山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

11型で実売およそ4万円でもまったく違う! Amazon「Fire Max 11」対Blackview「Link 5」

左がAmazon「Fire Max 11」 、右がBlackview「Link 5」。いずれも11型のタブレットだ

 一般的に、電子書籍を快適に読むためには、200ppi以上の解像度を持つデバイスが望ましいとされる。例えば10~11型クラスのタブレットでは1,920×1,080ドットがこれに該当し、それより解像度の低い1,280×800ドットの製品は、どうしても敬遠されがちだ。本連載でもこうした低解像度のデバイスは、ほぼ無条件で候補から外してしまっているのが現状だ。

 もっともこれはコミックの細かいディテールや雑誌の注釈をきちんと表示できるという基準に則ったもので、コンテンツの内容によっては200ppiを切っていても快適に読める場合もある。解像度を妥協することで浮いた予算をほかの機能やオプションに回せば、同等の予算でより活用しがいのあるデバイスを手に入れられる可能性もある。

 今回は、画面解像度こそ1,280×800ドットながらキーボードやスタイラスペンまで付属して実売39,999円とリーズナブルなBlackviewの11型タブレット「Link 5」を、価格がほぼ同等のAmazonの11型タブレット「Fire Max 11」と比較し、それぞれどこに強みがあるのかを見ていく。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最終号をサンプルとして使用している。

Amazon「Fire Max 11」はキーボードなど別売で39,980円

 まずは両製品の特徴を見ていこう。「Fire Max 11」は、Amazonが販売するメディアタブレット「Fire」の最上位モデルで、画面サイズは11型、2,000×1,200ドットという、1,920×1,080ドットよりやや上の高解像度を特徴としている。

 実売価格は39,980円で、別売で用意されるカバー一体型キーボードを組み合わせて、Chromebookのように活用できるポテンシャルの高さが売りだ。一方でほかのFireデバイスと同じく「Google Play ストア」には対応せず、アプリの入手先は原則「Amazonアプリストア」のみであるため、利用できる電子書籍ストアは実質「Kindle」および「dマガジン」のみという制限がある。

 その他のスペックは、ストレージが128GB、ほかに最大1TBまでのメモリカードに対応している。メモリは4GBとFireタブレットの中ではもっとも多く、下位にあたる「Fire HD 10」との差別化要因になっているが、性能的にはハイエンドというよりもミドルレンジに位置づけられる。このほか指紋センサーを搭載するなど、格安タブレットとは一線を画する特徴も備えている。

「Fire Max 11」。「Fire」の最上位モデルに相当する
電源ボタン一体型の指紋認証センサー(左端)を搭載する
別売のキーボードを接続するためのポゴピンを底面中央に備える
重量は実測496g。11型としては平均的な値だ

Blackview「Link 5」はキーボードやスタイラス込みで39,999円

 一方のBlackview「Link 5」は、この8月に発売されたばかりのAndroid 17搭載のタブレットだ。画面サイズは11型で解像度は1,280×800ドットと低いが、一方で実売39,999円という価格ながら、キーボードやマウス、スタイラスなどが同梱されるなどコスパの高さが魅力だ。

 ストレージは前述の「Fire Max 11」と同じく128GB、メモリカードは最大2TBまで対応するなど拡張性も高い。一方で指紋認証には対応しないなど、ハードウェア的にコストがかかる部分はバッサリと切り捨てているのは、格安タブレットではよくある傾向といっていい。

 またAmazonの製品ページではメモリ16GBであることを大きくアピールしているが、実体は物理メモリ4GB+仮想メモリ12GBという構成であり、仮想メモリが大部分を占めていることについての記述がわかりにくいのはいただけない。後述するがベンチマークのスコアも最低レベルで、価格優先でかなり無理をしている印象は否めない。

