山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

折りたたみスマホの「縦長タイプ」と「横長タイプ」、電子書籍に適するのはどっち?

「Galaxy Z Foldシリーズ」の最新モデル2製品で検証してみた

縦長タイプの「Galaxy Z Fold8 Ultra」(左)と横長タイプの「Galaxy Z Fold8」(右)

 折りたたみタイプのスマホで、現在トレンドとなっているのが、横長の画面だ。俗にフォルダブルとも呼ばれる折りたたみスマホはこれまで、開いた状態でも画面サイズは縦長を維持する製品が多くを占めていた。左右に開く構造からして当然のように横長になると思いきや、アスペクト比上では縦のほうが長いままというスタイルが、いつしか主流となっていた。

 今年になってこのトレンドに変化が生じ、開くと横長になる折りたたみスマホが続々と登場しつつある。新しく登場した「iPhone Duo」がこの方式を採用することで知られるが、これに先んじて複数のメーカーから横長タイプが多数リリースされ、いまや主流となりつつある勢いだ。

 では電子書籍においては、この縦長タイプと横長タイプ、どちらのほうが向いているのだろうか。今回は、両方の折りたたみスマホをラインナップするサムスンの「Galaxy Z Foldシリーズ」の最新モデル「Galaxy Z Fold8 Ultra」と「Galaxy Z Fold8」を借用したので、電子書籍ユースにおける2つのタイプの使い勝手の違いを検証する。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』を、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最終号を、サンプルとして使用している。

まずは両製品をざっと紹介

 まずは両製品の特徴をざっと押さえておこう。「Galaxy Z Fold8 Ultra」は、開いた状態でも縦長の比率を維持する、いわば従来型に相当するモデルだ。実売価格は296,780円となっている。

 開いた状態での解像度は2,504×2,256ドットということで、アスペクト比はざっくりと「16:14」。見た目はほぼ正方形に近く、90°回転させてもそれほど違いは感じられない。画面サイズは8.0型となっている。

「Galaxy Z Fold8 Ultra」。開いた状態でも縦長となるアスペクト比が特徴
閉じた状態。従来型の縦長折りたたみスマホに多く見られるスリムなボディだ

 重量は公称215g、実測220gと、後述の「Galaxy Z Fold8」ほどではないがかなり軽量。バッテリー容量は5,000mAh、プロセッサーはSnapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxy、最大輝度は3,000ニト、最大リフレッシュレート120Hzとなっている。また、ストレージは256GB/512GB/1TBで、メモリはそれに応じて12/16GBのいずれかが選択される。さらに、顔認証と指紋認証に両対応するほか、IP48規格の防水・防塵性能にも対応する。

背面。カメラは超広角・広角・望遠の3眼
底面にUSB Type-Cポートを搭載する
上面にはSIMカードスロットを備える。メモリカードには非対応
開いた状態での右側面に電源ボタンと音量ボタンを搭載する
重量は公称215g、実測220g

 もうひとつの「Galaxy Z Fold8」は、今回初めてバリエーションとして追加された、画面を開くと横長になるモデルだ。実売価格は269,880円と、前述の「Galaxy Z Fold8 Ultra」よりわずかに安価だ。

 開いた状態での解像度は1,848×2,448ドットということで、アスペクト比はほぼ「10:16」。ほぼ正方形だった前述の「Galaxy Z Fold8 Ultra」と異なり、紙の本の「3:4」に近い比率だ。画面サイズは7.6型となっている。

「Galaxy Z Fold8」。開いた状態では横長となるタブレットライクなアスペクト比が特徴
閉じた状態。スマホとしては天地が短く、横幅がかなり広い

 重量は公称201g、実測207gと軽量で、バッテリー容量は4,800mAh、OSはAndroid 17を搭載する。プロセッサーはSnapdragon 8 Elite Gen 5 for Galaxy、最大輝度は3,000ニト、最大リフレッシュレート120Hzというスペックは前述の「Galaxy Z Fold8 Ultra」と同一。

