特別企画
Windows Mobileスマートフォン“EMONSTER”をAndroid端末に!
“Touch Diamond”用AndroidやPC用Androidエミュレーターの使い方も併せて紹介
(09/10/15)
手持ちの“EMONSTER”を利用してGoogleケータイを体験しよう
今年の7月にNTTドコモから登場し、“Googleケータイ”として注目を集めたHTC社製スマートフォン“HT-03A”は、OSにAndroidを採用している。PCユーザーにとってなじみ深いGoogleの各種サービスを簡単に利用できるという触れ込みだけに、気になっている読者も多いのではないだろうか。
しかし、現在のところ国内で販売されているAndroid搭載スマートフォンは1機種のみとなっているため、キャリア乗り換えの問題や、2年サイクルでの買い換えを意識した販売形態など、興味はあっても手を出しにくい状況と言えるだろう。
そこで今回は、イー・モバイルのWindows Mobile端末“EMONSTER”(S11HT)上でAndroid OSを動作させるための方法を、Androidの機能紹介を交えつつ解説していく。また、同じくイー・モバイルの“Touch Diamond”(S21HT)用Androidや、PC上で動作するエミュレーターの情報に関しても併せて紹介するので、EMONSTERを持っていないユーザーもぜひチェックしてもらいたい。
OSの書き換え不要で簡単導入
スマートフォンのOSは通常、Flash ROMに書き込まれており、ファームウェアアップデートのような形を除けば、一般のユーザーが気軽に書き換えることは困難だ。しかし、今回紹介する方法では、Windows Mobile上でLinuxを起動可能にするブートローダーを利用して、Windows Mobile上からAndroidを起動する形となるため、Windows Mobile環境を維持したまま、比較的手軽にAndroid OSを体験できる。
Windows Mobile側の環境を書き換えるわけではないため、Androidの試用が終わったらリセットボタンを利用して端末を再起動するだけで従来のWindows Mobile環境に戻ることが可能だ。ただし、Windows Mobile側のユーザーデータがトラブルで失われる可能性も否定できないため、必要なデータはしっかりとバックアップを取ってから作業しよう。
なお、Android上で加えた変更は、リセット後も保持されているので、再度Windows Mobile上からAndroidを起動すれば、前回終了時の状態から利用を再開できる。
紹介するビルドについて
今回紹介する方法では、海外の有志がEMONSTERの海外モデルである“Kaiser”向けに作成を進めているビルドを利用するため、EMONSTERのすべての機能が利用できるわけではない。編集部でテストした限りでは、イー・モバイル回線を利用したパケット通信、SMSの送受信、静止画・動画や音楽の再生などが確認できたが、無線LANとBluetoothが有効化できなかったほか、電話については発着信はできるものの正常に通話が行えなかった。また、動作の安定性にも一部問題が見られたため、日常的に利用するにはさすがに厳しい状態だ。
とはいえ、Androidマーケットからの専用アプリのダウンロードや、Gmail、カレンダー、連絡先の同期、Google マップ上での位置情報の利用など、Androidの見どころとも言うべき機能は一通り体験できるので、他OSとの比較や今後の端末購入の判断材料としては十分だろう。
なお、今回の特集では複数のビルドを動作検証した結果、動作速度や安定性などを考慮して、あえて古いビルドを使用している。
必要ファイルのダウンロードとインストール
ここからは、実際の導入方法と各種設定方法について紹介していこう。
まず、配布サイトのダウンロードページからたどれる“Builds Archive”ページの“Other Previous”に分類されている、08/08/09(2009年8月8日)付けの“android-1.5-2009-08-08.zip”をダウンロードする。
このファイルを解凍すると、“resources.zip”など11個のファイルが生成される。このなかの“default.txt”が起動設定ファイルで、配布サイトの“Boot Options”ページにて詳しい内容が紹介されている。今回はあらかじめ用意されている“default-kaiser.txt”を利用するので、不要となる“default.txt”と“default-polaris.txt”を削除し、“default-kaiser.txt”を“default.txt”にリネームしよう。
続けて、“resources.zip”を解凍すると“media”フォルダが生成されるので、不要になった“resources.zip”を削除しておこう。
最後に“default.txt”と“media”フォルダ、そのほか生成された8個のファイルをmicroSDカードのルートフォルダにコピーする。この際、「ActiveSync」や「Windows モバイル センター」経由では転送に時間がかかる上、設定によってはファイルの内容が自動変換される可能性があるので、メモリカードリーダーの利用が望ましい。
ファイル名 | 利用方法 |
---|---|
default.txt、default-polaris.txt | 削除 |
default-kaiser.txt | “default.txt”にリネーム |
resources.zip | 解凍して“media”フォルダを生成、“resources.zip”自体は削除 |
そのほかのファイル | 上記のファイルと一緒にそのままmicroSDカードにコピー |
Androidの起動と言語設定の変更
準備が整ったら、Windows Mobile標準の「ファイル エクスプローラ」からmicroSDカードを開いて“haret.exe”を実行し、[Run]ボタンをタップしよう。タップしてもブート画面が表示されない場合は、メモリ不足の可能性がある。「HTC Home」などのToday画面アイテムを無効にした上で端末を再起動して再度チャレンジしてみよう。それでも駄目なら、「default.txt」やほかのファイルに問題があるかもしれない。ファイルの解凍や転送を再度やり直してみよう。
