週末ゲーム

第525回

約1時間で世界を救うRPG「武神の目覚め」

RPGの面倒な部分を驚きのアイデアで打破した超サクサクゲーム

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、とにかくサクサク進行するRPG「武神の目覚め」をご紹介する。

死んだらレベルが上がってお金ももらえる!

ダンジョンの奥地からゲームスタート

 「武神の目覚め」は、2Dグラフィックスによる“見た目は”ベーシックなRPG。1人の主人公が、モンスターの襲来により滅亡へ向かおうとする国を救うストーリーが展開される。

 “見た目は”とわざわざ強調したのには理由がある。本作の特徴は、とにかくゲームの進行が早いこと。筆者が初めてプレイし、スクリーンショットの撮影や原稿のためのメモを取りつつ、宝箱もしっかり集めて片っ端からプレイした結果、クリアまでにかかった時間は約1時間半。普通に遊べばおそらく初見でも1時間ほどでクリアできる。

 こんな短時間でクリアできる理由は、単純にボリュームが少ないから、ではない。RPGをプレイしているとあちこちに見える、時間のかかるさまざまな要素を排除しているからだ。その最も印象的なものが、ゲームを開始して1分で見える。

 どこかのダンジョンの最奥に出現する主人公は、すぐに最初のモンスターに遭遇する。戦うと、あっさりやられてしまう。『え、最初の敵に負けるの?』と思った次の瞬間、『あなたは立ち上がるための力を得た!』というメッセージとともに、経験値とお金を獲得。レベルが上がった。

ゲーム開始直後の初バトルで、あっさり倒されてしまう
負けたにも関わらずレベルアップ。筆者の知るRPGの常識が崩壊する瞬間

 『おや?』と思ったら、主人公が最初の位置に出現した。もう一度モンスターのところに行って戦うが、まだ力及ばず死んでしまった。そしてまた同じメッセージが出てレベルが上がった。再び復活して戦う。強くなった主人公は、今度こそ勝利した。

 一般的なRPGでは、勝てない敵が現れたら弱い敵と戦ってレベルを上げるという行為が必要になる。これは多くの場合“かったるい作業”だ。そこで本作は、強い敵が出てきたらレベル上げをするというRPGの常識を逆手にとり、『だったら死んだらレベルが上がればいいじゃん』という形を取った。この発想が素晴らしい。

 強そうだなあと思う敵がいても、気にせず戦う。そもそも本作には“逃げる”というコマンドがないので、自分と敵のどちらかが死ぬまで戦うことになる。死んでレベルが上がるのは序盤だけだが、それ以降も死んだ時のペナルティは初期位置に戻されることくらい。しかもゲームが進むと移動ポイントが発見でき、コマンド一発でそこに移動できるようになるので、死んでもほとんど時間の無駄にならない。

強そうな敵だなあと思いつつ戦う。やっぱり無理だと思っても“逃げる”コマンドは存在しない

 ちなみに最初のモンスターに到達する前に武器が拾えて、それをきちんと装備すればレベル1でも普通に倒せる。とはいえその先にもやっぱり強い敵がいて、倒せないと負けてしまい、レベルアップする。

ゲームのプレイ時間を短縮するさまざまな仕掛け

モンスターは見える上に動かないので、避けて通ってOK

 では本作を紹介しながら、さまざまな時間短縮の仕掛けを見ていこう。まずモンスターはマップ上にシルエットが見えており、敵の強さもレベルとして表示されている。シルエットは動かないので、通路をふさぐように配置されたモンスター以外は避けて進むことが可能。

 バトルはシンプルなコマンド式で、攻撃して反撃されてのターン制になっている。戦いに勝てば、HPや状態異常は自動的に回復するので、バトル後のフォローは不要だ。

 マップ上の宝箱は、移動する感覚でぶつかれば開く。タルや壷も、その場所に移動しようとすると勝手に壊れて中身を拾える。アイテムを獲得するとその情報がウィンドウに表示されるが、ボタンを押してウィンドウを消したりする必要はなく、そのまま歩いて進んでいればウィンドウは勝手に消える。複数の宝箱があれば、どんどん移動してどんどん開いて構わない。

夢の宝箱一気開け。何を取ったかわからないけれど気持ちいい
壷やタルもバキバキ壊して進める

 設定画面には、移動やバトルを倍速化する設定項目が用意されている。移動を倍速化すると戦いたくない敵にもうっかり触れてしまいがちなので、ゲームに慣れてから倍速化するといい。またバトル時は、[Shift]キーを押すことでさらに超高速で進行する。

 少しゲームを進めると、設定に無敵モード、経験値&お金4倍モードの設定が追加される。どちらもいわゆるチートモードなので、使うか使わないかはプレイヤーが判断すればいいが、これを使えばゲームの進行がさらに早くなる。