 また、ストレージが256GB/512GB/1TBで、メモリはそれに応じて12/16GBのいずれかが選択される点も同一だ。顔認証と指紋認証に両対応する点や、IP48規格の防水・防塵性能にも対応する点も変わらない。

背面。カメラは超広角・広角の2眼で望遠は非搭載
底面にUSB Type-Cポートを搭載する
上面にはSIMカードスロットを備える。メモリカードには非対応
開いた状態での右側面に電源ボタンと音量ボタンを搭載する。これらボタンやポート配置は両製品ともに同様だ
重量は公称201g、実測207gと前述の「Galaxy Z Fold8 Ultra」よりもさらに軽い

テキスト:ほぼ互角だが横長タイプのほうがやや有利か

 では両製品について、電子書籍のタイプごとの見え方の違いを見ていこう。今回は『テキスト』、『コミック(見開き)』、『コミック(単ページ)』、『雑誌』という4つのタイプについて比較する。便宜上、両製品の画面を開いた時の形状をもとに、Galaxy Z Fold8 Ultraは『縦長タイプ』、Galaxy Z Fold8は『横長タイプ』と呼称する。

 まずはテキスト。テキストは、画面のアスペクト比に応じてレイアウトを変更できるため、縦長タイプでも横長タイプでも、無駄な余白を出すことなく、画面のサイズを活かした読書が楽しめる。どちらか一方が明確に向いている、向いていないといったことはない。

左が縦長タイプのGalaxy Z Fold8 Ultra、右が横長タイプのGalaxy Z Fold8。テキストは可変レイアウトであるため、どちらの比率でも表示の違和感はない

 ただし紙の本に近い感覚で読書をしたいのであれば、紙の本のアスペクト比である4:3に近い横長タイプのほうが違和感は少ないだろう。特に今回紹介している横長タイプの「Galaxy Z Fold8」は、本体サイズが文庫本に近いため、紙の本に似た感覚で読書を楽しめる。

両者を縦に90°回転させた状態。縦長タイプ(左)はもともと正方形に近い比率ゆえ、回転させてもそれほど印象は変わらない

 もっともすでにスマホの縦長画面での読書に慣れたユーザーからすると、画面が正方形に近い縦長タイプのほうが、画面がワイド化され読みやすくなったと感じる可能性もある。このあたり、折りたたみスマホ以前の読書環境に左右される部分は大きそうだ。

コミック:単ページ、見開きとも横長タイプが有利

 続いてコミック。見開き表示にこだわる場合は、「Galaxy Z Fold8」のような横長タイプのほうが余白も少なく、自然な表示が行えるのは明らかだ。

 これが縦長タイプだと、見開き表示をするために本体を90度回転させなくてはならず、見開きの向きと画面が開く向きが90度ずれてしまう。半開きのまま読書するわけではないとはいえ、これは感覚的に違和感もあるほか、天地の余白もかなり大きい。こと見開き表示においては、横長タイプの圧勝と言えるだろう。

縦長タイプのGalaxy Z Fold8 Ultra(左)は90°回転させることで見開き表示が行えるが、天地の余白がやや目立つ
縦長タイプでの見開き表示は、見開きの向きと画面が開く向きが一致しておらず、感覚的な気持ち悪さがあるのは否めない

 では同じコミックでも単ページ表示の場合はどうだろうか。縦長タイプは画面の高さを生かして余裕のある表示が行えるが、左右に比較的大きな余白ができてしまう。これに対して横長タイプは、画面を縦向きにすることで、ほぼ余白の生じない単ページ表示を、より大きなサイズで行える。こちらもやはり、横長タイプのほうが適していると言える。

単ページ表示の場合、横長タイプ(右)は90°回転させることでフィット感の高い表示が行える。今回比較している2製品の比較だと、サイズについてもひとまわり大きい

 ただし1点だけ注意したいのは、今回検証している2製品を始め、多くの折りたたみスマホは、左右の画面を完全に開き切った状態か、もしくは90°開いた状態での利用を推奨しており、紙の本のように半開きの状態での読書は難しいことだ。