Blackview「Link 5」。最新のAndroid 17を搭載している
最近では珍しい開放型のカードスロットを備える
上面には電源ボタンおよび音量ボタンを備える。指紋認証センサーは非搭載
重量は実測563gでずっしりと重い
キーボードやマウス、スタイラス、保護カバーなど付属品は豊富
Android 17を搭載する。なおメモリの大部分を仮想メモリが占めており、物理メモリはあくまでも4GB

同じ「4万円弱」ながらパフォーマンスには大差あり

 本稿は、同じ4万円弱のタブレットでありながら両者の性格がまったく異なることを紹介し、製品選びにあたって何を優先すべきかを見ていくというのが主旨だが、検証に先んじてベンチマーク結果を紹介しておこう。というのもこの両製品には性能面でかなり極端な差があり、まずここを押さえておかなければ、そこから先の話に入るのが難しいからだ。

 結論から言うと、世界初のAndroid 17搭載タブレットという触れ込みのこの「Link 5」、性能面ではかなり無理があり、Google Octaneによるベンチマークスコアはなんと1万の大台すら切る「6569」。前述の仮想メモリを最大の12GBに設定して複数回テストを行っても、1万を超えることはなかった。

 一方の「Fire Max 11」は、スコアが2万台はあり、差は3~4倍といったところだ。先日紹介したODEAのエントリー向けタブレット「A12」ですら1万点は超えていたので、両者の差はかなり極端といっていい。

Google Octaneによるベンチマークスコア。「Fire Max 11」(左)は「23985」、「Link 5」(右)は「6569」と3倍以上の差がある
「Link 5」はデフォルトでは仮想メモリが無効化されているが、有効にしてもベンチマークスコアが1万を超えることはなく、8千~9千前後が精一杯だ

 実際に製品を使っていても、「Link 5」はタッチしてから反応までが必ずワンテンポ待たされる始末で、電子書籍のページをゆっくりめくることを心掛けてようやく使い物になるというレベル。Webブラウジングによる上下スクロールのように、画面全体を書き換える処理は画面がカクつき、見られたものではない。

 物理メモリが同じ4GBでここまで差がつくのは、主にSoCの違いによるものだろう。「Fire Max 11」がMediaTek MT8188Jというミドルクラス向けのSoCなのに対して、「Link 5」はAllwinner A537というエントリークラスのSoCで、根本的な処理性能が不足していることになる。

 またメモリ2GBから動作するAndroid 11をベースとした「Fire Max 11」に対し、「Link 5」が搭載するAndroid 17はメモリ4GBが最小限とされており、物理メモリの容量も足りていない可能性が高い。最新のAndroid 17搭載は確かに売りにはなるが、性能面では足を引っ張っていると考えてよさそうだ。

「Link 5」は普通に「Kindle」アプリを起動するだけでも、読み込みに時間がかかりすぎてこのような表示が出る始末

低解像度が許容できるのはどのようなケース?

 と、パフォーマンス面に差があることを認識した上で、続いて仕様的にも大きな相違点であることがわかる、画面解像度の違いについて見ていこう。

 画面サイズは両者ともに11型ということで表示サイズはほぼ同等だが、「Fire Max 11」は213ppiと、解像度の目安となる200ppiをかろうじてクリアしているのに対して、「Link 5」はわずか137ppi。特にコミックを見開き表示した場合の細かなディテールや、雑誌の注釈など、同じ11型でありながら表現力の違いは明白だ。

コミックを表示したところ。上が「Fire Max 11」、下が「Link 5」。画面サイズはともに11型なので表示サイズそのものに差はない
コミックの部分アップ。左が「Fire Max 11」、右が「Link 5」。解像度の違いによるディテールの差は明らか
雑誌を表示したところ。左が「Fire Max 11」、右が「Link 5」。こちらもサイズの差はなく、上下の余白の面積も変わらない
雑誌の部分アップ。左が「Fire Max 11」、右が「Link 5」。「Link 5」は注釈の細かい文字が読み取れない。文字が画像化されている雑誌コンテンツではしばしばこのようなことが起こる

