山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

Amazonの大画面タブレット「Fire HD 10」は最新モデルへ買い替えるべき?

旧モデルとの違いをチェック!

左から、最新の第11世代の上位版「Fire HD 10 Plus」、第9世代、第5世代。第7世代は外観が第9世代とほぼ同じため割愛している。ちなみにFireはかつては「Kindle Fire」という呼び名だったが、10.1型モデルはすべて「Fire」に名称変更してからの製品だ

 Amazonの「Fire HD 10」は、同社のメディアタブレットFireシリーズの中で、もっとも大きな画面サイズを備えた製品だ。Google Playストアに対応せず、利用できるのはAmazonアプリストアに限定されるものの、サイズがほぼ等しいiPadの半分以下の価格で入手できることもあり、気軽に使える大画面タブレットを求めるユーザに人気が高い。

 そんなFire HD 10は、モデルチェンジ時の進化のポイントがいまいちわかりにくいのがネックだ。デザインも含めてがらりと変わることがある一方、パフォーマンス面では大きな違いがないこともあり、買い時がわかりにくい製品でもある。Amazonのセールで値引きされているのを見るたび、買うべきか否か、毎回迷う人も多いのではないだろうか。

 今回は、現行の最新モデルにあたる第11世代と、過去に発売された同名モデルの違いについて、項目ごとにチェックしていく。旧製品を所有している人が、現行製品に買い替えるべきか否か、判断する助けになれば幸いだ。なお画質比較のサンプルには、「Kindle Unlimited」で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第9巻』を、許諾を得て使用している。

 なお基本的な知識として、Fireの各製品における「第○世代」という表現は、原則として発売年によってつけられるため、数字が連続していないことに気をつけたい。例えば現行モデルは第11世代、その前は第9世代だが、もう一つ前は第7世代であり、第10世代・第8世代というモデルや、第4世代以前のモデルは存在しない。見分け方はAmazonのサイトにも掲載されているので、参考にしてほしい。

「Fire HD 10」はこれまで何種類ある?

 現在販売中の第11世代以外に、2019年発売の第9世代2017年発売の第7世代2015年発売の第5世代と、「Fire HD 10」という名前を冠する製品はこれまでに4種類存在している(キッズモデルなどの派生モデルを除く)。

 なお現行の第11世代には、外観がほぼ同一でメモリなどのスペックを強化した「Fire HD 10 Plus」という上位モデルがあり、これを別にカウントすると、計5種類が存在することになる。

最新の第11世代(左)のみ、インカメラの配置の関係で、それ以前のモデルよりも背が低く、逆に横幅が広い。ただし画面のサイズはまったく同じだ(右は第5世代モデル)
横向きに表示した状態。最新の第11世代(上)は横幅がややスリム。10.1型という大画面はどのモデルも共通で、コミックの見開き表示にもサイズ的には十分だ

画面サイズと解像度は?

 どのモデルも画面サイズは10.1型、縦横の比率も16:10と変わらないが、第7~11世代は解像度が1,920×1,200ドット(約224ppi)で統一されているのに対し、第5世代のみ1,280×800ドット(約150ppi)と、一昔前のスペックだ。

 それゆえ第5世代は、コミックの細部のディティールの描写や、細かい文字の表示はあまり得意ではなく、全体がぼやけたような見え方になる。HDクオリティの動画を観るにはそれほど気にならないが、電子書籍端末としての利用頻度が高い場合、買い替えの直接の動機となりうるポイントだ。

解像度1,920×1,200ドットの第9世代(左)と、1,280×800ドットの第5世代(右)の違い。粗さの差は一目瞭然だ
こちらはコミックのページを見開き状態にした上での解像度の比較。差はさらに顕著になる。第5世代はルビを読み取るのすら困難なことが分かる

CPUやメモリの違いは?

 Fireタブレットは独自のFire OSを採用していることもあり、ハードウェアスペックは全体的に控えめだが、現行の第11世代はメモリが3GB、Plusは4GBと、Androidタブレットと比べてもそれほど引けを取らない。一方で第7、9世代はメモリ2GB、第5世代はわずか1GBで、現行製品との差は大きい。

 一方のCPUは、第11世代と第9世代は同じMediaTek MT8183(オクタコア)で据え置きだが、第7世代はMediaTek MT8173、第5世代はMediaTek MT8135で、両者ともにクアッドコアだ。またベースになっているAndroidのバージョンも、第11世代と第9世代はAndroid 9ベースなのに対し、第7世代と第5世代はAndroid 5.1ベースで、Fire OSも最新版がFire OS 7なのに対し、Fire OS 5の時点でアップデートが止まっている。

