彼女のために成り上がるRPG「ヒロインをもう一度」

　『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、突然とある王子様に連れ去られてしまった彼女を取り戻すべく、主人公が自らも一国の王に成り上がろうとするRPG「ヒロインをもう一度」を紹介しよう。

力、富を得て、さらには王も目指す成り上がりRPG

突然王子に彼女を連れ去られてしまう主人公

10日間で力と富と権力を手に入れるため、冒険へと旅立つ

　「ヒロインをもう一度」は、2D見下ろし画面のRPG。ある日、主人公と彼女のデート中に突然現れた“ナゴヤ”の王子は彼女を妻にすると宣言し、強引に連れ去ってしまう。絶望する主人公だが、お手伝いさんの励ましもあり、王子と同じ立場に成り上がり、彼女を取り戻そうと決意する。しかし、王子と彼女の結婚までに残されたのはたったの10日。わずかな期間で力、富、権力を掴むべく、主人公は冒険に出る……というのが主なストーリーだ。

　このゲームで大きなポイントになるのが時間経過だ。街の中や一部のダンジョン以外は、何もしなくても時間が経過していき、1日のうち主人公が行動できるのは朝の6時から深夜0時までと決まっている。0時を超えると、彼女が捕らわれているナゴヤ城にお世話係として潜入した主人公のお手伝いさんが彼女の様子をメールしてくれるので、それを確認して1日が終了となる。

　主人公が10日以内に達成しなければいけない目標は、モンスターの討伐や道場での修行、食事や装備などで“力”をアップすること、5,000万Gold以上の“富”を得ること、古代都市トーキョを復興させて“王”になることの3つ。この達成順序はプレイヤーにゆだねられており、時間内であれば、自由に冒険できるのも大きな特徴となっている。

戦って強くなるかお金で強くなるか、決めるのは自分

能力は戦闘のほか、料理を食べることでもアップするのが面白い

戦闘はコマンド選択型。上にあるゲージの順番に行動する

　まずは“力”のアップについて紹介しよう。主人公は、自宅に突如現れた“妖精さん”と冒険することになる。レベルアップの概念はなく、戦闘を重ねることで、攻撃力を表す“STR”、すばやさを表す“DEX”、魔法やスキルの威力に関わる“INT”のステータスがアップしていく。また、朝、昼、夜には食事の時間が決められており、その時間帯に街で食事をすると、料理の内容によって最大HPやSTR、INT、そのほか防御力を表す“DEF”をアップできる。さらに、1日が終わることでも能力が向上する。

　戦闘はフィールドを徘徊しているモンスターに触れることでスタート。逆に触れない限りは戦闘にならないので、まったくザコ戦をしないで進むことも可能だ。戦闘はコマンド選択型だが、画面上部のゲージに表示された順番での行動となる。DEXの数値が高いほど、すばやく順番が回ってくる仕組みだ。ゲージで行動順を確認できるので、『次は敵の攻撃となるので、コマンドのひとつ“防御体勢”を選択して防御力をアップさせておこう』『敵の攻撃までまだまだ余裕があるので、威力の高いスキルで大ダメージを狙っていこう』といった戦略を楽しめる。

　序盤はHPが少ないので、ボスなど強い敵と戦うときは、防御が非常に重要だ。ただし、HPがゼロになって全滅しても教会からの再スタートとなるだけで、ペナルティは一切ない。とても勝てないような敵に出会って全滅してしまった場合は、倒すのを後回しにして別のダンジョンの探索に力を入れるといった割り切りも、スムーズに進むためには大切となる。

　ボス戦で重要となるのが“属性”と“状態異常”だ。属性は剣や弓などによる攻撃の“物理”のほか、“火”、“水”、“風”がある。火の弱点は水。水の弱点は風、風の弱点は火とジャンケンのような三すくみの関係で、大ダメージを与えるためにはモンスターの属性を知り、弱点となるスキルなどを使っていけばいい。ボスの属性に関しては、ほとんどの場合は街などで情報を聞けるほか、火山や氷の塔に住むなど明らかに属性が推測できるような場合もある。

　状態異常には、一定間隔でダメージを受け続ける“毒”や“出血”、攻撃が当たりにくくなる“盲目”、魔法やスキルの発動ができなくなる“放心”、一定時間動けなくなる“麻痺”がある。どれも受けると厳しいものだが、状態異常への耐性を上げる装備や回復スキルがあるので、これらを活用するのが重要だ。

ボスと戦闘するかは選べる上に、近くには必ずセーブを促す“おせっかい羊”が居るという親切ぶり

　とはいえ、DEF以外の能力は潤沢なお金さえあれば、戦わなくても向上できる手段が用意されている。これを卑怯な手段と考えるか、便利と考えるか、これも自由度の高いゲームならではの選択肢といえるだろう。

ピラミッドの攻略で富をゲットせよ

お金を儲ける基本は特産品を仕入れて、ほかの地域で売ることだ

　お金を稼ぐ、という点で一番手っ取り早いのが貿易だ。本作の世界には、アイアイアーチの地域に“クリスタル鉱石”、ヒダタカフーギに“木材”、イセシマミーエに“食用チェリー”の特産物があり、それを買い付けて、ユキグニやエジプトなど資源の少ない街で売れば簡単に利益を出せる。モンスター討伐や敵がたまに落とすお金で数万Goldは簡単に貯まるので、それを元手に貿易すれば、手持ちのお金を最大まで増やすことも難しくはないのだ。

　しかし、世界にとどろく“富”を得るにはエジプトにあるピラミッドの攻略が必須。ピラミッドの攻略時には仲間が増え、しかもピラミッド内は時間の経過がない。無理せず、ゆっくりと攻略できるので、1日目から制覇も可能となっている。

王になるにはトーキョの復興が必須

　“王”になるためには、モンスターの大群によって廃墟となってしまった地域“トーキョ”の復興が必要だ。これは、トーキョの城に入ればイベントが進行していく。しっかりと能力をアップしていれば、それほど苦労なく復興までたどり着けるハズだ。

王になるとさまざま“政策”を実行できるのが楽しい

　面白いのは、復興して王様となったあとだ。領土を広げたり、兵士を鍛えたり、高価な装備品を安く購入できたりと、いろいろなお楽しみがある。これほどの権力があるならすぐに彼女を取り戻せばと思うほどだが、そこは実際にプレイして体験してほしい。

だんだんと世界の秘密が見えてくるのが面白い

魔王や神が存在するといった世界の秘密が少しずつ見えてくるのも醍醐味

　彼女を取り戻すために成り上がる、というゲームではあるが、世界には魔王がいたり、神がいたり、人の言葉を話す犬がいたり、そしてそれらはある事件とつながっていたりと、冒険を進めていくうちにあちこちに散りばめられている謎が見え隠れするのも面白いところ。隠しダンジョンや秘密の通路などもあり、世界の隅々まで調べたくなる魅力をもっている。ファンタジー世界のようで電車や飛行機があるなど一見ミスマッチにも思える世界観だが、プレイしていて違和感を感じさせない丁寧な作りだ。

　日々変動する特産物の価格をいかに把握して大きく儲けるか、ボスの弱点となる属性を効率よく攻撃しつつ状態異常をどう回避、回復していくのか、効率よくマップを移動するのにはどうすればいいのか、など楽しく悩めるシーンが多いのが大きな魅力。アニメや漫画のパロディと思われるセリフが多い点は好みが分かれるところだが、さまざまな要素をうまくミックスさせているRPGであるのは間違いない。世界を冒険している、という気持ちにさせてくれる1本だ。