 特に横長モデルでは、中央の喉の部分を親指で押さえ、残りの4本の指で背中から支えることで、文庫本のような持ち方ができるが、指を離すと完全に開き切ってしまうため、一時的に半開きで保持することはできても、そのまま読書を継続することは難しい。そうした意味で、紙の本で読書する感覚とはどうしても差異が生じるので要注意だ。

折りたたみスマホではこの写真のような、紙の本に似た半開きでの保持はサポートされていないことがほとんどで、完全に開き切った状態で使うことになる

雑誌:横長タイプが有利だが画面サイズにもよる

 最後に雑誌はどうだろうか。雑誌はページサイズが大きいことから、折りたたみスマホの画面サイズで見開き表示を行うのは事実上困難で、単ページで表示するのが一般的だ。

 その場合、前述のコミックの単ページ表示と同様、横長モデルを縦向きにした状態が、ページサイズをもっとも大きく表示できる。余白もほとんどなく、快適な表示が可能だ。

 縦長モデルについては、本体の向きはそのままで表示させることになるが、画面の左右に余白ができてしまい、横長モデルと比べるとやや間延びする印象は否めない。全体としては横長タイプのほうが、適性は高いと言えるだろう。

 ただしこれは今回検証している「Galaxy Z Foldシリーズ」の話で、余白にこだわらずに表示サイズだけを優先するならば、シンプルに画面サイズが大きいモデルを選ぶのがベターで、そうした意味ではそもそもの画面サイズに大きく依存するということになる。

今回の2製品で比較した限りでは、横長タイプである「Galaxy Z Fold8」(右)のほうがフィット感も高く、またサイズもわずかに大きい

電子書籍ユースでは迷わず横長タイプを選ぶべし

 以上の通り、どの使い方においても、電子書籍ユースにおいては横長タイプが向いているというのが結論となる。その多くはアスペクト比に由来するものだが、コンテンツの種類が複数あるにも関わらず、ここまではっきりと差がつくのも珍しい。

 ちなみに内側ではなく外側の画面、いわゆるカバーディスプレイ側で読書をする場合も、画面が極端に細長い従来の縦長タイプよりも、横長タイプのほうがフィット感の高い表示が可能になる。可変レイアウトのテキストについても、縦長タイプは1行あたりの文字数が多すぎて視線移動が多くなるため、向き不向きで言うと横長タイプのほうが上だろう。

カバーディスプレイでテキストコンテンツを表示した場合の比較。縦長タイプ(左)は1行あたりの文字数が多すぎて視線移動に疲れがち
コミックのような固定レイアウトは、アスペクト比が極端になればなるほど表示サイズは小さくなる
コミックと同じく固定レイアウトを採用する雑誌の場合も言わずもがなだ

 なお今回の検証は「Galaxy Z Foldシリーズ」の両製品で比較した場合の話であり、他の折りたたみスマホに置き換えて考える場合はアスペクト比だけでなく、画面サイズによっても話が変わってくる場合があるので注意したい。

 またアプリについても、今回の例はあくまで「Kindleアプリ」を使うことを前提としており、別のアプリでは挙動が変わる場合がある。例えばデバイス側の設定とは別に、デバイスを回転させてもアプリの向きを保つ機能があれば、使い勝手に大きな影響を与える可能性はあり、そこは差し引いて考える必要はあるだろう。

 とはいえその多くは、アスペクト比で不利な縦長タイプの使用感の改善につながるもので、横長タイプのほうが電子書籍ユースに圧倒的に向いているという状況を覆すには至らないだろう。電子書籍の利用頻度が高い人は、今回の例における「Galaxy Z Fold8」のような横長タイプを迷わず選ぶべしというのが、本稿の結論だ。