柳谷智宣のAI ウォッチ!
Claude Cowork、ChatGPT Work、Gemini Sparkはどう違う? 得意なタスクは? ~御三家からAIエージェントが出揃った
想像以上に何でもしてくれるAI時代の同僚[後編]
2026年8月25日 09:00
前編では「Claude Cowork」に決算準備を丸投げし、紙の領収書の読み取りからExcelの集計まで片付けてもらった。Claude Coworkのように、質問に答えるだけでなく、実際にPCの中にあるファイルやアプリを直接操作し、複数の作業を進めて成果物まで仕上げてくれるのが、業務向けAIエージェントの特徴だ。
この手のAIエージェントツールを提供するのは、もはやAnthropicだけではない。
OpenAIは7月9日に「ChatGPT Work」を投入。Googleが5月のGoogle I/O 2026で発表した「Gemini Spark」も7月には日本語で使えるようになった。「Claude Cowork」の登場から半年で、大手AI各社から一般ユーザーが仕事を任せられるエージェントが相次いで登場したのだ。
今回は、Claude Cowork、ChatGPT Work、Gemini Sparkの特徴を比較し、それぞれがどんな仕事に向いているのかを解説する。
元をたどれば、どれもプログラマー向けの道具だった
Claude CoworkやChatGPT Workなど、いまや一般ユーザー向けに広がりつつあるAIエージェントの多くは、もともとプログラマー向けのツールから発展してきたものだ。
Anthropicは公式ヘルプにも、Claude Coworkは「Claude Code」のエージェント機能をコーディング以外のナレッジワークへ拡張したものだと記している。ChatGPT Workについて、OpenAIも「Codex」の技術を組み込んだものだと説明。そして、Gemini Sparkは、Googleが開発者向けに公開したエージェント基盤「Google Antigravity」の上で動作している。
フォルダーを読み込み、コマンドを実行し、何十ものステップを自律的に進めるという、これまでターミナルという黒い画面の中で動いていた仕組みが、いまやExcelやメール、資料作成、調査といった日常業務へ降りてきたのだ。
先行したClaude Coworkの歩みは速かった。
2026年1月12日にmacOSとMaxプラン限定のリサーチプレビューとして登場以降、1月16日にProプラン、2月10日にWindowsへと対象を広げ、4月9日には全有料プランで一般提供が開始された。続く7月7日にはWeb版とモバイル版のベータも加わっている。
各社の製品は名前も仕組みも異なるが、目指しているところはよく似ている。人間がやりたいことを伝えると、AIが必要な作業を考え、ツールやWebブラウザーを使いながら何段階もの処理を進め、最後は文書や表などの成果物まで仕上げてくれる。
さらに、決まった時刻に繰り返し動作させる機能も搭載されている。処理をクラウド側で走らせる点も共通だ。Claude Coworkはベータ扱いながら、3製品ともパソコンを閉じても作業は止まらず、スケジュールを設定しておけば、端末がオフラインでも動く。ただし、手元のファイルやパソコン上のアプリを操作させるときだけは、どれもローカルのアプリを起動しておく必要がある。
各社とも、生成AIを「質問に答えるチャット」から「仕事を任せられるエージェント」へと進化させようとしている過渡期にあるのだ。
接続先1,400種類以上の「ChatGPT Work」は無料でも試せる万能型
ChatGPT Workは、最新モデルの「GPT-5.6」と同時に発表された。OpenAIによると、内蔵された「Codex」は週500万人以上が利用し、うち100万人以上がソフトウェア開発以外の用途で使っているという。コーディングエージェントは、すでにコーディング以外の仕事にも広く使われ始めている。
ChatGPT Workの強みは、接続先が豊富なことだ。
プラグインでSlackやTeams、Google ドライブ、SharePoint、メール、カレンダー、CRMにつなげば、集めた情報からスプレッドシートやスライド、文書を作るのは朝飯前。プラグインは1,400種類を超え、プロンプトで「@」に続けてアプリ名を打てば、参照先を名指しできる。
パブリックベータの「Sites」を使えば、結果をダッシュボードやプロジェクトトラッカーに変換してURLで共有でき、元データが変われば更新もしてくれる。Claude Coworkが手元のファイル処理を得意とするのに対し、ChatGPT Workは複数のサービスから情報を集め、文書や表、スライドなどをまとめて作るのが得意だ。
さらに、同じ仕事を定期的に実行させることもできる。「Scheduled Tasks」を使えば、毎朝決まった時刻やメールの着信、データの変化をきっかけに自動で処理を始められる。単発の依頼だけでなく、日々の業務そのものを任せられる。
ただし、ローカルファイルやPC上のアプリを直接扱えるのはデスクトップ版に限られる。
Windows版とmacOS版では許可したフォルダーを読み書きし、PC上のアプリも操作可能。専用ブラウザーを内蔵して「Computer Use」でクリックや文字入力まで代行させられる。Web版とモバイル版はクラウドで完結するため、PC内のファイルには触れない。
料金面では、ChatGPT Workが最も試しやすい。追加料金はかからず、デスクトップ版なら無料プランでも利用できる。Web版とモバイル版はPlusプラン以上が対象となる。ただし、利用枠はCodexと共通しているため、ChatGPT Workを多く使うと、その分だけCodexで使える枠も減る。その点には気をつけたいところだ。
「Gemini Spark」はGoogle漬けの人ほど効く
Gemini Sparkは、AIモデルの「Gemini 3.5」と、作業の手順を組み立てて必要なツールを使いながら処理を進めるための「Google Antigravity」というエージェントハーネスを組み合わせて動作する。処理はGoogleのクラウド基盤で行われ、ユーザー側でサーバーを用意するといった面倒な初期設定も不要だ。