ブート画面が表示されて2~3分待つと、Androidの初期設定画面が表示されるので、以下の手順で初期設定を行おう。なお、ブートの途中で画面が長時間止まる個所があるが、気長に待とう。ただし、5分以上たっても起動しなければ、メモリ不足などが原因でフリーズしている可能性もある。
各種ハードウェアボタンの対応
EMONSTERのハードウェアボタンの一部には、Androidの各種ボタン機能が自動的に割り当てられている。各ボタンの機能は以下の通りだ。なお、QWERTYキーボードは[Fn]や[Shift]も含めそのまま利用できる。
EMONSTER | Android |
---|---|
ナビゲーションコントロール | 上下左右カーソル |
Enterボタン | 決定ボタン |
スタートボタン | メニューボタン(画面ロックの解除) |
okボタン | 戻るボタン |
Webブラウザボタン | ホームボタン |
左ソフトキー | 音量調整ボタン(ダウン) |
右ソフトキー | 音量調整ボタン(アップ) |
通話ボタン | 開始ボタン |
終了ボタン | 通話終了ボタン |
電源ボタン | 電源ボタン |
ジョグホイール | 上下カーソル |
ボイスタグボタン | 検索ボタン |
Androidの基本操作はメニューボタンで各種メニューの表示、戻るボタンで1画面前に戻る、ホームボタンでホーム画面(デスクトップ画面)に戻る、電源ボタンでサスペンド&画面ロック、メニューボタンで画面ロックの解除となるので、このあたりはしっかりと確認しておこう。
画面回転、パケット通信の設定を変更する
続いて、以下の手順で各種設定の変更を行おう。
Googleアカウントを設定する
本体の設定が終わったら、次はGoogleアカウントの設定を行おう。ホーム画面にある[Market]アイコンをタップしてAndroidマーケットにアクセスすると、アカウントの設定画面が自動的に表示される。[Next]→[Sign in]の順にボタンをタップしてメールアドレスとパスワードを入力し、[Sign in]ボタンをタップすれば設定は完了だ。なお、「Gmail」や「Calendar」、「Contacts」など、Googleのサービスと連携するアプリはアカウント情報を共有している関係上、最初にどれを起動してもアカウント設定が表示される仕組みになっており、アプリごとにアカウント情報を設定する必要はない。
日本語入力環境を構築する
日本語入力を行うには、別途アプリの導入が必要となる。今回はフリーソフトの日本語入力アプリ「Simeji」を導入してみよう。「Market」を起動して[Search]を選択し、検索欄に“simeji”と入力。検索結果の「Simeji」を開いて[Install]ボタンをタップしよう。なお、ダウンロード中、画面上の通知領域(タイトルバー)にアイコンが表示されるが、この通知領域を下方向にドラッグすることで、通知の詳細を確認することが可能だ。あとは、ランチャーなどから「Simeji」を起動し、表示された説明に従って設定を行おう。
Androidの基本的な機能と操作方法
ここからは、Androidの基本機能や操作方法、代表的なアプリケーションなどについて、画面を交えつつ紹介していこう。
Touch DiamondでAndroidを利用する
EMONSTER以外に、“Touch Diamond”で実行可能なビルドも用意されている。利用の仕方はEMONSTER版とほぼ同じだが、ネットワークにうまく接続できないほかサスペンドにも対応していないなど、実用にはかなり厳しかった。だが、Androidのユーザーインターフェイスに触れてみたいといった用途であれば十分に活用可能だ。
PC用エミュレーターを利用する
EMONSTERもTouch Diamondも持っていないという人は、Googleが配布しているAndroid SDKに含まれるPC用エミュレーターを利用してみるという手もある。
SunのサイトからJava SDKをダウンロード・インストールしたのち、GoogleのAndroid公式サイトからSDKをダウンロードしよう。ZIPファイルで配布されているSDKを解凍したらWindowsのコマンドプロンプトを起動し、カレントフォルダを解凍済みファイルの“Tools”フォルダに移動しよう。
次にエミュレーターの実行に必要なAndroid仮想デバイス(AVD)を作成する。コマンドプロンプト上で“android create avd --name test --target 3 --sdcard 128M”と入力してみよう。“test”という名称で、ユーザーフォルダ(Windows Vistaなら「C:\ユーザー\ユーザー名」)内の“.android”フォルダ内にAVDが作成されるはずだ。続けて“start emulator -avd test”とコマンド入力することでエミュレーターが起動する。
おわりに
AndroidはWindows MobileやiPhone OSといった既存のスマートフォンOSと比較すると最後発なだけに、各OSのいいとこ取りをした印象がある。たとえば、Windows MobileはユーザーインターフェイスがPDA時代からほとんど変わらないため、指でのタッチ操作が難しいが、AndroidはいまどきのモバイルOSらしく指タッチでもストレスのない操作が可能だ。iPhone OSと比較した場合、マルチタスクに対応しているため、バックグラウンドでTwitterアプリを立ち上げておき新着通知を行ったり、サイズの大きなファイルをバックグラウンドでダウンロードするといった利用が行える。また、アプリケーション間の連携を行う仕組みが用意されている点も目新しい。
今後、国内で2機種目となるAndroid端末が登場する可能性についても一部で報道されているので、ぜひ本記事を参考に、Androidの世界を体験して新たな端末たちの登場に備えてもらいたい。
編集部より:記事の掲載後、AndroidへGoogle製アプリケーションを含める場合は許諾が必要であることが判明いたしました。現在、今回取り上げたビルドの作者へ、許諾の有無や、許諾を得ていない場合の今後の対応について、問い合わせを行っております。本記事の内容を実際にお試しになる際は、このような状況である点をご理解の上でお試しいただけますよう、お願いいたします。今後、新たな情報が入り次第、記事を更新する予定です。