使ってわかるCopilot+ PC

第112回

NPU/GPU/CPUのAI性能はどう違う? 「Geekbench AI」で測定してみた

量子化スコアではNPUが高速。GPUとの特性の違いが見える

「Geekbench AI」の画面

AI処理性能を調べるベンチマークテスト

 NPUの性能を気にする場面は今のところほとんどないが、より高性能なNPUが搭載され、利用シーンが増えていくと、性能を知っておきたいと思う時が来るはず。今の時点でのAI性能がどのくらいなのか、調べておくのも面白い。

 AIベンチマークソフトで最もお手軽なものの1つが、「Geekbench AI」だ。この結果を見ると、NPUの何が優れているのかがより見えてくる。早速試していこう。

NPUは低精度の推論が高速

 本ソフトはシェアウェアだが、スコアを自動でオンライン投稿する設定(トライアウトモード)であれば無料で利用できる。今回はこちらを利用する。

 設定画面では3つの項目を選べる。1つ目の[AI Framework]は、実行するPCで利用可能なAIフレームワークの選択。2つ目の[AI Backend]は実際に処理を行うハードウェアの指定。3つ目の[AI Device]は使用するハードウェアの選択だ。

 Snapdragon X Plusを搭載したCopilot+ PCでは、[AI Framework]は[ONNX]のみで、[AI Backend]は[CPU]と[QNN]が選べた。[QNN]はQualcommのAI処理用統合APIで、NPUも含まれているので、こちらに設定する。[AI Device]はSoC名が書かれており、他に設定はできない。

[AI Backend]は[CPU]と[QNN]が選べた

 この状態で下部にある[Run AI Benchmark]をクリックすると、ベンチマークが始まる。しばらく待つと、結果がWebブラウザーに出力される。

実行中の画面は派手な演出などはなく、シンプルに進行度だけが表示される

 結果は、[Single Precision Score](単精度)、[Half Precision Score](半精度)、[Quantized Score](量子化)の3つに分けられる。スコアはIntel製CPU「Core i7-10700」を1,500としたもので、スコアが2倍になれば性能も2倍の計算になるという。

 実行結果は、[Single Precision Score]が1,354、[Half Precision Score]が18,630、[Quantized Score]が49,543となった。

[QNN]の実行結果

 続いて[AI Backend]を[CPU]にした場合は、[Single Precision Score]が1,399、[Half Precision Score]が2,486、[Quantized Score]が5,036となった。

[CPU]の実行結果

 NPUはAI処理専用チップと言われるが、同じAI処理でも、単精度ではCPUより遅い。しかし精度が低くなると、圧倒的な性能を発揮するようになる。NPUは低精度の推論に特化したチップなので、このような結果になる。

GPUと比べてどうか?

 さらに筆者が所有するデスクトップPCでもテストした。CPUはIntel製「Core i5-13600K」、GPUは「GeForce RTX 4080」を搭載。ただしGPUは消費電力リミットを65%に制限して、発熱を抑えた設定にしている。

 [AI Framework]は[ONNX]、[AI Backend]は「DirectML」を選ぶと、「GeForce RTX 4080」で処理できた。結果は[Single Precision Score]が35,000、[Half Precision Score]が52,694、[Quantized Score]が27,077だった。

「GeForce RTX 4080」による結果

 低精度の推論に特化したNPUに対して、GPUは高精度でも高い性能を発揮するのがわかる。GPUの性能だけでなく、メモリ(VRAM)の速度や使用するモデルによっても値は変わるが、NPUとGPUの傾向の違いははっきり出ている。

 ちなみに「Core i5-13600K」の内蔵GPUの性能を測る場合は、[AI Framework]は[OpenVINO]、[AI Backend]は[GPU]に設定する。この場合、[Single Precision Score]が2,715、[Half Precision Score]が3,943、[Quantized Score]が6,182となった。GPUなら何でもNPUを上回るかというと、そういうわけでもない。

「Core i5-13600K」の内蔵GPUでの結果

 最後に、このベンチマークテストでわかるのは、絶対的な性能だけだ。NPUの優位性は低精度の推論が高速なことだけではなく、低い消費電力で動かせて、CPUやGPUのリソースを消費しないことにある。AI処理も適材適所というのが、この結果を見てよりわかりやすく伝わったのではないだろうか。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜で連載『石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』』(AKIBA PC Hotline!に移動)、『使ってわかるCopilot+ PC』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/