週末ゲーム
第638回
歯応えのあるリアルタイムバトルが醍醐味の長編RPG「Tear of Vanadies」
3層ゲージのATBと合体技が特徴の戦闘や、ダンジョン探索を存分に楽しめる大作
2016年5月27日 19:47
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、さまざまなシステムを搭載したATBサイドビューバトルが特徴の長編RPG「Tear of Vanadies」を紹介しよう。
魔法と科学の入り混じる世界を舞台に、少年少女達の冒険を描くRPG
「Tear of Vanadies」は、地上世界から隔絶された浮遊大陸で生まれ育った少年少女達が、あるきっかけで地上に降り、冒険を繰り広げて行くRPG。ファンタジーをベースに科学文明も発達しつつある世界観で、無骨な機械兵に剣技や魔法で立ち向かっていくなど、良い意味で古典的な、どこか懐かしい味わいのある作品となっている。
ド派手な戦闘アニメーションも魅力のサイドビューバトルに、ノリノリのボス戦曲や神秘的な場面を演出する静謐さを感じる曲といったオリジナルのBGMなど、グラフィックやサウンド面も大きな見どころ。プレイ時間は約30時間の長編作品だ。
タイミングが重要となる多層ゲージ型ATB。必殺技や魔法の合体もアツい
本作の戦闘システムはATBで、最大3人のパーティで戦う。特徴は、ATBのゲージが黄、緑、青色の3重になっていること。必殺技や魔法はそれぞれ発動に必要なゲージの量が異なり、1段階目の黄色まで溜まればコマンド選択が可能になるが、強力な必殺技や魔法を使うには緑、青の段階までゲージを溜める必要がある。また、ゲージが多く溜まっていれば、ゲージ消費量の少ない行動を連続で行うこともできる。
さらにゲージが1段階も溜まっていない状態では防御力が低下するという要素もあり、リアルタイムに進行する戦闘の中で、パーティ3人のゲージを把握し、タイミングを見極めて行動するのが忙しくも面白い。なお、パーティの誰か1人でも行動可能になった状態なら、決定キーで行動メンバーを選ぶ状態にすれば時間が止まるので、戦況を見てじっくり考えることも可能だ。
さらに、一部の必殺技や魔法は同時に発動することで合体技を繰り出すことが可能。物理攻撃の効きにくい敵に魔法を上乗せした剣技を繰り出したり、2つの剣技をクロスさせることで聖属性の大ダメージを与えたり……と戦術的にも、演出としても熱いものとなっている。
この合体技を実現するために、必殺技や魔法は“決定キーで選択して発動待機状態になったあと、キャンセルキーで発動”という操作になっており、最初はやや戸惑うが、慣れればタタン、と連続でキーを押す感覚に格闘ゲームのコマンド入力のような趣も感じられる。また必殺技や魔法の合体というとゲームによってはタイミング合わせが必要となる場合もあるが、本作の場合はこの仕組みにより手軽に合体技が出せるのがありがたい。
そのほか移動コマンドにより、パーティの他メンバーの前へと立ち位置を変更することで庇うことができるなど(ただし直線範囲の攻撃をまとめて受けるというデメリットも)さまざまな要素が絡みあい、やり応えのあるバトルに仕上がっている。
なお、キャラクターにはHPとは別に“体力”というパラメーターがあり、必殺技や魔法を使うと消費する。一般的なRPGのMPに相当するものだが、減れば減るほどキャラクターのステータスが全体的に低下していくのが特徴。強力な必殺技や魔法ほど体力の消費は激しい。回復手段も存在はするが潤沢ではなく、ある程度は堪え忍ぶ必要も出てくる。
また本作にはレベルの概念はなく、戦闘終了後に、戦闘中の行動に応じてステータスが個別に成長していく方式。体力の概念により、プレイしていると“徐々に成長しつつ、全体のステータスが徐々に低下していく”状態になるため、一見強くなったのを実感しにくい。しかしだからこそ、体力を回復した所で一気に成長を実感できる。体力の仕組みはややシビアではあるのだが、それだけに困難を越えた時に『気付かなかったけど実はこんなに強くなっていた』というカタルシスを得られるのが独特の感触だ。