移動速度を2倍にする設定を標準搭載。慣れてから使えばサクサク度アップ
究極の設定“ムテキモード”がゲーム序盤に入手可能。使うかどうかは個々の判断で

 このほかにも、見た目によらず斜め移動が可能だったり、どこでもセーブが可能だったり、[F12]キーで即ロードできたりする。また、ゲームをいったん終了してから再開すると、タイトル画面などもなく、いきなりセーブ地点から再開される。

 これらの要素を理解して、ゲームに慣れてくるとどうなるか。高速で移動しながら戦いたい敵とだけ戦い、ボタン押しっぱなしで超高速にバトルが進行し、あっという間にレベルアップ。宝箱や壷もスパスパと連続で開けて、どんどん先へ進める。RPGで『ここがストレスだなあ』と思われるところは片っ端から対処する。そういう作者の気持ちが各所から伝わってくるゲームデザインだ。

頭を使って戦うRPGの醍醐味も

モンスターの種類に合わせた武器選びはとても重要。武器はバトル中に変更できる

 死んでもペナルティがない以上、超高速で敵と戦ってレベルを上げさえすれば、最後まで何も考えなくてもクリアできる、というのは本作の魅力のひとつだ。しかし、頭を使えば有利になるような仕組みもきちんと用意されている。

 まずは武器の選択。武器には攻撃力と攻撃回数に違いがあるので、敵の種類や数に合わせて武器を選ぶ。弱い敵が多い時には攻撃回数の多い武器、防御力が高い敵には一撃の強い武器、といった形だ。武器はターンごとに変更できるので、敵に合わせた武器を逐一選んで攻撃できる。予想されるダメージも表示されるのでわかりやすい。

 また武器には炎、光、闇といった属性や、毒などの特殊効果が付いたものもある。敵にも属性に対する強弱があり、攻撃時にそれが表示される。適切な武器を選んで戦えばバトルが楽になり、結果的にレベルアップも早くなる。

武器に付与された属性と、モンスターの弱点属性を合わせて戦うのが基本。大ダメージを与えられる

 装備品には武器の他に、鎧、指輪、護符がある。それぞれ防御力を高める以外にも、属性防御の強化や特殊効果の無効化、バトル開始時に能力上昇効果を付与などの恩恵が得られる。ボス戦では敵の属性や特殊効果に合わせて防具を選ぶことで、ぐっと戦いを楽にできる。

 バトルではアイテムも使用可能。アイテムには一度使うとなくなる消費型のものと、何度でも使える杖がある。杖は攻撃の代わりに特殊効果を発動させるものだが、消費型は使うと即発動し、攻撃ターンを消費しない。HPが減ってきたら回復アイテムを使ったり、瀕死の敵に攻撃アイテムを使って倒したりしても、何事もなく続けて自分の攻撃ができる。消費アイテムの連続使用も可能だ。

防具類で得られる恩恵も重要。敵の攻撃属性に合わせて属性防御を上げると効果的
アイテムはかなり強力な効果をもつものもある。ここぞという時は遠慮なく使いたい

短いが故にできる、繰り返しプレイの楽しみ

クリア後には主要イベント到達時間やモンスター討伐数など詳細なデータが表示される

 強敵と当たって行き詰まったら、アイテムと装備を練り直して対策するのも面白い。面倒なら、適当に近くの敵と当たってサクサク倒してレベルを上げてもいい。レベルが上がれば技能を身に付け、一気に強さが跳ね上がることもある。雑魚狩りは間違いなく作業なのだが、バトルがあっという間に終わり、レベルがどんどん上がるので、作業感より気持ちよさが勝ってしまう。

 負けたところですぐ復活して戻ってこられるので、頭を使ってプレイしなくていいというのも事実。しかし、最短クリアや最低レベルクリアなど、自ら目標を立ててプレイするのも本作の面白いところだ。何せ1時間もあればクリアできるのだから、『今日は最短クリアを目指そうか』といった遊び方も気楽にできる。

 クリア後には、クリアした時間はもちろん、主要なイベントをクリアした時間がリストアップされる。さらに倒したモンスターの数や宝箱を開けた数、アイテムを使った回数も表示される。あえて移動ポイントを取らない、アイテムを一切使わないといった縛りをかけたプレイも、クリア後の表示が証明書になってくれるだけに、やりがいがある。

 あっという間にクリアできる割には、RPGを1本クリアしたという充足感がある。面白かったので引き続き遊びたいという気持ちもある。グラフィックスや演出はリッチとは言えないが、遊び始めてすぐにどうでもよくなる圧倒的な気持ちよさが、本作にはある。

 長々と書いてきたが、最後に本作への賛辞として、本当は最初に言いたかった一言で締めたい。『遊べばわかる』。

プレイ時間は短くても、さまざまな場所を冒険し、いくつものボスを倒さねばクリアできない。終わったあとはしっかり遊びきった感が得られる

ソフトウェア情報

「武神の目覚め」
【著作権者】
Foomal 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-

(石田 賀津男)