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スクールカウンセラーの日米比較から日本の制度の問題点と実践的指針を解説した書籍

『スクールカウンセリングは日本の学校教育を変えられるか』が発売

『スクールカウンセリングは日本の学校教育を変えられるか 日米比較でみえた機能しない理由と再設計の条件』

 (株)インプレスは9月26日、インプレス NextPublishingより『スクールカウンセリングは日本の学校教育を変えられるか 日米比較でみえた機能しない理由と再設計の条件』(木村 俊彦著)を発売した。紙書籍版の販売価格は2,850円(税別)、電子書籍版の販売価格は2,000円(税別)。

 日本の学校では、スクールカウンセラー(SC)が「心理の専門家」として狭く配置され、既存の学校教育に合わせることが期待されてきました。本書は、その前提を日米比較で問い直し、米国でSCが生徒指導・進路・教務まで学校運営に横断的に関与する実態と、ジョブディスクリプションに基づく“一人一役”で専門性を発揮する設計を対照させます。

 さらに、日本の“チーム学校”が上意下達に傾くとSCの意義が希薄化するリスクを示し、役割と権限の明確化、協働(コラボレーション)の運用、リーダーシップ設計、評価と配置の見直しという「再設計の条件」を具体的に提案します。教師・管理職・教育委員会・保護者まで、学校に関わる全ての人に向けた実践的指針です。

 また本書は、学校文化の前提や言葉の使い方そのものを丁寧に解きほぐします。たとえば欧米では「批判的(クリティカル)態度」は改善のための提案であり望ましい姿勢であること、「クレーマー」は本来“訴える人”という中立的な語であること、そして「ユニバーサルデザイン」を“障害者向け”に矮小化する誤解などを指摘。

 さらに、診断名やマニュアルに過度依拠して個別性を見落とす対応の限界、キャリアを「生きる道程」と捉える本義(ライフ・キャリア/ワーク・キャリア)も紹介し、教育観の更新を促します。これらを踏まえ、学校を「教師だけでは届かない声」に開くための制度設計と現場運用の両輪を提示します。

目次

  • 前書き
  • 第1章 アメリカの学校と援助職
     ► 第1節 専門性の発想
     ► 第2節 学校の福祉的機能
     ► 第3節 スクールサイコロジー
     ► 第4節 スクールカウンセリング
     ► 第5節 スクールカウンセラーによる対応
  • 第2章 日本の学校と援助職
     ► 第1節 学校制度の意図
     ► 第2節 子供の幸福度
     ► 第3節 スクールカウンセラー制度
     ► 第4節 日本の学校教育
     ► 第5節 対応の例
     ► 第6節 子供の権利
  • 第3章 学校教育の発想
     ► 第1節 客観主義の様相
     ► 第2節 文脈主義
     ► 第3節 問題に対する耐性
  • 後書き
  • 参照文献