 つまり第9世代と第7世代の間にひとつの大きな壁があるわけで、手持ちの製品が後者であれば、買い替える価値は高いだろう。一方で第9世代から最新の第11世代への買い替えは、スペック以外に大きな動機がなければ、それほど急務とは言えないだろう。

Octane 2.0によるベンチマーク比較。左から第11世代の上位版「Fire HD 10 Plus」、第9世代、第5世代。ここにない第7世代は「第5世代の25%増し」「第9世代の2/3程度」で、やはり第9世代と第7世代の間の差が激しい。ちなみにPlusでない第11世代は第9世代とほぼ同じ

サイズと重量の違いは?

 第9世代まではインカメラがボディの短辺側に配置されていたためボディが細長かったが、第11世代では長辺側に移動したため、全長は短くなる一方で、短辺側がやや長くなった(ただし前述のように画面サイズは変化しておらず、あくまでもベゼルを含めたボディサイズの話だ)。また重量も、第11世代は465g(Plusは468g)と、500gオーバーだった第7世代および第9世代と比べると軽量化が図られている。

 ただし第5世代は約432g、厚みも7.7mmと、今に至るも歴代最薄・最軽量なので、買い替えた場合に厚みや重さが気になる可能性はある。世代的にはもっとも古い第5世代から以後のモデルに買い替えた場合に、唯一「退化」するポイントだ。

左が第9世代、右が第5世代。インカメラは短辺側に搭載されていた
第11世代ではインカメラが長辺側に移動している。つまり横向きが標準になったことになる

それ以外の外観の違いは?

 前述のインカメラの配置以外では「端子」「背面の塗装」が世代によって大きく異なっている。

 端子は、第7世代まではMicro-B、第9世代以降はUSB Type-Cに統一されている。急速充電(USB PD)には対応しないので、充電速度でそれほど極端な差はないが、現行のスマホをはじめとしたデバイスと充電環境を統一するのであれば後者が有利だ。ちなみに外観がほぼ同じ第7世代と第9世代を見分けるには、この端子の違いを見るのが手っ取り早い。

 背面は、第5世代は光沢感のあるピアノ調塗装だったのが、第7世代以降は樹脂そのままのざらざらとした質感だ。第7世代以降は第5世代よりもボディの剛性が高く、また手の脂が目立たない一方、摩擦で跡がつきやすいのが欠点だ。なお第11世代の上位版「Fire HD 10 Plus」のみ、キズ防止・スリップ防止に効果のある滑り止め加工が施されている。

上から、第11世代の上位版「Fire HD 10 Plus」、第9世代、第5世代。第9世代以降は端子がUSB Type-Cに改められている
背面が樹脂製ゆえ摩擦によるキズがつきやすいのは、この第9世代のほか、第11世代(Plusを除く)、第7世代共通の欠点
「Fire HD 10 Plus」は背面が滑り止めコーティングされるなど、明らかにワンランク上という質感だ

各モデル独自の機能は?

 ワイヤレス充電に対応しているのは「Fire HD 10 Plus」のみ。キーボードと「Microsoft 365 Personal」1年版が付属した「エッセンシャルセット」が用意されるのは現行の第11世代のみだ。またAlexa端末として使える機能は第7世代以降で、第5世代は非対応。

 一方でイヤホンジャックは全モデルに搭載、同じくメモリカードスロットも全モデルに搭載されているが、最大容量は第5~7世代が最大256GB、第9世代が最大512GB、第11世代が最大1TBと、モデルチェンジのたびに倍増している。

メモリカードスロットを搭載するのは全モデル共通の特徴。ただし最大容量はモデルによって異なる

結論:第11世代に買い替えるべきモデルは?

 発売からすでに5年以上が経過している第5世代および第7世代は、現行モデルに買い替える価値は高い。実際に使い比べても、それ以後のモデルとはレスポンスがまるで違う。特に第5世代は画面解像度も低いので、体感できる速度差に加えて、見た目のところで違いが一目瞭然だ。

 難しいのは第9世代で、現行の第11世代と比べた場合、メモリは増えてはいるものの、CPUは同じこともあり、新鮮な驚きはない。もし第9世代でレスポンスなどに不満がある場合、思い切って上位グレードの「Fire HD 10 Plus」に買い替えたほうが、満足度は高いだろう。