Gemini Sparkでは、「何をするか」を決める「タスク」、「いつ動かすか」を決める「スケジュール」、「どう進めるか」を決める「スキル」の3つを組み合わせて仕事を任せる。例えば、「毎週月曜9時に受信箱を確認し、重要なメールをまとめて優先順位付きのToDoを作り、集中作業の時間をカレンダーに確保して」と頼めば、一連の作業を毎週自動で実行できる。
「スキル」は、繰り返し使う作業手順をまとめた指示書のようなものだ。「過去に自分が書いた50通のメールから文体の特徴をまとめ、メールを書くときに使うスキルにして」と頼むと、自分専用の手順として再利用可能だ。こうしたスキルは、Gemini Sparkの「Skills」ページに保存され、SKILL.md形式で外部から読み込むこともできる。このあたりにも、もともと開発者向けツールから発展してきた名残が見える。
Gemini Sparkの武器は、Googleサービスとの一体感だ。
Gmail、カレンダー、ドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、スライド、Keep、マップに加え、検索やフライト、ホテルまで扱う。外部ではCanva、Dropbox、OpenTable、Zillowなどに対応する。MCPサーバーを使ったカスタムアプリとの接続にも対応するが、現時点では米国の個人ユーザー向けで、対応言語は英語のみとなっている。
また、7月30日に発表されたChromeとの統合では、手元のChromeにログイン済みのアカウントを使い、内見予約の手続きや航空券の検討まで進めてくれる。なお、決済のような重要な操作は人間へ差し戻される仕組みになっている。ただし、こちらも提供は米国から始まっており、日本ではまだ使えない。
Gemini Sparkのネックは、会社が管理するGoogle Workspace アカウントでは利用できないことだ。
これは、筆者もメインアカウントでGoogle Workspaceを使っており、困っているところ。Gmailやカレンダー、ドライブとの連携が強みなのに、仕事用のGoogle アカウントでは使えないのは痛い。また、ローカルフォルダーを扱えるのはMac版Geminiアプリのみで、Windowsでは対応していない。7月29日には月額2,900円のGoogle AI Proへと対象が広がったのはありがたいが、なるはやでGoogle Workspaceでも対応して欲しいところだ。
間違った答えより怖いのは、間違ったまま実行されること
AIエージェントを使う上で注意したいのは、間違った判断をそのまま実行してしまうことだ。
従来の生成AIなら、誤った答えを返すとそこで止まることが多かった。AIエージェントは、ファイルを書き換え、メールを送り、外部サービスを操作するところまで進める。その分、AIの間違いが画面上の回答だけで終わらず、実際の作業に影響する可能性がある。
象徴的な事例が8月10日に報じられている。
オーストラリアの男性がAIエージェントにジムの朝のクラスを予約させたところ、エージェントは予約システムの不備を利用し、通常は予約できない先の日程の枠を確保した。さらにキャンセル待ちの順位を上げられるかを尋ねると、別の会員を待機列から外して依頼主の順位を上げてしまった。使われていたのはOpenClaw上でClaudeを利用するエージェントで、Claude Coworkが暴走したわけではない。それでも、AIエージェントに外部サービスを操作させると、人間が想定した手順や制限を超えて行動することがある、という点では参考になる事例だ。
企業の中でも、AIエージェントの行動が実際の事故につながった例がある。3月にはMetaの社内AIエージェントが、人間の承認を得ないまま誤った回答を社内フォーラムに公開した。社員がその内容に従った結果、本来は権限のない社員まで約2時間にわたって機密データを閲覧できる状態になった。Metaはこの件を、社内基準で2番目に重大な「Sev 1」のセキュリティ事故に分類している。
それなら、確認ダイアログを増やせば安心かというと、そう単純なことでもない。
Anthropicによると、Claude Codeの利用者は表示された許可確認の約93%をそのまま承認しており、数が増えるほど人間は中身を読まなくなる。同社がサンドボックスや権限の制限によって、AIが触れられる範囲そのものを狭める方向へ進んでいるのはそのためだ。
結局、有効なのは地味な対策になる。専用の作業フォルダーを作って処理対象のファイルだけをコピーし、重要なデータはバックアップしてから渡す。メールの送信や顧客情報の扱い、金銭が絡む作業では、必ず人間が承認する設定に切り替える。手が止まるのは面倒だが、速さよりも、意図しない処理をその場で止められることのほうが重要だ。
便利になった分、任せる範囲は人間が決める
AIエージェントが手元のファイルまで扱えるようになるのは便利だが、どこまでアクセスを許可するかは意識しておきたい。ローカルファイルを扱う場合でも、モデルによる解析に必要な内容はクラウド側で処理される。重要な資料や個人情報を含むフォルダーを丸ごと渡すのではなく、AIがアクセスできる範囲を必要最小限に絞っておきたい。
AIエージェントは使い方次第でいろいろできる。
あえて分類するとすれば、手元に溜まった大量のファイルをまとめて処理させたいなら「Claude Cowork」が向いている。複数のサービスをまたいで情報を集め、文書や表などを作らせたいなら「ChatGPT Work」。そして、Gmailやカレンダーを中心に日々の仕事を自動化したいなら「Gemini Spark」が得意だ。
どのAIエージェントも、これまで人間が手作業でこなしていた面倒なプロセスを丸ごと引き受けてくれる便利なツールに仕上がっている。利用の注意点を記しはしたが、リスクを気にして敬遠するよりも、まずは間違えても実害のない小さな仕事から任せ、その実力を体感してみてほしい。少しずつ自動化の範囲を広げていけば、いずれ手放せない強力な相棒になるはずだ。
著者プロフィール:柳谷 智宣
IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。
・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/


























