になっていて、広大なフィールドマップの各地に都市があり、道で繋がっている。各都市の中央には政庁があり、それを城壁と城門が取り囲んでいるのだが、自分の本拠地となっている都市の周辺7×7マスには都市コマンドの“建設”で自由に施設を配置し、都市を発展させることが可能。

 “街”を作れば金の収入が増え、“開墾”で田畑を作れば兵糧収入が増える。“集落”なら人口が増えて徴兵で集まる兵の数が増え、“工房”は都市の技術レベルが上がり兵器開発や売買できるアイテムが増えるなど、建設の効果はさまざま。都市の発展にともない、戦争に必要な兵、兵糧、金を蓄えていくわけだ。なお、これらの建設は担当する人物の能力や“特技”の有無で効率やコストが変わってくる。人材確保を重視するのはそのためでもある。

戦争で勢力拡大

 内政で戦力を高めたら、隣接する都市に戦争を仕掛ける。当然、敵の都市データを見て自軍の戦力で勝てる相手を選ぶことが重要だ。戦争は任意の人物を武将として、武将が兵を率いて戦う形式。兵種には普通の“歩兵”、行動や移動が速く攻撃力も高いが防御は低めの“騎兵”、間接攻撃が強い“弩兵”、城壁や城門などの破壊が得意だが戦闘は弱い“工兵”、さらに強化版の“強歩兵”、“強騎兵”、“強弩兵”の7種類がある。これらを徴兵や募兵で集め、武将が指揮をして戦うわけだが、兵の強さは武将の“統率”“武勇”“知略”の能力値によって大きく変わる。戦争でも人材が重要なのだ。

 戦争を実行するには、都市コマンドの“軍事”で部隊を編成するのだが、編成時は一人目に部隊の大将を選ぶことになる。部隊には大将の部下の武将しか配置できないので、君主が出撃しない場合は大将となる武将に“人事”コマンドの“与力派遣”で部下を与えておく必要がある。そうすることで最大5人の武将で部隊を編成可能だ。武将はそれぞれ1種類の兵種を各自の“階級”に応じた兵数まで率いることができる。兵数は戦闘においてヒットポイントに相当するため、多い方が強い。武将と兵が決まったら、“偵察”コマンドの使用に必要な金と、兵数と同じくらいの兵糧を持たせて出撃だ。

 出撃する部隊はフィールドマップ上の本拠地か“支城”という都市に付属する前線基地の周辺に配置可能。そこからひと月につき最大3回まで移動や攻撃などの行動を行う。敵勢力を攻め落とすには、敵都市の中央にある政庁を攻撃して耐久力をゼロにすればいい。そのためには出撃した部隊が敵の都市へ“移動”で接近し、都市を取り囲む“城壁”もしくは“城門”を破壊して突破し、政庁を攻めることになる。工兵は城壁や城門、政庁へダメージを与えやすいので部隊に入れておきたい。また、都市周辺には罠が仕掛けられていていることがあり、これを発見、回避するために金を払って“偵察”を行うことも重要だ。

戦闘フィールドはこのような配置に。城門や城壁は地形効果が大きく有利だ戦闘フィールドはこのような配置に。城門や城壁は地形効果が大きく有利だ

 敵も当然、部隊を出して迎撃してくる。自軍部隊と敵部隊が隣接したら、いよいよ戦闘だ。戦闘は将棋盤のような横5×縦10マスという戦闘フィールドに、敵味方が上下に向かい合って各武将が率いる隊が配置され、これを動かして攻撃や移動を行う。移動は前後のみで、左右の距離は無視して攻撃できるのが特徴だ。たとえば右端の隊が隣接していない左端の敵も攻撃できる。また、攻撃は必ず最前列にいる敵部隊を選ばなければならないルールになっていて、後方に配置されている部隊は攻撃対象として選べない。つまり最前列に強い武将の率いる隊を置き、ほかの隊は後方から間接攻撃をする、という戦い方もできる。なお、弩兵以外の兵種でも間接攻撃は可能だ。