エンカウントは位置固定でリポップなし。手応えありつつもストレスフリーなダンジョン探索
ダンジョンでは、特定の場所に到達すると敵が登場し(事前に見えている場合もある)そのまま戦闘画面となる。そして倒した敵はダンジョンから出るか、回復ポイントでHPや体力を回復しない限り再び現れることはない。
ダンジョンにはさまざまな仕掛けや分かれ道があり結構行き来する必要があるほか、隠し通路の先に貴重なアイテムや必殺技・魔法を覚えるための秘伝書が置かれていることもあり、隅々までじっくり探索したくなるのだが、この仕様により、敵に邪魔されることなくダンジョン探索を堪能できるのが嬉しいところだ。
一戦一戦が比較的重く、サクサク敵を倒していくタイプではない本作だが、その代わり、1ダンジョンの戦闘回数自体はほどほどに抑えられており、飽きることなくプレイを進めて行ける印象。ゲームバランス的にも、敵を復活させず一気に進めるとボス戦でなかなか苦戦するという、程よいバランスに感じた。
武器や防具はなく装備品はアクセサリが6枠。さまざまな効果を持つ装備でキャラクターをカスタマイズ
本作に武器や防具を装備する要素はない。その代わりアクセサリの装備枠が6枠あり、戦闘スタイルなどに応じたキャラクターカスタマイズを存分に楽しめる。
装備品は特定ステータスが上がるオーソドックスなものから、戦闘開始時に最初からATBゲージを一定量溜めておけるもの、特定の必殺技の効果を上げるものなどさまざま。店で買ったりダンジョンで入手できるほか、敵を倒した時にランダムでドロップすることもある。
さらに、敵の撃破などにより溜まる“戦歴ポイント”が一定数溜まると、町のハンターズギルドで中身がランダムの宝箱を開けることが可能。敵からのドロップやハンターズギルドでは思いのほか強力な装備品が手に入ることもあり、こうしたラッキー要素も戦闘の楽しみとなっている。
戦闘と探索をじっくりやり込める大作
本作は、初リリースが2005年(スタッフロールからの推測)と10年以上前の作品で、何度かアップデートされつつ、最新版の5.00が昨年公開された。遠慮のない難易度や慣れるまではややとっつきにくい操作など、確かに一昔前の作品と感じる部分もあるが、前述のようにじっくりやり込む所と煩雑さを廃した所のメリハリが効いており、筆者の場合はほどほどにクラシカルな雰囲気を感じつつも気持ち良くプレイできた。(繰り返しになるが、やはり必要以上のエンカウントをしないで済む仕様が特にありがたい。)
ただ僅かな例外として、“セーブ回数により戦歴ポイントが下がる”仕様だけはストレスに感じた。一戦ごとにセーブするような軟弱なプレイを防止したい、という意図はわかるのだが、ダンジョン攻略と関係なく長いイベントが発生するような場面もあり、そうした場面の前後でセーブすることや、ゲームを中断することがためらわれてしまう。せめてダンジョン内でのセーブのみをペナルティとしてほしかった所だ。
とはいえ普通にプレイしていれば、ハンターズギルドで最後のランダム宝箱を開けられるだけの戦歴ポイントはまず問題なく手に入るので、これからプレイする方は、どうかあまり気にせず、セーブすることをためらわないでほしい。(ハンターズギルドでの会話によると、セーブ回数が多いとランダム宝箱でレアアイテムが出にくくなるという噂もあるが、気にしていたらきりがない……。)
また、ストーリーは王道と言えるものだが、やや唐突に感じる場面や、一部キャラクターの心情を把握しにくい場面なども存在した。とはいえ約30時間プレイして、全体的な達成感という意味では十分に感じられたのは間違いない。ストーリーを最重要視する方にはお勧めしにくいが、RPGといえばやっぱり戦闘と探索!という人には試してみていただきたい作品だ。
ソフトウェア情報
- 「Tear of Vanadies」
- 【著作権者】
- COLTWORLD
- 【対応OS】
- Windows(編集部にてWindows 7で動作確認)
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 5.00(15/05/03)