使ってわかるCopilot+ PC

第66回

注目のポータブルゲーミングPC「ROG Xbox Ally X」は「Copilot+ PC」として活用できる?

AMD製NPU搭載でいま使える機能を探る

「ROG Xbox Ally X」の実機

ポータブルゲーミングPCにAI機能はあるのか?

 10月16日に発売されたポータブルゲーミングPC「ROG Xbox Ally X」は、Ryzen Z2 Extremeを搭載した高性能なマシンだ。それと同時に高性能なNPUも搭載しており、「Copilot+ PC」でもある。

 これはポータブルゲーミングPCがAIに積極的だというより、高性能なGPUを内蔵したプロセッサを選ぶと、必然的にNPUも内蔵した最新型になるから、というのが答えに近い。もっとも、先代の製品である「ROG Ally X」に搭載されていたRyzen Z1 Extremeは、NPUを搭載していないゲーム特化型のプロセッサだったのだが。

 ではNPUは丸々無駄なのかというと、もちろんそんなことはない。NPUを活用することでゲーム機も幸せになれる要素はあるはずだ。「ROG Xbox Ally X」の実機を用いて、いま何ができるのかを確認していこう。

「ROG Xbox Ally X」を起動すると、デスクトップ画面ではなくゲーム専用UIが立ち上がる。これでも「Copilot+ PC」として活用できるのか?

NPU処理でフレームレートを向上させる「自動スーパー解像度」

 「Copilot+ PC」のゲーム向け機能といえば、AIでゲーム画面をアップスケーリングしてフレームレートを高める機能「自動スーパー解像度(Auto SR)」がある。NPUの少ない消費電力で、GPUを使わずにパフォーマンスを向上させられる機能なので、ポータブルゲーミングPCにうってつけだ。

 早速、設定項目を見てみよう。Xboxボタンを押して設定を開き、一番下にある[Windowsの設定を開く]を選択。Windows 11の設定画面がそのまま出るので、[システム]-[ディスプレイ]-[グラフィック]と進む。その中にある[アプリケーションのカスタム設定]で、各ゲームタイトルを選択し、[自動スーパー解像度]の項目を[オン]にする。

 これで設定完了……と言いたいのだが、最後の[自動スーパー解像度]の項目が見当たらない。調べてみると、ASUSが東京ゲームショウ2025で本製品を出展する際に公開した情報として、「自動スーパー解像度」は2026年初頭に登場すると書かれている。つまり、現時点では使えないようだ。

 NPUを活用するという点で、AMDのGPUを用いる同様の機能である「FSR」より優れているはずなのだが、まだ使えないものは仕方ない。実装を待とう。

ゲーム向けの機能である「自動スーパー解像度」は、残念ながら現時点では未実装のようだ

「Copilot+ PC」としての機能は搭載されている

 これ以外に「Copilot+ PC」でゲーム向けの機能があるかと言われると、残念ながらぱっと思いつくものはない。とりあえず使える機能がないか確認していく。本機はXboxボタンを長押しすると、通常のデスクトップ画面に切り替えられる。

デスクトップ画面に切り替えられる

 「Copilot+ PC」の目玉機能とされる「リコール」は、初期状態では機能がOFFにされている。設定を開き、[プライバシーとセキュリティー]-[リコールとスナップショット]を選び、[スナップショットの設定]をONにすると動作を開始する。

[スナップショットの設定]をONにすると「リコール」が機能する

 「リコール」は画面のスナップショットを自動で撮影して蓄積し、過去に表示したものを自然な言語で検索できるという機能。ゲーム専用UIが動いている際にも機能するのかどうか確かめてみたところ、ゲームプレイ画面も含めて問題なく動作していた。ゲーム中に含まれているテキストや画像をもとに、過去のプレイ内容を検索できる。

ゲームUIに戻ってからゲームを起動し、しばらくプレイした後に「リコール」を確認すると、きちんとゲーム画面もスナップショットに含まれていた

 ゲーム中にスナップショットを撮影されたらパフォーマンスが落ちそうだと心配される方もいると思うが、ゲームプレイ中も全く違和感はない。最近はゲームプレイのデータを常に動画撮影し、後から切り出せる機能もPCや家庭用ゲーム機で広く搭載され始めているので、スナップショット程度は大した負荷にならない。

 他の機能も見ていこう。最も便利に使える機能の筆頭は、カメラ映像に背景ぼかしなどの効果をリアルタイムに加える「Windows スタジオ エフェクト」なのだが、「ROG Xbox Ally X」にはカメラが搭載されていないので、これは使えない。

カメラを搭載していないので、「Windows スタジオ エフェクト」の項目がない

 「ペイント」のAI画像生成機能は問題なく動作する。最近だとステッカー画像を生成する「ステッカージェネレーター」は面白い機能だと思う。

「ステッカージェネレーター」で画像を生成

 「フォト」アプリのAI機能も使用できる。超解像度で写真や画像を簡単にアップスケーリングできる。これならゲーム画像の一部を拡大加工したい時などに使えるかもしれない。

「フォト」アプリで超解像度も使える

 あとは音声を自動認識して翻訳する「ライブ キャプション」という機能もあるが、現時点では日本語への翻訳がまだ未対応。もし日本語対応すれば、英語などの外国語の音声をNPUのパワーで日本語字幕表示できるようになるはずだ。

 現時点ではこれといって便利な機能があるとは言えない状態だが、将来的にはゲーム向けのAI機能も実装されていくだろう。「ROG Xbox Ally X」の次世代機が出るまでには、きっといくつか登場するはずなので、今は純粋にゲーム機として楽しみつつ、気長に待っておくことにしよう。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/