山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

大画面カラーE Ink端末対決「Kindle Scribe Colorsoft」対「BOOX Note Air5 C」

どちらも10型オーバー、タッチペン対応

左が「Kindle Scribe Colorsoft」、右が「BOOX Note Air5 C」。いずれもカラーE Inkを搭載している

 11型のカラーE Inkを搭載したAmazonの電子書籍端末「Kindle Scribe Colorsoft」について、前回は7型の「Kindle Colorsoft」との比較をお届けした。

 今回は、ほぼ同等の画面サイズで同じくカラーE Inkを搭載した「BOOX Note Air5 C」と比較する。画面サイズがほぼ同じ、さらにタッチペンが使えるという意味でもよく似た両製品だが、具体的にどこが異なるのだろうか。実機を比較しつつ、その違いを見ていこう。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最終号を、サンプルとして使用している。

まずは両製品の特徴をざっとおさらい

 まずはざっと両製品を紹介しておこう。「Kindle Scribe Colorsoft」(以下Scribe)は今春登場した新モデルで、大画面モデル「Kindle Scribe」にカラーE Inkを搭載した製品だ。既存の7型モデル「Kindle Colorsoft」の大型版に相当するが、タッチペンにも対応し、手書きでの入力が行えるのが大きな違いだ。

 一般的にKindle端末と言えば実売価格は2~3万円台という印象が強いが、本製品はカラーE Ink搭載かつ大画面ということもあり、実売価格は106,980円からと、読書用途だけではなかなかポンと出せない価格だ。ちなみにラインナップはいずれもタッチペンとのセットとなっており、タッチペンなしでの単体販売は用意されていない。

「Kindle Scribe Colorsoft」。画面サイズは11型
USB Type-Cポートはボディ下部に、電源ボタンは側面にと、各面に分けて配置されている。滑り止めの四隅のゴム脚も特徴

 そしてもうひとつの「BOOX Note Air5 C」(以下BOOX)は、10.3型のカラーE Inkを採用したAndroidタブレットだ。画面サイズとスタイラスが利用できるという点では、先のScribeとよく似ているが、こちらは汎用的なAndroidタブレットであり、Google Playストアから任意のアプリをダウンロードして利用できることが特徴だ。

 そのため本製品は「Amazon Kindle」だけでなく、さまざまな電子書籍アプリを利用できるほか、タッチペンもプリインストールされているアプリ以外での利用が可能だ。なおこちらも前述のScribeと同様、タッチペン(BOOX Pen3)が標準添付されており、本体のみの単体販売は用意されていない。

「BOOX Note Air5 C」。画面サイズは10.3型
側面にUSB Type-Cポートとメモリカードスロット、上面には電源ボタン、さらに反対側には音量ボタンを搭載する

両者ともにカラーE Inkを採用。画面サイズもほぼ同等

 では両製品を外見周りから比較していこう。画面サイズは11型と10.3型ということで、BOOXのほうがひとまわり小さい。単体ではそれほど差があるように思えないが、実際に隣に並べるとかなりの違いがあって驚く。一方で厚みは0.4mm差で、持ち比べても違いは感じない。

 重量は、Scribeが実測399g、BOOXは449gと、画面が小さいBOOXのほうが重い逆転現象が起こっている。しかも差は50gとかなりあり、持ち比べると違いがはっきりわかるほどだ。BOOXは左側のベゼルに厚みがあるデザインになっており、単純に考えるとこのぶんの体積差ということになるだろう。

左がScribe、右がBOOX(以下同じ)。Scribeのほうが画面が一回り大きい。アスペクト比はともに4:3
厚みはほぼ同等。ちなみに公称ではScribeが5.4mm、BOOXが5.8mm
Scribeは実測399gと、400gの大台を割っている
BOOXは実測449g。E Inkは軽量なイメージがあるが本製品は決して軽くない

 ストレージ容量は、Scribeが32/64GBの2択なのに対して、BOOXは64GBの1択だが、BOOXはメモリカードに対応しており、容量を追加できる利点がある。とはいえ用途がほぼ限られているScribeと違ってBOOXは汎用端末なので、ストレージ容量を比べることにあまり意味はない。

 Wi-Fiはどちらも5GHz帯をサポート。BOOXが11acであるのに対してScribeは詳細な仕様が不明だが、ダウンロードしてローカルで読む場合に与える影響はそれほど大きくはないだろう。

 バッテリーについては、Scribeは持ち時間ベースで最大8週間、BOOXは容量ベースで3,700mAhと、公開されている基準自体がバラバラなのだが、汎用のAndroid端末であるBOOXは使い方によっては1週間持たないこともあり、大差がつく部分だと考えられる。用途を電子書籍に限定してWi-Fiオフで運用しても、数倍程度の差はつくだろう。

 セキュリティは、指紋認証およびパスワードに対応するBOOXに対し、ScribeはPINのみということで、BOOXのほうが利便性は高い。

 拡張性については、ほぼ皆無と言えるScribeに対して、BOOXはUSB Type-CポートやBluetooth経由でさまざまな周辺機器が使えるほか、背面のポゴピン経由で専用キーボードを接続してノートPCライクに使ったり、ページめくりデバイス「BOOX Tappy」を使ってリモートでのページめくりを行えたりと、自由度の高さは折り紙付きだ。

BOOXの背面下部には専用キーボードを接続するための拡張用のポゴピンがある
Bluetooth接続の専用オプション「BOOX Tappy」(右)。画面に触れずにリモートでページをめくれる