 戦闘を開始すると各部隊に兵科や指揮する人物の能力に応じた行動力が溜まっていき、一定数に達すると行動順が回ってくる。各隊は隊ごとに設定された“行動回数”が0になるまで攻撃や移動などが可能。攻防はカードバトル方式で、敵味方双方に8枚のカードが配られ、そのうちの3枚を出してポーカーのように役を作り、より強い役を出した側が攻撃権を得られる。

 攻撃権を得た場合は通常の攻撃のほかに、攻防で溜まっていく“軍略”ポイントを消費して強力な攻撃となる戦術を発動することも可能。通常よりダメージの大きい攻撃や、敵を混乱させて行動不能にするものなどがあり、これは武将と兵種ごとに使用可能なものが決まっている。武勇が低くても“混乱”などが使える知略の高い武将も、使い方次第で活躍するのでうまく使いたいところだ。

 また、大将は“特殊”コマンドで“特殊戦術”が使用できる。これは各隊の隊長が習得している特殊戦術を使うもので、一時的に攻撃力アップや防御力アップ、行動速度アップなどの効果が得られる。ただし使用回数に制限があり、敵も使ってくるので出し所は駆け引きが必要となるだろう。

 攻撃のほかに、カードを出さず“防御”でダメージを減らしたり、敵に一騎打ちを申し込むこともできる。一騎打ちは断ると士気が下がり、断られた側は士気が上がるので強い武将は積極的に申し込むといい。ただし、一騎打ちで負けた武将は戦死する確率が高いので注意が必要だ。

攻防はカードバトル方式。ある程度運の要素も絡んでくる攻防はカードバトル方式。ある程度運の要素も絡んでくる

戦場の華、一騎打ちもある。負けると戦死する可能性が高く、リスクを伴う戦場の華、一騎打ちもある。負けると戦死する可能性が高く、リスクを伴う

 戦闘はどちらかの軍の大将の隊が撤退もしくは壊滅するまで継続される。戦闘で隊が壊滅した場合は敗走して本拠地に戻るが、捕まって捕虜になる場合もある。無理をして貴重な人材を失うのはなるべく避けたいところだ。

全土制覇を目指そう

史実に即したイベントも発生。歴史の流れに従うか、反逆するか?史実に即したイベントも発生。歴史の流れに従うか、反逆するか?

自分の勢力を拡大していく。大勢力になったら降伏を勧告するのも有効だ自分の勢力を拡大していく。大勢力になったら降伏を勧告するのも有効だ

 首尾よく敵の都市を攻略できたら、新たな勢力の拠点として内政に力を入れ、戦力強化を図る。この繰り返しで勢力範囲を広げていく。歴史SLGの基本形だと言えるだろう。複数の都市が支配下になった場合は、本拠地以外は“太守”を任命して内政を任せるといい。忠誠が高く裏切らず、なおかつ知略と政治が高い人物が適任だ。人材登用、内政、戦争のほかにも同盟や降伏勧告といった“外交”や、敵勢力への妨害工作を行う“計略”なども利用できる場面では利用するといい。

 さらに、史実イベントとして特定の人物が死亡したり、同盟を組んだりして勢力図に変化が起こることも。フリー版でプレイできる“董卓専横”シナリオでは反董卓同盟が結成され、多くの勢力が同盟締結状態になる。この同盟は解除されるイベントがなく、同盟に参加すると他国を攻めるには同盟を破棄する必要があり、その際に“悪名”が上がってしまう。そうならないために、同盟への参加は拒否するのがお勧めだ。

 本作は、プレイヤー以外の行動ルーチンに若干荒削りな面があるものの、歴史SLGとしてはなかなかテンポよく進行する点は高く評価できる。都市開発の楽しみや人材の集めやすさなどは上々。敵の計略が成功しやすく、プレイヤーの計略は失敗しやすい点はゲームバランス的に仕方のないところだろうか。この手のゲームは終盤になると勢力範囲が広くなりすぎて煩雑になりがちだが、外交の“勧告”で降伏させていくと弱小勢力はスムーズに自軍へ吸収できて楽だ。歯ごたえのある難易度を求めるならば能力の低い人物で在野からスタートするという遊び方もある。まずはフリー版をプレイしてみて、気に入ったら有料版も入手してはどうだろうか。

「流雲三国志」フリー版

【著作権者】
no0 氏
【対応OS】
Windows XP(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.6

(藤井 宏幸)