杜の窓（編集後記）

【今週の並び順】
AFCアジアカップ2011で大会MVPに選ばれると思う選手、五十音順！

（11/01/28）

柳英俊（yanagi@impress.co.jp）

岡崎慎司（アジア相手やったら容赦ないな！）

　かつて中国には太陽が10個あったのだそうです。みんな天帝の子供たちで、名前はそれぞれ甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸と言います。どこかで聞いたことがある名前ですけどキニシナイ。彼らは1日に一人ずつ、天を巡って大地を照らします。それが1周すると一旬。今でも上旬・中旬・下旬って言いますよね。

　子供たちは10日に1回しか散歩させてもらえないのに飽き飽きしていました。「みんなで一緒に外出て遊ぼうぜ！」たちまち、地上は飢饉になりました。困ったのは地上の人です。当時、地上を束ねていたのは堯という偉い人でした。堯は見かねて天帝にどうにかしてほしいとお願いしました。

　ホントを言えば、自分の子供のしつけは自分でするべき。でも、天帝は忙しいので、ゲイに代わりを頼みました。ゲイは弓の得意な神様です。だいたい中国で弓の上手な人と言えば、夏のゲイ、楚の養由基、漢の飛将軍・李広と相場が決まっています。日本でいえば那須与一とか、次元大輔とか、野比のび太みたいなものですね。

　ゲイは、矢筒に10本の矢を入れて出発しました。なぜなら、ゲイの弓矢は百発百中。10本あれば全部射落とせるからです。それをみた堯はビビりました。「あかん、このままやったら太陽がなくなってまう！」一計を案じた堯は、ゲイの矢筒からそっと矢を一本抜いておきました。ゲイは全部弓を放ったのに、1匹太陽が残ってることを不思議に思いましたが、あんまり細かいことは気にしない神様だったので、「まぁ、いいや」と思いました。

　おかげで、今でも太陽は毎日、独り天を巡っているのです。だれが生き残ったのかは、僕は知りません。

　後日談。

　子供を（ほぼ）皆殺しにされた天帝は、自分の怠惰を棚に上げてブチ切れ。おかげで、ゲイは神籍を剥奪されてしまいました。

　さて、ゲイの奥さんを嫦娥といいました。嫦娥は弓以外とりえのないゲイに尽くしてきた良妻でしたが、ゲイの神籍剥奪には心底愛想を尽かしてしまいました。今の日本でいえば、旦那が正社員を首になってアルバイトにジョブチェンジするようなものです。人間になると不老長寿でもなくなるので、肌年齢も心配です。当時は、ドモホル○リンクルもありません。

　嫦娥は怒り狂って「何とかしろ！じゃないとご飯は抜き！」といってゲイを家から追い出します。困ったゲイは、西王母のもとへ行きます。西王母は、西遊記でも悟空を何度も助けてくれることでもわかりますが、極度のお人よし、もとい、いい人なのでゲイのことも助けてあげたいと思いました。

　「仙丹を2つあげましょう。1粒で不老長寿、2粒で神様になれます。」「グ○コみたいなもんやな」「あほ、ちゃうわ。話を聞け。――でも、2粒飲む時は気を付けてね……っておいこら！人の話全部聞けや！」

　ゲイは喜び勇んで嫦娥のもとへ飛び帰りました。「一粒ずつ飲めば、不老長寿だぜ」けれど、嫦娥は「冗談じゃない」と思いました。神様になれなければ、神様友達とお茶をしたりディナーショーへ出かけたりできないじゃないか。嫦娥はこっそり、仙丹を2つ、飲んでしまいました。

　するとどうでしょう。自慢のお肌がブツブツに、腰のくびれはメタボに。おやっ、じょうがのようすがおかしいぞ。

　とうとう、嫦娥はお月様になってしまったとのことです。のちのち、ロケットの名前にもなりました。

（2回も編集後記をお休みしたので、今回は長編にしてみました。中学生の頃に読んだ中国の神話ですけど、本をなくしちゃったのでところどころ間違っていると思います。）