表示性能は同等も、大きく異なる最適化の手間

 さて気になるのは表示性能だ。どちらの製品も、解像度はカラーが150ppi、モノクロが300ppiとまったく同一。Scribeは採用しているパネルの詳細を公表していないが、BOOXが採用しているカラーE Inkパネル「Kaleido 3」と同一と見られる。そのため表示性能自体は、おおむね横並びと考えて問題ない。寒色暖色を個別に調整できるフロントライト、非光沢仕様の画面なども同様だ。

図表を含むページを表示したところ。モノクロと違って色分けされたグラフがきちんと見分けられるのはありがたい
部分をズームしたところ。フロントライトの加減で色調は違って見えるが表現力は同等だ
コミックを表示したところ。巻頭などのカラーページの表示にあたってはカラーE Inkは役に立つ
部分をズームしたところ。こちらも色調は異なるが中間色の表示の特性などはよく似ている

 もっともScribeがE Inkの調整なしでKindleストアをそのまま表示できるのに対して、BOOXはリフレッシュと速度のどちらを優先するか、色味やコントラストをどうするかといったE Inkの最適化設定を、利用するアプリごとに行う必要がある。これは自分好みの挙動や色調が選べる一方で、最適なパラメーターが見つかるまで試行錯誤しなくてはならない点で不利だ。

 BOOXは昨年リリースされたファームウェアV4.1で新たに「EInkWise」なる設定画面を追加し、従来比で設定はかなり容易になったが、それでも未知のカスタマイズ項目が深い階層に潜んでいて自力では気づかなかった、ということは依然ある。

 上に載せた画像は筆者が使っている設定に基づいているが、これがベストかはわからない。特定の電子書籍ではベストでも、別の電子書籍では設定を変えたほうがよい場合もあるし、カラーでは問題なくともモノクロではいまいちという場合もある。さらに表示品質を優先すると、Scribeに比べてページめくりの速度が遅くなるという問題もある。

BOOXの「EInkWise」。「おすすめする」「高速更新」「自分用に設定」のいずれかを選んでカスタマイズを行う。これをアプリごとに行う必要がある
カラーモードのカスタム項目。色調がかなりダイナミックに変化する。この画面では表示されていないが通常はプレビューを確認しながら調整できる
レイアウトのカスタム項目。こちらも変更を要する項目だが、プレビューで確認できないのが難点
このほかリフレッシュ、表示、カラーなどで細かいカスタマイズ項目が用意されている。どこに反映されるか不明な項目も少なくない
ほかのユーザーが作成、共有した設定を読み込んで反映させることもできるが、これも内容は千差万別
ScribeはBOOXのような複雑さはなく、設定項目と呼べるのは色のスタイルの「標準」「ビビッド」の2択のみ。使えるのがKindleストアだけということもあり、これで意外に困らない

 とくに電子書籍ストアのうちKindleストアに関しては、ScribeはAmazon自らE Inkのチューニングを行なっているわけで、BOOXでいくら手数をかけてチューニングしても、これを超えるのは難しいと考えられる。Kindleストアだけを利用するのであれば、BOOXで四苦八苦するよりも、素直にScribeを使ったほうがよいというのが筆者の意見だ。

 ただしそもそもの問題として、Scribeは対応する電子書籍ストアがKindleストアのみなのに対して、Google Playストアに対応するBOOXは実質ほぼすべての電子書籍ストアを使える強みがある。そのためKindle以外のストアを利用している人や、Kindleストアとそれらのストアを併用している人からすると、Scribeははなから候補に入ってこないことになる。E Inkがカラーになった今回の両製品でも、こうした構図は変わらない。

 最後にタッチペンを使った手書きノート機能にも触れておこう。ノートアプリはテンプレートの多さやテキスト変換の精度など、どこにフォーカスするかで評価は大きく変わってくるが、基本的な機能に限れば両者はよく似ており、大きな差はないというのが筆者の見方だ。

 なおScribeは今回のモデルでクラウドストレージとやりとりする機能が強化され、Googleドライブ、OneDrive、OneNoteとファイルのアップロード/ダウンロードなどが可能になった。汎用のAndroidで事実上どんなアプリでも使えるBOOXの優位性は変わらないが、Scribeも着実に差を埋めてきている印象だ。

両製品ともに手書きノート機能が利用できる。カラーによる色分けも可能だ
Scribeは今回のモデルでクラウドストレージとやりとりする機能が強化された
BOOXはより多彩なアプリと連携が可能だが、日本では馴染みのないサービスも多く、一概に比較できない

価格は意外にもBOOXのほうが安価

 以上のように、10~11型のカラーE Ink画面を特徴とする両製品だが、Kindleストアだけを使うのであればScribeがお勧め、それ以外のストアを利用する場合はBOOXがお勧めという、従来と同じ結論になる。対応するストアの幅が広いからといってあらゆる場合でもBOOXが有利にならないのが難しいところだ。

コミックなどの見開き表示については両製品とも問題なく行える。BOOX(下)のほうがひとまわり小さいが、余白の割合などはほぼ同じだ

 興味深いのが実売価格で、同じストレージ64GBで比較した場合、Scribeの115,980円に対してBOOXは89,800円と、汎用端末であるBOOXのほうが約2.5万円も安い。ストレージを32GBに減らせばScribeは106,980円で入手可能だが、一方のBOOXは64GBをベースにメモリカードでの容量追加にも対応できるので、融通ははるかに利く。今後の価格変動も考えられるので、価格が大きなウェイトを占めるならば結論は早いほうがよいかもしれない。