 その一方で、テキストコンテンツでは、フォントサイズが大きくなればなるほど、解像度の差は感じにくくなる。普段からフォントサイズ[大]や[特大]といった設定で使っている場合は、200ppiを切る解像度でも大きな問題にはならないだろう。コミックを見開き表示ではなく、単ページ表示で読んでいる場合も同様だ。

 なお電子書籍アプリによっては、解像度が低いデバイスではフォントサイズ[小]などの設定があらかじめ行えなくなっている場合もある。今回試している「Kindle」アプリがまさにそれで、「Fire Max 11」でいうところの[小]に相当するフォントサイズが、「Link 5」では選択できなくなっている。解像度の関係で実用的でないフォントサイズは、ユーザに選択させないようにしてある、ということなのだろう。

テキストコンテンツを表示したところ。上が「Fire Max 11」、下が「Link 5」。こちらも表示サイズに差はない
テキストの部分アップ。フォントサイズ中程度だと文字の判別に問題はなくとも解像度の低さがストレスになることもしばしば
フォントサイズをさらに大きくした状態。老眼などではこのくらいのサイズで読むケースもあるだろう
フォントサイズを大きくすればするほど解像度の差は感じにくくなるので、常時こうした設定で使っている場合は、たとえ200ppiを切っていてもあまり問題にならない

 このほか動画再生では、動きが速いコンテンツほど、デバイスの解像度の低さは問題になりにくい。電子書籍でフォントを大きくして読む場合も含め、普段からそうした使い方が多いようであれば、低解像度であっても問題ないケースはそれなりにあると考えられる。

これ以外の相違点は?

 ここまで見てきたように、今回比較している2製品のうち「Link 5」を敢えて選ぶならば、パフォーマンスおよび解像度を許容できることが最低条件となるわけだが、この両製品にはこれ以外の相違点ももちろんある。最後にざっとまとめておこう。

 「Link 5」の強みはキーボードやマウス、スタイラスが付属することだが、これらの実用性はパフォーマンスに大きく影響するだけに、本当の意味で強みとなるかは微妙なところ。キーボードが必要な場合は「Fire Max 11」のオプションとして用意されるキーボードの存在も視野に入れるべきだろう。ちなみに本体+キーボードセットは41,980円と、本体のみ(39,980円)との価格差はそれほどなく、なおかつ日本語配列が用意される。

 また「Link 5」がGoogle Playストア対応でさまざまなアプリを利用できるというメリットも、アプリが実用レベルで動作するかとは別の話なだけに、買ったはいいが満足に使えなくてガッカリ、というケースは想定しておく必要がある。ただし電子書籍アプリに関しては、それほどパフォーマンスは要求されないジャンルゆえ、最低限の使い勝手は担保されると見てよいだろう。

 一方で「Fire Max 11」の強みのひとつに剛性の高さが挙げられる。本体の両端を持って軽くひねっただけでギシギシと音を立てる「Link 5」とは対照的に、「Fire Max 11」はボディが薄いにも関わらず、ひ弱さはまったくない。用途によっては強力なアドバンテージになるだろう。

両製品の厚みの比較。左の「Fire Max 11」のほうが右の「Link 5」よりも明らかに薄い

 このほか電子書籍と関係ないところでは、「Fire Max 11」はGPS非搭載である点は気をつけたい。ちなみに「Link 5」はWidevine L1対応をアピールしているが、これは「Fire Max 11」も対応しているので差別化にはならない。動画配信サービスでHDコンテンツを中心に観ているようであれば、解像度が問題になることは少ないはずで、そうした意味では電子書籍よりも動画再生に向いたデバイスと言えるかもしれない。

 以上のように、もし両製品のパフォーマンスが同等レベルであれば、同等の価格で解像度を優先するか、それとも付属品の充実ぶりを優先するか、という興味深い事例となったはずだが、今回は『それ以前に最低限の性能が備わっているか見極めが必要』という話にしかなり得ないのがもったいないところ。ともあれ、低解像度のデバイスを敢えて選ぶにあたって、ひとつの教訓になる話であり、読者の方には参考にしていただければ幸いだ。